不老不死の暴君
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ビュエルバ編
第一話 誘拐事件発生
アルケイディア帝国旧ダルマスカ王国領城塞都市ナルビナにて。
「今回の仕事は面倒だったな・・・」
ナルビナの入り口で一人の人物が愚痴を言いながら街に入ってきた。
容姿は20代半ばで長い銀髪で顔は中の上程度の人物である。
「予想では2週間程度で済むと思ったのだが・・・まぁ仕方ないか・・・とっとと飛空挺の予約をしてラバナスタに帰るとしよう」
そうしてその人物・・・セアは城塞の中へと入っていった。
アルケイディア帝国においてナルビナは西方の大国、ロザリア帝国に近いから帝国兵が多い。
南のラバナスタもロザリア帝国に近いが西方のエンサ大砂海に好戦的なウルタンエンサ族の縄張りがあり
ヤクトでもあるため飛空挺を飛ばすことができないため、ナルビナよりは帝国兵が少ない。
またナルビナには出稼ぎの人も多い。
アルケイディア帝国が城塞の修復・拡張の為に雇ってくれるからだ。
「もっと賃金増やしてくれよ!」
「駄目だ! 2ヶ月前に給料上げたばかりだろうが!」
「給料が増えても仕事も増えてたら意味がねぇだろうが!」
「黙れ! 文句を言う奴は地下牢にぶち込むぞ!」
・・・まぁ色々問題はあるようだが。
(当たり前といえば当たり前か)
ナルビナは2年前の戦争の激戦地であったため損傷が激しく修復だけでも結構な金がかかる。
その上ロザリア帝国に備える為に拡張もしなければならないのだ。
となると人件費だけでも馬鹿にならない金がかかっている筈だ。
アルケイディア帝国としては人件費を出来るだけ少なくし、それでいて多くの人を雇わねばならない。
しかし出稼ぎの連中からしてみれば帝国の事情等知った事ではない。
城塞の修復の為に働くのはとても重労働の筈だ。
更にそこに拡張の為に仕事の量はどんどん増えていく。
仕事に見合うだけの賃金を要求するのははっきり言って当然のことだ。
「まぁそんなことどうでもいいか・・・10日程とか言いながら1ヶ月も帰らなかったんだし馬鹿弟子や他の皆が心配してるだろうしなぁ」
セアはヴァンを弟子にしてからラバナスタを2週間以上離れたことがない。
絶対にヴァン達が心配している筈だ。
セアは夕方に高速飛空挺便に乗り、ラバナスタに着くまで仮眠した。
アルケイディア帝国旧ダルマスカ領王都ラバナスタにて。
セアがラバナスタに着いてまず最初い感じたのがなんか雰囲気が変わったということだ。
なんというか帝国兵がまともになったとでも言えば言いのだろうか?
1ヶ月前迄のラバナスタは帝国兵が我が物顔で商店から商品を金を払わず持っていったり、酒場の2階を占領したりとやりたい放題していたのだが・・・。
気になって市民に聞いてみたらそんな帝国兵は10日前に来た執政官によって解任か厳重注意をされたそうだ。
(あ、そういえば出て行く前にアルケイディア帝国皇帝の三男が執政官に就任するって話を馬鹿弟子から聞いたような・・・)
ということは皇帝の三男はいい奴か悪い奴かは分からないが有能ではあるのだろう。
未だに敗戦の暗い雰囲気を引きずっていたラバナスタが少しだけ明るくなったように見えるのだから。
とにかくセアは商店街にあるミゲロの店に向かう事にした。
「あ、セアさん!」
「カイツ、留守番かい?」
「うんそうってセアさん何処行ってたんだよ!?ヴァン兄が心配してたよ?」
「そうか・・・で、ミゲロさんは?」
「ミゲロさん今いないんだ」
「? 珍しいなミゲロさんが店を空けてるなんて・・・」
「そうだね」
「じゃあ馬鹿弟子やパンネロは?」
「パンネロ姉ちゃんは今日は会ってないよ。ヴァン兄ならナルビナから帰ってきたみたい」
その言葉を聞いた瞬間セアの顔から表情が消えた。
「セア・・・さん?」
カイツが恐がりながらセアに呼び掛けたらセアは目を冷たく光らせ、口を歪めた。
「・・・カイツ」
物凄く低い声でセアは言った。
普段が明るい声であるだけに恐ろしい。
「・・・なに?」
「馬鹿弟子はいったいなにをやらかしたんだい?」
「王宮の宝物庫に盗みに行って・・・」
「ほう、中々やるじゃないか」
「え?」
「いやなんでもない、馬鹿弟子がナルビナから帰ってきたことはあまり人前で言わないように」
「は、はい」
「あとは・・・馬鹿弟子がどこにいったかしらないかい?」
「い、いや」
「ふむ、困ったな。とりあえずミゲロさんを探すべきだな」
じゃあねと普段通りの明るい声で言ってセアは店を出て行ったがカイツは未だに脅えていた。
セアは店を出てすぐ街の人にミゲロを見なかったか聞いて回った。
幸いミゲロはラバナスタではちょったした有名人だから直ぐに砂海亭にいると分かった。
セアは砂海亭へと走った。
砂海亭についたセアは店内を見渡し2階にヴァンとミゲロを見つけた。
・・・なんか見た事無いヒュムの男が2人とヴィエラの女も一緒にいるのだがミゲロさんの店の取引相手だろうか?
いや、それならそこにヴァンはいらないだろうと思いそこに進んだ。
するとセアの姿を視界に捕らえたヴァンが突っ込んできた。
「何処に行ってたんだよ! 心配したよ」
「ああ、済まないな」
突っ込んできたヴァンをセアは両手でがっちりと掴み、明るい声で謝罪し
「ところで馬鹿弟子・・・カイツから聞いたんだが俺が仕事に行ってる間にナルビナ送りになったそうじゃないか」
ヴァン耳元で物凄く低いくて小さい声でセアは言った。
するとヴァンの体が震えだした。
セアの声が物凄く低いときは機嫌が悪く酷い事をしてくるのをヴァンは経験上知っている。
「え・・っとそのぉッッッッ・・・・!!!」
「まったく! 俺が仕事してる間になにやってんだお前は! 王宮に盗みに行ったごときで捕まるとは!俺の弟子なら財宝を盗んで逃げてみせろ! 捕まるなんて情け無い!!!」
「・・・怒るとこはそこなのか」
セアがヴァンの首を掴んでどこかずれた説教をし、その風景をみていた見たことも無い金髪のヒュムの男が呆れていた。
「セア、帰ってきておったのか」
「ああ」
ミゲロの言葉にセアはヴァンの首を掴みながら肯定する。
「帰ってきていきなり済まないが・・・パンネロが誘拐された」
「なんだと?」
「ああ、そこの空族2人に宛てた手紙があった。ビュエルバの魔石鉱に来いと」
どうやら身なりのいい青年のヒュムとヴィエラの女性は空族らしい。
ヴィエラとヒュムのコンビなんて珍しい。
いや、そんなことより
「? なんで空族に要求するのにパンネロを誘拐したんですか?」
「ヴァンとそこの空族が帝国兵に捕まった時パンネロが帝国兵に許してくださいと叫んでいたようでね。それで誤解を受けたようなんだ」
「なるほど」
その後セアはミゲロとヴァンの首を掴んだまま話を続けた。
とにかく空族がビュエルバまで連れて行ってくれるらしくそれにヴァンと空族の2人と金髪の人物で救出に行くということが決まったらしい。
(面倒事を起こしやがって・・・まぁ今はそれより・・・)
セアは身なりのいい青年の方に顔を向けた。
「空族の方々、俺はセア。一応この馬鹿弟子の師匠をやっている」
そう言いながらセアはヴァンの首を掴んだまま空中に持ち上げる。
「あなた方はビュエルバまで連れて行ってくださるとのこと。よければ俺も連れて行ってくれませんかね」
「はぁ、別にいいぞ」
そう言って身なりのいい青年の空族は砂海亭から出て行った。
それを見送ったセアはそういえばヴァンの首をさっきから掴みっぱなしだったなと思い出して放り投げ、ヴァンの後頭部が床に直撃した。
「ゼェ、ゼェ、ゼェ、・・・・痛いじゃないか、セア!」
「自業自得だ」
ヴァンの台詞にセアは酷薄な笑みを浮かべながら明るい声でそう返した。
暫くヴァンとセアが言い合っていたがヴィエラの女性が近づいてきて声をかけてきた。
「私はフラン、先に出て行った彼はバルフレア。そこの男性は後で紹介するわ」
フランはそういうと砂海亭の出口の方に歩いていき、金髪の男もついて行った。
金髪の人物はなにか訳ありなんだろうとセアはあたりをつけ、ヴァンと共に後に続いた。
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