不老不死の暴君
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プロローグ
アルケイディア帝国とガルテア同盟(ダルマスカ王国とナブラディア王国の同盟)の戦争終結から約一年後。
旧ダルマスカ王国領東ダルマスカ砂漠にて・・・
一人の少年が砂漠の魔物相手に戦っていた。
少年は傷だらけだったがそれでも魔物めがけて剣を振っていた。
数匹の魔物を倒したところで少年はサボテンの根元に腰をおろし辺りを見渡し・・・
「・・・・え?」
とんでもない光景に目を疑った。
砂漠のど真ん中で寝ている奴がいるのだ。
東ダルマスカ砂漠は物凄く暑いし、魔物も多いからそんなところで寝るなど正気とは思えない。
更にはその人物のすぐ近くに東ダルマスカ砂漠最強の魔物{ワイルドザウルス}がおり、口から涎をたらしているのだ。
少年の目にはどう見ても涎が寝ている人物に当たっているようにみえるのだが彼は目を覚まさない。
ワイルドザウルスはついに寝ている人物を丸呑みし・・・
「え、ええぇぇぇぇ!!?」
少年は物凄く驚いた。
寝ている人物を丸呑みにしたワイルドザウルスが急に血を吐き、体のあちこちから刃物が出てきたと思えば、血がふきだした。
そしてワイルドザウルスの腹を真っ二つにして先ほどまで寝ていた人物がワイルドザウルスの腹から出てきた。
「妙だな・・・俺は確か砂漠で寝ていた筈だが何故魔物の腹の中で寝ているのだ?」
そんな独り言を言いながら寝ていた人物は辺りを見渡し、少年に気がついたのか少年の方に歩いてきた。
「君、酷い傷じゃないか大丈夫か?」
「・・・!」
少年はそんなことより砂漠のど真ん中で寝てたうえにワイルドザウルスに丸呑みされてたあんたの方が傷があるだろうと叫びたがったが彼は血だらけではあったがついている血の殆どがワイルドザウルスの返り血なのか何故か本人は無傷である。
彼は少年にフルケアをかけた。
「これで大丈夫だろう。ところで君この辺りに町はないか?」
「えっと・・・西に少し行ったところにラバナスタって街があるよ」
少年はフルケア・・・上位の白魔法をあっさりやってのけた彼に驚きながらも答えた。
「ふむ、そうか」
「よかったら案内しようか?」
「悪いな、じゃあ頼む」
すると少年はひとつの砂丘を指差して
「あの砂丘を超えたらすぐだよ」
「そんなに近いなら砂漠なんかで寝るんじゃなかった・・・」
砂漠で寝るなんて発想できるほうがおかしいわ!と叫びたかったが少年はこらえた。
もし彼の機嫌を損ねたら一瞬で殺されかねないと思ったからだ。
「あれ? そういえば君の名前を聞いてなかったな」
「ヴァンだ、お前は?」
「・・・・・・・・セアだ。 ところでヴァンはなんで一人で砂漠なんかにいたんだい?」
「いや、子ども達みんなと喧嘩してて俺が一番強かったから砂漠の魔物相手でも十分戦えるとおもったんだけどな」
「魔物相手に戦えるようになりたのか?」
「ああ」
「そうか」
「あのさ・・・」
「ん?」
「よかったら戦い方教えてくれないか?」
「う~ん」
そういえば暇つぶしに色々な事を学びはしたが誰かに何かを教えるということはあまりしなかったなとセアは思った。
理由は教えた後にとんでもない事を起こさないかという心配からであるが・・・。
ヴァンは身なりからして平民であるがもし貴族とかだと厄介だし・・・。
「えっと、君は何処に住んでいるんだ?」
「ラバナスタだけど」
「何か仕事してる?」
「・・・ミゲロさんの店の手伝い」
「ミゲロさんって誰?」
「商人」
「もうけは?」
「まぁまぁ」
・・・なんかなぁ。
いきなり身分は?とか聞くのは嫌だしなぁ。
でも聞かないと戦い方教えて面倒事に巻き込まれるのは嫌だし。
ああ、そういえばラバナスタって聞いたことがあるな。
確か砂漠の国ダルマスカ王国の王都で三大陸の境目のオアシスにある街だっけ。
記憶が正しければ一年位前にダルマスカ王国はアルケイディア帝国に侵略された筈だから・・・。
「君はラバナスタの何処に住んでる?」
「・・・昔は市街地に住んでたけど帝国に負けてからはダウンタウンに住んでる」
ということは・・・ヴァンはアルケイディア帝国の制度でいくと外民か。
アルケイディア帝国では外民・新民・政民に大きく三つに身分が分かれている。
その内市街地で住めるのは新民・政民だ。
帝国南東の港町バーフォンハイムみたいに自治権をもっていない限り外民は都市部に住めないのだ。
そしてラバナスタが自治権を持っているという話は聞いたことがない。
ということは別に戦い方を教えても問題は無いとは思うが一応聞いておくか。
「君は帝国が嫌いか?」
「ああ大嫌いだ!」
なら問題あるまい。
外民でも帝国軍に入るもしくは帝国に税金を納める等したら新民になれるが帝国嫌いならそんなことはしないだろう。
「そうだな、じゃあ戦い方を教えてもいいぞ」
「ホントか?」
「ああ」
その後ミゲロさんとヴァンとセアで話し合い、セアはダウンタウンで住むようになり、ヴァンを馬鹿弟子と呼び、半年程鍛え、他の孤児達とも仲良くなり、1年後には馬鹿弟子のせいで国家規模の面倒事に巻き込まれるのである。
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