少年少女の戦極時代
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第71話 ライダーズ・オン・ステージ ①
沢芽市ミッドタウン芝生広場――沢芽市の象徴、ユグドラシル・タワー。そのメインゲート前の広場には、その日、異様なモノがあった。
白い布を被った四角い謎のものがいくつも並んでいる。通りすがりの人々には、足を止めて首を傾げる人もいた。
時刻は17時まで1分を切っている。
「3…2…1…ゼロ!!」
ぴったり17時、白い布が剥ぎ取られた。否、白い布の下から、即席ステージと、その上下に立った人間が現れた。
青い歌舞伎柄の少年少女と、黒と赤の男たち。そして、ピンクと黄色のコドモたち。
ビートライダーズの合同イベント会場に、彼らはこの場所を、ちょうどアフター5に重なる時間帯に、ステージジャックしたのだ。
これはビートライダーズ同士の抗争終了宣言であると同時に、ユグドラシル・コーポレーションへの宣戦布告でもあった。
元はといえば、ユグドラシル・コーポレーションがインベスゲームを流行らせた黒幕だ。それは舞や光実が説得して回った時にどのチームにも周知のこととなっている。
――これ以上、自分たちのダンスを奪わせない。穢させない。
それらの決意をユグドラシルに見せつけるためにこの場を選ぶことを、光実とヘキサが提案した。咲は大いに賛同した。
だが、現実はそう綺麗に運んではくれない。
「お客さんが……」
咲の斜め後ろにいたトモが呆然と呟いた。
――まず客が両手の指で数えられる程度しか来ていない。人が通っても、横目でちらりと見ては家路を急ぐ人ばかり。せっかく留まった人々も、ビートライダーズだと分かるやそそくさと去って行く。
さらに、追い打ちとばかりに凰蓮・ピエール・アルフォンゾが現れて。
「M’etonne! 閑古鳥がピーチクパーチク鳴いてるわね。無様ねえ~。しかも合同イベントなんて言いながら、他のチームはぁ?」
そう。ここにいるチームは、リトルスターマインと、鎧武とバロンの3チームのみ。有象無象を含めれば数十にも及ぶチームの1組もこの場にはいない。
「これで証明されたわね。アナタたちがやってたのは、アマチュアのお遊びだってこと。さ、迷惑になる前に、さっさと解散しなさぁい?」
凰蓮は哄笑する。
咲は爪が食い込むほど拳を握りしめた。いっそ変身して追い払ってやろうか。どうせ相手もアーマードライダーなのだ、少々以上にケガをさせたところで――
「うっせーんだよカマ野郎」
「はぅ!?」
客の一人が凰蓮を後ろから蹴り倒した。チーム鎧武もチームバロンもあ然とする。あれは痛い。
しかもその蹴った人物というのが。
「「「センセー!」」」
咲たちが通うダンススクールの講師の女だった。
「チーッス。チラシ貰ったから観に来てやったぞー」
講師はひらひらとチラシを上げて振る。咲は仲間と顔を見合わせた。確かに講師にチラシを渡しはしたが、本当に来るとは思っていなかった。
「イイ歳した大人が、マナーがなってねんだよ。こちとら観に来たくて来たんだい。茶々入れるくらいなら帰れっての」
「あだ! いだ!? ちょっとアナタ、ゲシゲシするんじゃないわよ!」
「せ、せんせー……」
かける言葉もないとはこのことか。バロンはもちろん、鎧武や龍玄が二人がかりでやっと競り合ったアーマードライダーブラーボの中の人にこの暴言と暴力。
「さてと、あんたたち――ああ、違う違う、あんたらじゃない、後ろの子たち」
講師が次にビシッと指差したのは、チームバロンの斜め後ろにいたリトルスターマイン。
凰蓮の惨状を見た後だけに、咲たちは呼ばれただけで縮み上がった。
「人目がなきゃ演技できないなんて教えた覚えはあたしにゃないよ。特に出場経験も実績もない連中が、お客さんの人数に文句つけるんじゃない。はるばる来て下さった方たちに失礼だ。プロにでもなったつもりかい?」
「あ……」
重い。一度はプロの舞台に立ったことがある講師だからこそ、彼女の言葉には重みがある。
咲たちが一様に俯いていると、講師はしょうがない、とでも言いたげにニカッと笑った。
「踊りなさい。アマチュアだろうが遊びだろうが、あんたたちはダンサーだ」
広場は水を打ったように静まり返った。
後書き
阪東さんに対抗してオリキャラ側から「カッコイイ大人」を出してみたくてやった。
女性です。姉御肌です。一度はプロのダンサーでしたが今は子供向けダンスの先生です。設定、以上! これ以後の活躍はまだ考えついておりません。
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