不老不死の暴君
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第十三話 誘拐された王女と+α
アルケイディア帝国領帝都アルケイディスにて。
謁見の間でアルケイディア帝国皇帝グラミス・ガンナ・ソリドールはジャッジ・ガブラスから報告を受けていた。
「ドラクロア研究所・・・ドクター・シドか」
「ヴェイン様の資金援助を確認しました。ナブディス壊滅の件に関わっているのも確かですがあの作戦を指示したジャッジ・ゼクトが行方不明では・・・真相を掴みきれません」
「このグラミスも老いたな。息子を読みきれんとは」
グラミスが自嘲の言葉をこぼし咳き込んだ。
ガブラスが心配そうに近寄ってくるのをグラミスは手で制した。
「かまわん。死病だ」
そうグラミスは言い、思考に耽る。
「さて・・・予の後継は誰やら。有能すぎるヴェインを恐れて元老院が幼い皇帝を望んでおる」
そう呟きグラミスはガブラスを見る。
「ガブラス。かつて予はそちの祖国を攻めた」
「ランディス共和国は消えました。いまや帝国こそがわが祖国です」
「・・・だがそちの兄は帝国の支配を認めず・・・ダルマスカに流れたと聞く。兄の後を追おうと考えたことはないか?」
「すでに追っております。帝国の敵として斬り捨てるのみです」
ガブラスにとって自分と母と国を捨てた兄に同情などない。
あまつさえ流れた国さえも守りきれず今なお帝国に盾突く奴など斬り捨てるのみだ。
「祖国の敵なら兄をも斬る・・・か」
ガブラスの言葉にグラミスはそう言いながら頷く。
「ガブラス。そちはそれでよい。予はその非情さを評価しておる。しかしラーサーはそちやヴェインのようにはなれん。あれを支えてやってくれ」
「ラーサー様に代わって手を汚す剣の役を務めろと?」
ガブラスの質問にグラミスは顔を横に振る。
ラーサーの剣の役目は昔からヴェインがやっているのだから。
「むしろ盾だな。よいか、引き続きヴェインを監視せい。あれはいささか鋭すぎる」
グラミスが心配なのはその剣が持ち主に危害を加えないかということだ。
2年前の戦争以来ヴェインの行動には不可解な点が多すぎる。
「・・・御意」
ガブラスはグラミスの命令に服従する。
「頼むぞ、ガブラス。予はな息子たちが争う姿を・・・二度も見とうはないのだ」
そう、かつて自分の息子2人が反乱を企て自分はヴェインに2人の始末を命じた。
あれ以来ヴェインとは疎遠になってしまったがそのことに文句を言うことなく職務を遂行している。
父として皇帝としてヴェインのあり方は頼もしくあり・・・不安でもあるのだ。
空中都市ビュエルバにて。
セアは起きると太陽が既に昇っていた。
「少し・・・寝すぎたか」
セアが寝室からでると・・・警備兵に声をかけられた。
「侯爵閣下がお呼びです。執務室までご同行願えますか?」
「今からですか?」
「ええ」
セアは激しく疑問を感じた。
侯爵は夜まで政務をおこなっているはずだ。
それを真昼間の今に・・・?
セアは警備兵に連れられ侯爵の執務室に連れてこられた。
すると侯爵が頭を抱えて座っていた。
セアは何事かあったなとあたりをつける。
「昨日の夜、空賊に殿下が誘拐された」
「空賊?」
「貴公と一緒にいた空賊だ」
どうやらバルフレアがアーシェを誘拐したようだ。
セアが見る限りではバルフレアは面倒事に首を突っ込むような奴ではないと思っていたが・・・。
「それで・・・俺と一体何の関係があるのでしょうか?」
まさかとは思うが俺まで同罪扱いで極刑とか嫌だぞ。
「彼らがどこに行ったか心あたりはないか?」
「ありません」
すると侯爵がハァとため息をついた。
「・・・手がかりは無しか。貴公以外は皆攫われてしまった」
「・・・・・・・・・・・え?」
「どうかしたか?」
「いや、俺以外全員誘拐されたのですか」
「そうだが?」
ヴァンめバルフレアについて行きやがったな。
というかこれどうするんだよ?
ミゲロさんにどう説明すればいいんだ?
セアは手で頭を押さえた。
「・・・・」
昨夜やっと面倒事が終わって帰れると思ったのに・・・
一夜明けたら面倒事が増えるとは・・・
「退室してもよろしいでしょうか?」
「かまわない」
「失礼します」
セアは侯爵に礼をして退室した。
そして肩が震えながら呟く。
「俺はもう知らんぞ・・・馬鹿弟子」
セアはヴァンとパンネロが誘拐されたことを無視してラバナスタに帰ることにした。
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