不老不死の暴君
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神都編
第二十五話 力を求めて
アルケイディア帝国旧ダルマスカ王国領王都ラバナスタにて。
ミゲロの店の倉庫に身を隠して4日後。
セア達は倉庫に集まっていた。
「帝国の艦隊を消し飛ばしたのは【暁の断片】なのだな」
「察しがいいな」
「あの桁違いの破壊力・・・心当たりがある。アーシェ様もご存知のはずです」
バッシュの言葉を聞き、アーシェは呟く。
「ナブディス・・・」
アーシェの言葉にバッシュは頷き、続ける。
「旧ナブラディア王国の都・・・ラスラ様の故郷だ。先の戦争中帝国軍が突入した直後に原因不明の大爆発で敵味方もろとも・・・あの国にもレイスウォール王の遺産のひとつ【夜光の砕片】が伝わっていた」
バッシュの説明にバルフレアも何か嫌そうな声で言う
「破魔石・・・か。奴等が夢中になるわけだ」
アーシェは【暁の断片】を掴み声をあげる。
「あの戦争も調印式の罠もヴェインはこの力を狙って・・・!」
アーシェは決意をするように言う。
「レイスウォール王の遺産・・・破魔石は帝国には渡せません」
「とっくに渡ってる。【黄昏の破片】にたぶん【夜光の砕片】も。でなきゃ人造破魔石なんて合成できるか」
「では【暁の断片】の力で帝国に対抗するだけです」
バルフレアの台詞にアーシェは立ち上がって反論する。
「ダルマスカは恩義を忘れず、屈辱も忘れず刃を以って友を助け、刃を以って敵を葬る。私の刃は破魔石です。死んでいった者達のため・・・」
アーシェはそこで一旦言葉を区切り、決意した表情で続ける。
「帝国に復讐を」
部屋に重苦しい空気が流れ、全員が黙り込む。
沈黙を破ったのは空気を読めないヴァンである。
「使い方わかるのかよ」
アーシェはヴァンの方に振り向くが実際使い方を知らないため反論は出来なかった。
するとフランが呟いた。
「ガリフならあるいは」
セア以外の全員がフランの方に目線を向ける。
「古い暮らしを守るガリフの里には魔石の伝承が語り継がれているわ。彼らなら破魔石の声が聞こえるかもしれない。・・・危険な力の囁きが」
「危険だろうと今必要なのは力です」
アーシェはフランにそう言いながら近づき言葉を続ける。
「無力なままダルマスカの復活を宣言しても・・・帝国に潰されるだけ。ガリフの里までお願いします」
「オズモーネの平原を越えた先よ」
「遠くないか?」
フランとアーシェの会話を聞き、バルフレアが声をあげる。
「また報酬・・・ですか」
「話が早くて助かるね。そうだな。そいつが報酬だ」
バルフレアはアーシェの左手の指輪に指をむけそう言った。
「これは・・・何か他の・・・」
「嫌なら断る」
バルフレアはそう言ってアーシェに手を差し出す。
アーシェは躊躇いながらラスラとの結婚指輪を外し、バルフレアに渡した。
バルフレアは軽く指輪を見てアーシェに言う。
「そのうち返すさ。もっといいお宝を見つけたらな」
「なんだよもっといい宝ってさ?」
バルフレアは出口に向かいながら話す。
「さあな。見つけた時にわかるのかもな。ヴァン、お前なら何が欲しい?何を探している?」
「オレ?そりゃあさ、その・・・ほら、あれ。・・・オレは・・・」
そんな事を言っているうちに倉庫の中にはセアとヴァンだけになった。
セアは・・・こちらの世界で言う考える人の彫刻のような体勢で固まっていた。
そんなセアに気づきヴァンが声をかける。
「セア」
名前を呼ばれたにも関わらずセアは微動だにしない。
ヴァンは大きく息を吸い込んでもう一度呼んだ。
「セア!!!」
「・・・ん?どうした馬鹿弟子」
セアはヴァンにいつもの明るい口調で話しかけたがヴァンが心配気味な声で言う。
「セア、どこか悪いのか? 倉庫に集まった時からずっと黙ってたけど」
「・・・いや、ただ考え事をしていただけだ」
セアはこの倉庫で交わされた会話が気にならないほど考え込んでいた。
それはアルケイディアの・・・いや、シドの目的である。
覇王の遺産を集めるのはわかる。
あんなものが他国にあるなら心配で夜も眠れない。
だが何故人造破魔石を造る必要がある?
破魔石がひとつあればロザリア帝国に圧勝する事も可能だろう。
なにせあんな小さな石ひとつで艦隊や都市を跡形も無く消し去る力があるのだから。
だから破魔石はひとつでよく、他国に渡ることを防ぐために残りの2つは破壊してもいいくらいだ。
なのにそれの製造を試みているとはどういうことだ?
そこで思い出すのがリヴァイアサンでギースが言っていた台詞だ。
ドクター・シドが血眼になって破魔石を調べているということ。
そして王宮でのシドとの会話を思い出す。
ロザリアなど前座にすぎないと彼は言っていた。
ということはアルケイディアはロザリアなど目ではない脅威があるとでもいうのか?
とりあえず・・・
(面倒だが知りたければ王女についていくのが一番か)
セアはそう思いアーシェに同行することを決めた。
セアが国家の思惑に関心を持ったことなど何百年ぶりであろうか・・・
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