不老不死の暴君
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第十五話 かつての上司
セアは帝国兵に王宮の一室に案内された。
案内された部屋は大きな机とたくさんの綺麗なイスがあり、セアはそのイスのひとつに座った。
しばらくするとセアが2週間程働いていたドラクロア研究所の所長シドルファス・デム・ブナンザ・・・通称ドクター・シドが入ってきた。
「久しぶりだな、クライス」
そう言ってシドはセアの反対側のイスに座った。
セアは愛想笑いしてシドに話しかける。
「そうですね。それで・・・俺になにかようでしょうか?」
「いや、ただ君がローゼンバーグ将軍と一緒に行動していたとヴェインから聞いてね」
その言葉にセアは顔を顰める。
シドを笑いながら言葉を続ける。
「君がラバナスタに住んでいるという噂を聞いた時は驚いたぞ。だれにも実態の掴めない【不滅の研究者】の異名をもつ君がね」
「そうですか」
「ひとつ聞きたいのだが・・・君は何故ローゼンバーグ将軍と共に行動していたのだ?」
「なりゆきですよ」
「なりゆき?」
「ええ俺があなたの研究所で2週間程仕事をして帰ったら俺の知り合いが賞金稼ぎに誘拐されてましてね。その時になぜか俺の弟子と一緒に彼がいたんですよ」
「・・・君に弟子がいるのか?」
「戦闘技術以外は教えていないのですが・・・まぁはっきり言って馬鹿ですよ」
「そうか・・・君の弟子にも会わせてもらえるか?」
「いやそれがビュエルバでローゼンバーグ将軍共々とある空賊に誘拐されましてね・・・行方不明なんですよ」
「それでは・・・王女と共に西の王墓へ行ったのではないか?」
「西の王墓?」
「うむ、ナム・エンサの死者の谷にあるレイスウォール王墓へ向かったと情報が入っているぞ」
「貴重な情報ありがとうございます」
そう言いセアはシドに頭を下げた。
シドはかまわんよと言いとある疑問を口にした。
「ところでクライスというのは偽名なのかね? ローゼンバーグ将軍からはセアと呼ばれていたと聞いたが」
セアはそれを別に答えても問題ないと思いそれに答える。
「どっちも偽名ではありません。俺の名前はクライス・セア・グローリアです」
その答えを聞いたシドは納得したように頷いた。
そしてさっきまでのからかい半分の声をかえ、真剣な声でセアに話しかける。
「雑談はこのへんにして・・・本題に入ろうか」
「・・・どうぞ」
セアは息を呑み、先を促した。
「そう遠くない日に我が帝国は歴史を動かす戦争をする。その時君も手を貸してはくれないか?」
「俺のモットーとして国に仕えたりはしないのですが・・・歴史を動かすということはロザリア帝国と戦争でもするのですか?」
その言葉を聞いたシドは何を馬鹿なというふうに笑い声をあげた。
「ロザリアだと? 確かにロザリア帝国とは戦争をするがロザリアなど前座にすぎん!」
その言葉を聞きセアは首を傾げた。
このイヴァリースでアルケイディア帝国と互角に戦える国家はロザリア帝国以外に存在しない。
そのロザリア帝国が前座にすぎないというとアルケイディア帝国は一体何と戦うというのだ?
「よくわかりません・・・ロザリア帝国が前座ということはアルケイディア帝国の真の敵は何処なのですか?」
「その内解る事だ・・・その時に君がヴェインの下で戦ってくれればいい」
そういうとシドは態々呼び出してすまなかったねと帝国兵に命じセアを退室させた。
するとシドは誰もいないところに話しかけた。
「どうだ彼は?・・・・そうか、少なくとも奴等となんらかの関係があると見たほうがよいか・・・ん? それも微妙だと?」
シドはまるで目の前に誰かがいるように独り言を続けていた。
一方セアは王宮の外で独り言を呟いていた。
「相変わらずあの所長はよく解らない」
セアはため息を吐き、西の空を睨んだ。
「やることがなにもないからとりあえず馬鹿弟子を殴りに行くか・・・」
そう呟きセアは暗い笑みを浮かべた。
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