ソードアート・オンライン―一刀流と二刀流―
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ユニークスキル―一刀流―
前書き
時間軸が飛びます…!
最前線が第58層アグネジアに移った今、迷宮区にこもって高速レベリングに励むカズ。
そんな彼は、隠し扉を見つける。
隠し扉の奥に入ろうとするカズを《黒の剣士》キリトが止める。
「トラップかもしれない。止めろ」
「ェイヤァ!!」
右肩に担ぐように持った愛剣エアフォーストライデントを青白い光が包む。
ソードスキル《ソニックリープ》が発動し、爆発的な速度で敵に肉薄する。
美しい薄青色の剣を手の中で回転させながら後ろ越しに差した鞘に仕舞う。
「ふぅ…」
最前線第58層の主街区アグネジアが開通したのは1週間前だ。
1つ下の層が青白い水晶で包まれた層だったのに対し、この層は赤い溶岩で囲まれた層だ。
フィールドモンスターは重突進技《ソニックリープ》を使う人型モンスター《マグマフリップ》を中心に防御力の高いのが多く、厄介だが、1つ下の層のボスからドロップした魔剣エアフォーストライデントのおかげでさして苦労せずに倒せている。
そんな俺が3日もこの迷宮区に籠っているのには理由がある。
バカ広いのだ。
迷宮区だけでこの層を埋め尽くさんとするくらいの広さで1週間たった今でも、半分もマッピングされていない。
トラップも多く、危険な迷宮区が広すぎるのは最早チートではないか?と思うのだが文句も言ってられない。
大手ギルド《血盟騎士団》を筆頭に攻略編成が組まれ、初の計画的合同マッピングがされているという。
どちらにせよ、ソロの俺には関係ない。
いろいろと考えながら壁にもたれ掛かる。
集中力も限界に近かった。
蒼白の重撃士と呼ばれるまでに上り詰めた俺のステータスはあの黒の剣士にも劣らないとおもっている。
だが、迷宮区では何が起こるか分からない。
少し休むか…。
そう思い、力を込めて安全地帯に向かおうとした直後。
ガゴ…
「うへ!?」
背中から壁のなかに倒れ込む…!?
ブービートラップか!?
危険を感じるが倒れ込む身体は止まらない。
クソッ…。
「おい…」
突如、俺のライトブルーの上着を捕まれ、支えられる。
「大丈夫か?」
真っ黒の革装備、黒い剣、黒い髪。
間違いなかった。
「黒の剣士…」
そう呟くと彼は前髪を弄りながら斜を向く。
「その扉、罠かもしれない」
「でも、レア物がでるかもしれない。助けてくれてありがとう。俺はいくよ」
「あんた、蒼白の重撃士だろ。速さのなかに凄まじい重さがあるって有名な」
「あ、ぁあ」
あまり触れてほしくないな、そこは。
何せ、俺が使ってるのは片手用直剣であり、そうじゃない。
「俺も付き合わせてくれないか。モチロン、アイテムは全部そっち優先で構わない」
そう言う彼の目には重度のMMORPG中毒者のレアアイテムへの好奇心が宿っていた。
「分かった。行こうか?」
「ああ、そうしよう」
そうして、キリトとの初、パーティーが組まれたのだった。
「ここは?」
入って少し歩くと円形の空間があった。
中心には明らかにレアな装備一式。
美しい光沢のある必要最低限の青い金属。
深い艶のある革。
「あれ、スゲエ…」
そう呟いて、それをストレージに格納。
すぐに装備した。
すると…。
広場中央にゴツゴツとしたポリゴンが重なりあっていく。
「あれって…」
それはすぐに形を造っていく。
2本の長い槍。
赤い身体はゴツゴツとした突起が幾つもある。
モンスター名にはTheがついていた。
「ボスモンスターだ」
キリトが掠れた声で呟く。
「逃げるぞ。転移アグネジア!!」
転移結晶を掴んで叫ぶが効果がない。
一部のトラップゾーンにある結晶無効化空間。
「扉は?」
俺は叫びながら振り向くがそこにはなにもない壁が広がっていた。
「クソ。やるしかない」
キリトはそう言うと黒い剣を背中から抜いた。
俺も後ろ越しから横向きになった鞘から愛剣を抜く。
「仕方ない…。キリト。見なかったことにしてくれよな」
キリトが怪訝そうな目で俺を見たが、それを無視して突っ込む。
腰だめに構えた愛剣を黄色い光が包む。
「一刀流重突進飛翔技・コーミュラスクランブル」
そう呟き、地を蹴った。
このボスモンスターは明らかに頭の天辺にあるひび割れが弱点だ。
二人で5段あるフィールドボスモンスターにしては有り得ない体力を削るには弱点に攻撃を当て続けるしかない。
今まで隠してきたユニークスキル一刀流を発動してでも生き残るしかない。
一刀流は片手用直剣のソードスキルと独自の5連撃程の恐ろしく早く重い攻撃、そしてもう1つ、防御系スキルが特徴だ。
つまり、2つの種類のソードスキルを使えるために物凄いバリエーションとなっている。
そのぶん、確認している限りでは最高でも8連撃までしかないが。
敵の面前で5メートルほどジャンプする。
そして、大きく振りかぶり1撃目、右斜め下に切り下ろし。
綺麗に割れ目に当て、その剣を軸に敵の後ろにジャンプ。
2撃目、左斜め下に切り下ろし。
こちらもクリーンヒットして、落下。
空中で硬直時間が溶ける便利さのある高高度攻撃技なのだ。
「カズ…」
着地して、足の間を走り込み、1撃喰らわせながらキリトの前に戻る。
「俺のも、見なかったことにしろよな」
そう言うとキリトは不適に笑い、2本目の剣を実体化させた。
目映い白の輝き。
ダークリパルサーという銘らしい剣を構えると、言った。
「二刀流最上位ソードスキル、ジ・イクリプス」
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