Element Magic Trinity
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LOVE&LUCKY
ここはアカリファの街。
その街の商業ギルド『LOVE&LUCKY』の前には人だかりが出来ていた。
「人質はどうなったんだー!」
「助けて下さい。あの中には主人が!」
「皆さん落ち着いて!今近くの魔導士ギルドに応援要請を出してます」
「危ないから離れてください!」
軍隊の言葉も聞かず、集る人達はそれぞれに喚く。
ギルドの近くの建物の壁に、ルーシィとルーは隠れていた。
「お父さん・・・」
「姫、ルー様」
「ひっ」
「うわっ」
ルーシィが呟いたと同時に、その足元からバルゴが現れる。
「何とか建物の中までは開通できそうですよ」
「よかったぁ・・・」
「ありがとう、バルゴ」
「おしおきですか?」
「感謝してんのっ!」
バルゴの言葉にルーは安堵の溜息をつき、ルーシィは礼を言う。
入り口は軍が塞いでいて使えない為、地下から入ろうという事だ。
「しかし、中には大勢の魔導士がいます。我々だけで大丈夫でしょうか?」
「大丈夫じゃなくても大丈夫にしないと!」
「やるしかないの!行くよ!」
変わらない無表情、だが口調は心配そうなバルゴにルーシィとルーはそう言うと、バルゴが掘った穴へと飛び込んだ。
LOVE&LUCKY、ギルド内。
そこには闇ギルド、裸の包帯男所属の多くの魔導士と、手首と体を拘束され、口にガムテープを張られたギルドの人達がいた。
「何でえ商業ギルドってくれーだから、たんまり金あると思ったのに」
「だから最初から銀行狙えァよかったんだよ」
「黙れ!時間がねぇ。とっとと金、袋に詰めろや」
「へい!」
リーダー格の男に言われ、他の奴等は袋に金を詰めていく。
縛られたギルドメンバー達はそれぞれに呻き声を上げた。
「うるせえっ!殺すぞコノヤロウ!」
ドォン、と音が響く。
リーダーが天井に向かって持っていた魔導散弾銃を発砲したのだ。
「うーうー・・・」
そんな中、1人の子供は声を上げ続ける。
「ア?死にてぇのか?」
子供は答えない。ガムテープを張られている為答えられない。
ただ涙を流し、拘束から抜けようと体を動かす。
「死にてぇんだなコノヤロウ!」
「よせってアニキ!」
アニキと呼ばれたリーダー格は子供に銃口を向ける。
それを見た周りの大人達は被害が自分に及ばないようにその近くから離れた。
「こっちにはヨユーがねーんだヨ!」
男が叫び、銃が発砲される。
沢山の銃弾が子供に向かい――――――――――――
「タウロス!」
「MOー!」
「大空大鷲!」
その銃弾は1発も当たらず、吹き飛んだ。
突如斧を構えた牛と風で構成された鷲が商業ギルド内の張りつめた空気を壊す。
「!」
「何だァ!?」
「どこから入って・・・」
(オオッ!)
裸の包帯男のメンバーは突然現れた魔法に驚愕し、LOVE&LUCKYの人達は現れた希望に目を輝かせる。
「そこまでよ!」
「観念しろ!」
バルゴが掘った穴からルーシィとルーが姿を現す。
「何!?」
「女が2人!?」
「僕は男だーっ!」
そして当然の如く、ルーは女と勘違いされる。
19歳には見えない童顔と男にしては華奢な体型が原因だろう。
「正規ギルドの魔導士か!?」
「くそっ!」
自分達と敵対する存在であり、魔法を使う・・・となれば、自然と相手は限られてくるわけで。
闇ギルド団員は一斉に2人へと向かっていく。
「大人しくしないと痛い目見るよ!」
「全員まとめてかかっておいで!」
向かってきたメンバー達にルーシィとルーは怯えも恐怖を一切見せず、鍵と左手を構える。
「キャンサー!」
「エビー!」
キャンサーがハサミを華麗に振るい、ギルドメンバー達の髪を全て切る。
「大空暴拳!」
風で造られたいくつもの拳が時にストレート、時に変形技で直撃していく。
「サジタリウス!」
「もしもしー!」
遠距離攻撃を得意とするサジタリウスは得意の弓矢を使い、1発のズレもなく矢を決めていく。
「大空槍騎兵!」
続けてルーは風の槍を左手に展開した魔法陣から放つ。
数々の戦いを経験してきた2人に敵う訳もなく、すぐに下っ端達はやられ、残りはリーダー格の男ただ1人。
「なァ・・・!」
「とどめっ!」
「行くよっ!」
短く言い放つと、2人は男目掛けて駆けていく。
(次はどんな魔法が出るんだーっ!)
普段魔法を見る事の少ない商業ギルドのメンバー達は、こんな状況ながらワクワクを抑えられない。
そしてルーシィとルーが放ったのは―――――――――
「ルーシィキィーック!」
「ルーレギオス飛び蹴りィーッ!」
説明しよう!
ルーシィキックとは特に魔力を使わない、はっきり言って普通の蹴り。
ルーレギオス飛び蹴りとは、やはり特に魔力を使わない、ティアお得意の飛び蹴りの真似。
つまり、魔法ではない。
(ええーーーーーーーーっ!)
魔法で始まり魔法で終わると思っていた人達は目が飛び出るんじゃないかという勢いで目を見開く。
が、とにかく裸の包帯男のメンバーは1人残らず倒れた。
それを見た人達から歓声が上がる。
「やれば出来るじゃん!あたし達!」
「ルーシィ!それよりも・・・」
「!お父さん!」
あまり戦闘が得意ではないルーシィと後方支援向きのルー。
この2人で闇ギルドの魔導士を倒せた事にルーシィも笑みを浮かべる。
が、すぐにルーが本来の目的を思い出させ、ルーシィは辺りをきょろきょろ見回した。
「ありがとう、君達ーっ!」
「助かったよーっ!」
「凄いね魔法!」
「私達からも礼を言わせてもらいます」
「い・・・いえ」
「気にしなくていいよ」
ギルドに所属する人達や軍隊に感謝を向けられる2人だが、今はそれどころではない。
(お父さん・・・どこ?何でいないのよっ!?ねぇっ!無事なの!?)
沢山の人がいる。
なのに、どこをどう見てもジュードの姿は見当たらない。
ルーシィの脚が自然と震えた。
「お父さん!」
ルーシィが耐え切れず叫んだ、瞬間。
「ルーシィ?と、君は・・・」
「!」
「え?」
後ろから声が聞こえた。
振り返ると、そこには――――――――
「「えーーーーーーーっ!?」」
昨日と同じ格好をしたジュードが立っていた。
「その格好・・・も、もしかして・・・」
「今・・・街に到着・・・したの?」
2人の言葉にジュードはバサッとフードを外す。
「金がなくてね。歩いてここまで来たモンだから」
((取り越し苦労!))
まさかの事に2人は驚きを隠せない。
少し驚愕で震えていたルーは、ふとルーシィに小声で呟いた。
「ねぇルーシィ」
「何?」
「もしかして昨日借りようとしてた10万Jって・・・移動費?」
「どんだけ金銭感覚マヒしてんのよ!」
もちろん、列車に乗るのに10万Jも必要ない。
凄まじく高級な乗り物に乗らない限りは、手元に1500Jくらいあれば足りるはずだ。
「何でお前がここに・・・?」
「何でって・・・お父さんが向かったギルドが襲われたって聞いて・・・」
「!」
そう言われ、ジュードはギルドに目を向ける。
「もう大丈夫です」
「安心してくださいー」
「隊長!何人か逃走しました」
そこには多くの人だかりと軍隊の姿。
ギルドから目を外し、ジュードはルーシィに問う。
「パパが心配で来てくれたのか?」
「知らないっ!さようなら!」
「待ってよルーシィ!」
ジュードに背を向けて帰ろうとするルーシィをルーは慌てて追う。
「そうか・・・ありがとな・・・」
礼を言われ、ルーシィは足を止めた。
振り返る事はしない。
つられるように、ルーも足を止める。
「勘違いしないでね。あたし・・・お父さんの事、許した訳じゃないから」
その言葉に、ジュードは小さく震える。
そして、俯いた。
「ああ。いいんだ・・・当然だよ。随分と長い道を歩いてきたからね。私にもいろいろ考える時間があった」
マグノリアからアカリファは距離がある。
それを歩くという事は、かなり長い道だったのだろう。
「昨日はすまなかったね。どうかしていた・・・後悔しているし、恥ずかしいよ・・・」
それを聞くルーシィはつかつかと歩く。
ついていくようにルーも歩く。
ルーシィの表情はどこか暗く、ルーはそれをどこか悲しそうな表情で見ていた。
「私はこれから変わる。お金がなくてもここまで辿り着けたんだ。きっと・・・何でも出来る」
そう言うと、ジュードは俯いた。
そして、ゆっくりと口を開く。
「このギルドはね・・・パパとママが出会った場所なんだ」
「!」
ピタッとルーシィが足を止める。
「私が独立を考えてる時に、丁度ママのお腹に君がいてね・・・」
その頃を懐かしむように目を細め、ジュードは続ける。
「2人でギルドをやめる事にしたんだけど、その時ギルドの看板が壊れてて、LUCKYがLUCYになっていたんだ。それがおかしくてね・・・2人で、もし娘が生まれたらルーシィって名前にしようと・・・」
それを聞くルーシィは足を止めたまま動かない。
少しして、振り返った。
「何それ。ノリで娘の名前、決めないでよ」
そう言ったルーシィは、笑っていた。
『お嬢様のルーシィ』として生きていた時には見せなかったであろう、笑顔を。
「そうだな。本当にすまない・・・」
「あたし・・・」
ルーシィが何かを言いかけた。
が、そこから先を言う事は不可能となる。
何故ならば―――――――――
「ルーシィ!ルー!無事かーーーーーーーっ!」
「どうした一体!」
「ルー!何があったああああっ!1から10までオレに説明しろおおおおおっ!」
「ルーシィ!ルー!」
「「えーーーーーーーーーーーっ!」」
ドドドドド・・・と足音を立て、ナツ達が走ってきたからだ。
最強チーム+傘下チームが勢ぞろいし、ルーシィとルーは思わず驚愕で叫ぶ。
「まさかこれをお前達2人で解決したのか?やるな・・・!」
「よく解らないけど、お手柄って事かしら?」
「みたいだな」
いつもの巨大荷物をガラガラと引き摺るエルザが呟き、ヴィーテルシアに乗るティアは首を傾げ、ヴィーテルシアは小さく頷く。
「いや・・・その・・・」
どう説明するかと悩むルーシィは後ろにいるジュードへと目を向けた。
ジュードは無言で、それでも笑みを浮かべて、コクッと頷く。
「元気でね。お父さん」
それを見たルーシィは右手を振り、ナツ達の元へと向かった。
「どーしたんだよ、急にー!」
「何でもないの」
「何でもねー訳ねーだろ!」
「そうだそうだ!何でもねーようには見えねーぞ!」
「仕事キャンセルしちゃったんだよ」
「全く、アンタの家賃の為に仕事行くって話だったのに」
「ごめんね~」
わいわいと仲間達と話すルーシィは、とても嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
その後ろ姿をジュードは見つめている。
そして、揺れる金髪を愛おしそうに見つめるルーに目を向けた。
「ルー君・・・だったかな?」
「ん?」
名前を呼ばれたルーは小首を傾げて振り返る。
ジュードは微笑み、口を開いた。
「ルーシィを・・・よろしく頼むよ」
その言葉に、ルーはキョトンとする。
が、すぐに言葉の意味を理解し、笑った。
女と間違えられても仕方ない、鋭さなど皆無の愛らしい子犬の笑みを。
「大丈夫。ルーシィは僕が守るよ!」
可愛らしい笑みを残し、ルーは駆け足で仲間達を追っていく。
「安心してよ・・・もう僕は、誰も失わない」
その笑みが、消えた。
目に真剣な光が宿り、ルーは駆け足のまま誰に告げる訳でもなく、呟く。
「僕が死のうと守り抜くよ―――――サヤと同じ道は歩かせない・・・絶対に」
闇ギルド、裸の包帯男の本部。
「金は、どうしたァ」
廃墟のような建物に、髪の毛を高く上へ伸ばした男『ガトー』がいた。
その目の前には顔をボコボコに腫らした、先ほどの商業ギルド襲撃犯のリーダー格。
「すびばせん・・・正規ギルドに邪魔されて・・・!手に入れる事ができばせんでひた!た・・・たずけでくだはいっ!」
「あ?」
ロープで頭を床に向けた状態で吊るされる男に、ぐいっとガトーは棒を突き付ける。
「金は、どうしたァ?」
「ひいっ!だ・・・だからっ!」
先ほど言った事を繰り返そうとする男。
が、言う前に別の男が口を開いた。
「ぎゃほーっ!同じセリフ繰り返してるよ。ねぇモンはねぇんだよ、ガトー兄さん」
「笑ってられる場合か?ザトー兄さん」
ガトーが振り返った先にいるのはザトー。
KING BARにてラクサスに一瞬で敗北した男だ。
「『六魔将軍』への上納金の期限が迫ってる。笑ってられる場合か?ザトー兄さん」
「また繰り返してるよ、ガトー兄さん」
ガトーが先ほどから繰り返しているが、それには誰も何も言わない。
どうやら日常茶飯事のようだ。
(いつも思うのだが・・・)
(何でどちらも兄さん?)
疑問を持つのはそっちだった。
確かにお互いがお互いを「兄さん」と呼び合うのは変だろう。
双子だとしてもどちらが年上かははっきりしている事が多いと思う(作者は双子じゃないのでよく解りませんが)。
ティアとクロスもクロスが年下の為「姉さん」と呼んでいる。
「闇の世界で六魔将軍に逆らえるギルドはねえんだよ。闇の世界で」
「解ってるって!あいつ等、急に上納金の額を上げやがって。一体何を企んでるんだか」
とある建物。
「聴こえるぞ。時代の変わる音、目を開ける音、始まりの音」
その人物は、大きな蛇を連れていた。
紫の鱗の蛇を連れたその人物は、笑みを浮かべる。
「光崩し」
その男の名は『コブラ』。
裸の包帯男が名を上げた、六魔将軍の1人である。
後書き
こんにちは、緋色の空です。
さてさて、次回はナツティアの予定・・・ですが!
ええ、はい。言うまでもないかもですがね。
アイデアがないのですよーっ!
仕事系かギルド日常系か、それともいっそやらないでニルヴァーナ編突入か・・・。
うう、決まらない・・・。
それと、もう1つ思いつかない事が。
滅竜魔導士のキャラを作りたいと思っているんですね。
だけど、何竜にしようかな・・・と。
いっつもなんですよ。ここで悩んで諦め続けました。
だけど今回は頑張ろうって事で考えてますが、全く・・・。
ああ、緋色の空の脳は妄想にしか使えないのかーっ!
感想・批評、お待ちしてます。
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