不老不死の暴君
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第二十二話 挑み、あがく
リヴァイアサン艦隊軽巡洋艦シヴァにて。
手枷をつけ、アーシェ達を連行しているウォースラは遠慮気味にアーシェに話しかけた。
「ラバナスタに戻ったら市民に殿下の健在を公表しましょう。あとは自分が帝国と交渉を進めます。ラーサーの線を利用できると思います。彼は話がわかるようです。信じてみましょう」
その言葉を聞いたアーシェは立ち止まりウォースラの方を向き彼を睨みつけた。
「いまさら誰を信じろというの」
その言葉を聞きウォースラはアーシェから顔を逸らし黙り込んだ。
その様子を見たアーシェは再び歩いていった。
ウォースラも国の為とはいえ主君を裏切ってしまった。
少し後悔の念を抱きながらウォースラはアーシェの方を見、呟いた。
「ダルマスカのためです」
同時刻リヴァイアサンの研究室にて。
「設備が限られておりますので当艦の動力を利用して判定します。石を機関に接続しその反応を・・・」
「手順の説明などいらん。結果を見せろ」
研究員が【暁の断片】をリヴァイアサンの機関に接続しながら説明するががギースは説明は不要だと切り捨てた。
説明を拒否されたのを気にも止めず研究員は【暁の断片】の接続を続ける。
そして接続が終わった瞬間魔力を現すメーターが跳ね上がり始めた。
研究員はそのメーターを見ながら数値を叫んでゆく。
「・・・6700。6800。6900。7000! 間違いありません神授に破魔石です! 限界が見えません!!」
研究員の悲鳴のような報告を聞きギースは呟いた。
「これが神授の破魔石・・・まさに神々の力だ。手にした者は第2の覇王か?」
そう言ってギースは軽く笑い声をあげる。
「ヴェインでなくてもかまわんわけだ」
ギースがそう呟くとリヴァイアサンに警報が鳴り響いた。
研究員の一人が驚いたような声をあげる。
「なんだこれは!? 反応係数が・・・」
「どうした?」
ギースは研究員に疑問をこぼした。
同時刻軽巡洋艦シヴァにて。
【暁の断片】の放つミストにあてられフランが凶暴化し手枷を力ずくで壊し手当たり次第に帝国兵を蹴飛ばしていた。
その様子を見たパンネロが困惑しながら疑問の声をあげる。
「どうしちゃったの?」
「束縛されるのが嫌いなタイプでね」
そう言いながらバルフレアは器用に自分の手枷を外す。
そしたらバルフレアの横にフランが蹴飛ばした帝国兵が悲鳴をあげながら落ちてきた。
「・・・ここまでとは知らなかったが」
バルフレアは自分の横に落ちてきた帝国兵を見ながらそう言いアーシェの方を向く。
「あんたはどうだい?」
「彼女と同じ。脱出しましょう」
手枷を外したヴァンが自分達を連行してきた飛空挺の方に走る。
「やらせるかっ!」
ウォースラがヴァンに向けて剣をふる。
ヴァンは咄嗟に足元の気絶していた帝国兵を蹴り上げ、ウォースラの攻撃を防いだ。
ウォースラは素早く剣を構えなおし叫ぶ。
「空族ごときにダルマスカの未来を盗まれてたまるか!」
そしてウォースラは帝国兵から押収品を回収し自分が渡したダルマスカ騎士団の剣を持って構えているバッシュの姿が眼に入った。
「なぜだバッシュ。お前なら現実が見えるだろうが!」
「だからこそ・・・あがくのだ!」
その言葉を聞いたウォースラはバッシュに素早く近づき剣を横にふる。
バッシュは剣でウォースラの剣をふせぐ。
ウォースラは自分の攻撃が防がれたことに気づくと素早く切り返す。
バッシュは防御が間に合わないと後方に下がりよける。
するとウォースラは今度は剣を横にふり、遠隔攻撃をした。
バッシュはしゃがみウォースラの遠隔攻撃をよけ、そのままウォースラに斬りかかる。
ウォースラはバッシュの剣を受け止めつばぜり合いの状態になった。
「あがくだと? ハッ、俺が2年間解放軍を率いてきてわかったことはひとつだ! 我々では帝国には敵わない!!」
「だがそれでも挑むことをやめる理由にはならん!!」
「2年も死んだ事になっていたお前がほざくなっ!!!」
そういうとウォースラとバッシュの戦いは再び激しいものになった。
(あの2人の戦いに割り込むのは無粋だな)
セアは2人の戦いを見ていてそう思った。
セアが余所見をしていると帝国兵がセアの背中に斬りかかった。
セアは背中の剣を向け帝国兵の攻撃を止め、後ろに振り返る。
振り返る途中にセアの間接がありえない方向に曲がっていたがセアは気にも留めない。
帝国兵はセアに気持ち悪さを感じ少し震え出した。
その好きにセアは帝国兵の首に向けて剣をふり、帝国兵の頭と体を切り離した。
そしてセアは自分が殺した帝国兵の懐から財布を奪う。
「金欠なんだ。許してくれ」
セアは顔に笑みを浮かべながらそう言った。
そしてこの状況では先に脱出用の飛空挺を奪った方がよいと考え実行に移す。
「ヴァン! パンネロ! 一緒に来てくれ飛空挺を奪う」
セアの台詞にヴァンが帝国兵の喉笛を切り裂き答える。
「でもあいつが!」
ヴァンが剣でウォースラを指し示す。
「ウォースラの相手はバッシュに任せよう。俺達は脱出用の飛空挺を奪うんだ!」
セアの言葉にヴァンとパンネロは頷き、近づいた。
そしてセアは{バニシガ}を唱えた。
それは対象を透明状態にする魔法でが影が消えないので注意深く見ればばれてしまう。
しかし今ウォースラはバッシュとの戦闘に気がとられていたため、セア達は飛空挺の制圧に向かう。
「うおおおお!!」
ウォースラが叫び剣をバッシュにむけ剣を横にふる。
バッシュはそれを避け、剣をウォースラに向け突き出す。
するとウォースラは突き出した剣に向けて剣を振り下ろした。
「なっ!」
バッシュの剣が折れた。
武器が壊されたバッシュは防戦一方になりウォースラの剣を避け続け壁際に追い込まれた。
「終わりだ!バッシュ!!!」
ウォースラは剣を振り上げ満身の力をこめて振り下ろした。
ウォースラの剣は壁を切り裂きホコリが宙をまった。
そしてウォースラの右ひざに激痛が走る。
「なっ・・・!」
バッシュは先ほどの攻撃をよけ、折れた剣をウォースラの右ひざに叩きつけたのだ。
ウォースラは剣を落として膝を突きバッシュを見上げた。
その様子をアーシェは辛そうな表情で見ていた。
するとそこにヴァンの声が響いた。
「飛空挺を抑えたぞ!」
その言葉を聞いたバルフレアは凶暴化していたフランに肩を貸し、アーシェに話しかけた。
「アーシェ。行くぞ」
しかしアーシェはバルフレアの言葉には従わずバッシュとウォースラの方を見ていた。
「俺は祖国のためを・・・」
ウォースラはそう言い、腕を床につけた。
「わかっている。お前は国を思っただけだ」
バッシュは昔ランディスのためを思い国を出た自分が脳裏に浮かんだ。
その言葉を聞いたウォースラは後悔をまぜた声で話す。
「ふん。功を焦ったのも事実さ。焦りすぎたのか・・・お前が戻るのが遅すぎたのか・・・」
そうだ。せめて王宮への襲撃よりまえに戻ってきてくれていたら・・・
ありもしない仮定をしても無駄な話だとウォースラは自嘲した。
どちらにせよ・・・主君を裏切った臣下等必要あるまい。
「俺はもうお仕えできん。殿下を頼む」
かつての戦友の願いにバッシュは頷き、セア達が奪った飛空挺の方に走っていった。
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