不老不死の暴君
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第十九話 魔人
レイスウォール王墓を地下へ地下へと進んでいくと黄色の霧のようなものが出てきた。
パンネロはそれを見ながら呟く。
「地下なのに霧が出てる・・・?」
「霧ではないわ。ミストよ」
フランはパンネロの呟きに答えた。
ミストとはこのイヴァリースでは空気中に存在する魔力の源のことである。
しかしミストは普段は無色透明のはずである。
「ミストって目に見えるんですか?」
「ここではそれだけ濃いということ。魔の気配が満ちているのよ」
「危険・・・ってことですよね」
フランの言葉をそのまま受け取るとそういうことになる。
「けれど役にも立つわ。濃密なミストは魔力の回復を早めてくれる」
「覚えておきます」
そう言ってパンネロはセアとヴァンの方を見た。
「セアさんもヴァンも無茶ばかりだから私がしっかりしないと」
因みにパンネロが心配している2人はというと・・・
「覇王の財宝って高く売れるのかな?」
「なんでそんな事気にするんだ?」
「トマジにぼったくられたから金が無くてね・・・出来れば少しほしい」
「俺も盗っていっていいか?」
「普通ならとめるとこだけどまぁ仕方ないか」
「よーし、セア公認だ!」
覇王の財宝を盗む気満々であった。
それはそうと地下なのになにか暑いなと感じながら階段を降りていくとひらけた場所に出た。
そして奥に扉があり、その前に魔物と人を混ぜた化け物のようなものが立っている。
最初は変なオブジェだと思ったがヴァンが近づくと周りから炎があがる。
「魔物か!?」
ヴァンはそう叫び後方に後ずさり武器を構える。
するとオブジェだと思っていたものが動き出し近くにあった斧か槍かよく解らない武器をとりヴァンに振り下ろす。
ヴァンは吹き飛ばされ壁に激突した。
「ヴァン!」
そう叫びセアは{フルケア}を唱え、ヴァンの傷を治す。
先ほどの攻撃でただの魔物では無いと判断したウォースラとバッシュは遠隔攻撃でけん制する。
すると化け物は{バオル}を唱え防御力を強化しウォースラに急速に接近し武器を横に薙いだ。
ウォースラは咄嗟の判断で剣で防御したが剣を飛ばされウォースラは倒れた。
倒れたウォースラ目掛けて武器を振り下ろす瞬間バルフレアの銃が化け物を打ち抜いた。
化け物がバルフレアを視界に捉えると{ファイア}を唱えた。
炎がバルフレアにあたる前にフランが間に入り込み{ブリザラ}を唱え相殺した。
化け物が次の魔法の詠唱を開始するがバッシュの遠隔攻撃で妨害され、バッシュに近づく。
化け物はバッシュに攻撃を繰り返すがバッシュは上手い事避けながら時間を稼ぎその間にアーシェとパンネロがウォースラに近づき{ケアルラ}で回復させる。
「あの化け物は一体?」
「まさかかつて覇王に仕えたという魔人では・・・」
アーシェがかつて父から聞いた覇王と魔人にまつわる物語を思い出しながら答えた。
「大丈夫か? 馬鹿弟子!?」
「なんとか」
セアはヴァンの声を聞くとポケットから魔石を取り出しヴァンに渡した。
「これは?」
「気にするな! いいか俺達があの化け物の引き付けてる間にそいつを化け物にあてろ!」
「え!?」
「外したら承知しないぞ!いいな!!?」
「ああ!!」
ヴァンの返事を聞くとセアはバルフレアとフランに近づき話しかける。
「あの化け物の注意をヴァンからそらしてくれないか?」
「ああ? なんでだ!?」
バルフレアは目線と銃口を魔人に向けたままセアに答える。
「ここにくる途中暑いと思わなかったか? おそらくアレは炎の属性をもっている」
「それで!?」
「ヴァンにウォタガの魔片を渡した。隙を見て投げろと!!」
「了解。ヴァンから注意を逸らせばいいんだな?」
バルフレアが軽くこちらを見たのでセアは素早く頷き魔人の方へ走った。
ウォースラも目が覚めたようで魔人に斬りかかっていた。
セアも魔人の注意をこちらに向けるために斬りかかる。
すると魔人の背後からできるだけ目立たず近づいてきているヴァンの姿が見えた。
フランも正面から{ブリザラ}を放ち魔人の注意をこちらに向ける。
しかし注意を引き付けている事に気づいたのか魔人が後ろに振り返りヴァンを視界に捉えた。
魔人はヴァンに目掛けて武器を振り下ろした。
「うおおおおおおお!」
ヴァンは魔人の攻撃を紙一重で避け(偶然)若干ヤケクソな感じでウォタガの魔片を右手に掴んだまま魔人に近づき殴りつけた。
魔人は水系の上級魔法{ウォタガ}の直撃を受け、重症を負いながらも魔法の詠唱を開始した。
セアはその詠唱を聞き顔を青くする。
魔人が今唱えているのは{ファイジャ}という魔法だ。
セアがルース魔石鉱でパンネロを攫ったバンガに使ったあの魔法だ。
あれを加減せずに放てばセアはともかく他の奴等が死んでしまう。
魔人を中心に魔方陣が形成され始めたところでセアは魔人の右腕を切り飛ばした。
すると魔人はミストを放ちながら倒れ、青い魔石が残った。
その魔石をセアが拾い、フランが語り始めた。
「かつて神々に戦いを挑んだ荒ぶる者ども・・・敗れた彼らの魂はミストにつなぎとめられて時の終わりまで自由を奪われた・・・ン・モゥ族の伝承よ」
「俺はン・モゥ族の伝承は知らないが似たような話ならしってるぞ。大分昔に聞いた神々に挑んだ12体の人智を超えた異形者の御伽噺。そういや人と魔物を混ぜたような異形者がいたっけ」
「異形者ってなんだ?」
「詳しい事は知らんが・・・かつて神々が創った存在だそうだ」
「ふ~ん」
「確か人と魔物を混ぜた容姿の異形者の名前は白羊の座の魔人ベリアスで【神に創られた闇の異形者にして聖域の番人。人とモンスターとが融合しているように見えるため魔人と呼ばれるようになった。数ある異形者の中でも失敗作と位置付けられ、本来の役割をあたえられることはなかった。魔人は怒り神々に戦いを挑んだが敗れてしまい、封印された】だったけ」
「なんでそんなのが王墓にいるんだ?」
「さぁ?」
ヴァンとセアの会話を聞き聞きアーシェもある物語を語り出す。
「王家には覇王と魔人にまつわる物語が伝わっています。若き日のレイスウォール王は魔人を倒して神々に認められたと。以後魔人は覇王の忠実なしもべになったそうです」
「・・・忠実なしもべね」
セアはそう言って拾った魔石に魔力を注ぎ込んでみた。
すると先ほどまで戦っていた魔人が姿を現した。
全員が警戒をするがセアは踊れと魔人に命令してみた。
すると魔人は文字では説明できない凄まじい踊りを踊り始める。
かなりシュールな光景である。
ヴァンとセアが大笑いし、他は苦笑してセアに躍らせるのをやめろと説得しだした。
セアが渋々魔石に魔力を注ぐのをやめると魔人は跡形も無く消え去った。
ヴァンは魔人が踊りながらミストを放ち消えていくのを見て少しがっかりしていた。
「さしずめ召喚獣とでも言ったところか・・・これは貴女がもっているべきですね」
そう言ってセアは魔石をアーシェに渡した。
それを見ていたバルフレアが呟く。
「なるほどな。それで召喚主の覇王の命令に従っていまだに財宝を守ってたわけだ」
「いいえ、財宝とはこの召喚獣そのものでしょう」
「なんだと?」
アーシェの言葉にバルフレアは疑問の声をあげる。
「私たちが手に入れた魔人には計り知れない価値があります」
アーシェの言う通り覇王のように覇をとなえんとする者には計り知れない価値があるだろう。
しかしバルフレアのような空賊には縁の無い話だ。
「おいおい・・・オレとしてはもうちょいわかりやすい財宝を期待してたんだがね」
バルフレアの台詞にセアも同感である。
セアは覇王の財宝を少し盗みそれを臨時収入としてこの金欠状態から抜け出そうとしていたのだ。
どうやって金に都合つけようかと途方に暮れるセアであった。
後書き
文字では説明できない凄まじい踊り=今の時代で言うブレイクダンス。
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