とある蛇の世界録
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エピローグ 夢への誘い
オーフィスとマユの乱入。それをモニターで確認した三勢力の長は、ありえないものを見る目でそれを見ていた。
「おいおい、『無限の龍神』と『絶対悪の邪神』とはまたでっかいのがきたな……」
「世界最強たちが、たった数キロの範囲に四人もいるんですからね……」
苦笑いを浮かべている三人を見て、リアスが代表して訊く。
「お兄様。その二人は?」
「あぁ、リアスたちは知らなかったか。そうだね、彼らは――ッ!」
サーゼクスが乱入者二人の説明をしようと口を開いた瞬間だった。突如、とてつもなく大きな気配を感じ。息を呑む。外には数百人の護衛がいるのに、それは直ぐそこまで迫っていたのだ。
――扉が破壊される。
現れたのは、真っ赤な髪をした少女と、真っ黒な髪に一本の槍を持った男だった。
『無限の龍神』と『絶対悪の邪神』の通せんぼを受け、その二人を難なく弾き飛ばした朧は、標的を二人――正確にはアジ・ダハーカも含め三人だが――へと変更し、戦いを再開していた。
「ちょちょッ! お父さん強すぎでしょッ!」
「ん、これは予想外」
二人の蹴りを身体で受け止め、そのまま二人を殴り飛ばした朧。二人は口から血を流していたが、それを拭い取り、攻撃を再開する。
オーフィスもマユも、理論上は無限の存在だ。
オーフィスは、そもそも存在自体が無限であるし、マユも朧はうそ臭いと言っていたが、悪意なしでは存在できないことは真実だ。それはつまり、悪意さえあればいくらでも復活できるということなので、無限の存在と言って差し支えないだろう。その存在に、徐々にとはいえダメージが入っているのは、朧の強さが伺えるところだった。
「このままじゃジリ貧だよ、お姉ちゃん」
「ん、分かってる」
そういいオーフィスは、その手に一つの物体を出現させる。それはかつて朧が、堕天使の撃退に用いたあの、ウロボロスの象徴だった。――だがこれは、朧のものと違い本物なので。出力は圧倒的にこちらの方が高い。
「お、お姉ちゃん? それ、まさか……」
「行く。母様」
「だよねー。もういいよッ! やっちゃって、お姉ちゃんッ!」
『是なる無限龍』
効果は単純にして明快。相手が死ぬまで永遠に喰らい憑くというもの。そんなものを実の父に向けるのはどうかと思うが、そんな事を気にしている暇は無い。
「…………う、そ」
「あははは、お父さんすっごーいなー」
現時点で出せる最強の一撃だった、オーフィスのそれ。それを受けた朧は、その蛇を吸収したのだ。もう、どう反応して良いのか分からなかった。
「とりあえず、もうちょっと頑張ろうか、お姉ちゃん」
「ん、分かった。マユ」
二人は、世界最強に突撃していった。
「はじめまして、というべきかな。三勢力の長たちよ」
突如リアスたちの前に現れた二人一組の少年少女。それに顔を引きつらせ、アザゼルが問う。
「おいおい、テロにしてはちんけじゃねぇかよ。『禍の団』」
「なに、今回は顔見せだよ。俺達の事を覚えていてほしくてね」
そしてぐるりと部屋中を一瞥し、ニヤリと笑う。
「俺は『禍の団』英雄派のリーダー、曹操だ。そして――」
曹操は、自らの隣にいる少女に目を向け言う。
「彼女は、アンフィスバエナ。かつて君たちが封印した『蛇』の一人だよ」
「なッ!」
そう、彼女は数日前に朧が曹操に渡した『おまもり』に封印されていた『蛇』だ。
アンフィスバエナ。彼女の事を朧はアンと呼んでいるが、それは余談だろう。はるか昔、三勢力が滅ぼしたメデューサの一族の血から生まれた蛇の化け物だった。
「先ほども言ったが、今回は顔見せだ。だから――」
それは、突然の事だった。
今まで静かだった少女アンフィスバエナが、最も近くに居たサーゼクスに襲い掛かったのだ。だが、その攻撃もグレイフィアに阻まれる。
「少し遊んでいこう。俺の相手は君たちだ」
と、曹操が見たのはグレモリー眷族たちだった。
二つの場所で、大きな戦いが二つ巻き起こった。
オーフィスもマユも、満身創痍だった。立っていられるのがやっとの状態。それでも良くやった方だった。全力の朧を前にして、十分以上の戦いをしたのだから。それは善戦といっても良い。だが、勝つことは叶わなかった。
「あははは、最悪だね。これ」
「打つ手なし、まずい」
朧が一歩一歩近寄ってくる。それに身構えた次の瞬間だった。
――突然、朧と二人の間に裂け目が生まれたのだ。
「えぇッ!?」
「…………!?」
突如あらわれたそれ――次元の裂け目に驚く二人。
オーフィスとマユの知っているうちでは、次元の狭間にいるのはたった一人だけだったのだから、驚くのも無理は無かった。
その次元の裂け目から現れたのは、燃えるように真っ赤な髪をした美女だった。その女が手を振るうと、その手から真っ赤なもやのようなものが出現し、朧を覆った。
それに抵抗する朧だったが、次第に静かになり、そして数秒後にはその場に倒れ伏した。
その女は、オーフィスとマユのほうを振り向き、顔色を変えずに言う。
「オーフィス。何故こういう状況になった」
「それは難しい話、グレートレッド」
こうして、この駒王学園には、世界最強の五人が揃い踏みとなったのだった。
アザゼルとミカエルが、壁に叩きつけられた。アンフィスバエナは圧倒的な強さで、三勢力の長と最強の女王を翻弄していた。
サーゼクスが滅びの魔力で攻撃しても、効果は見られない。それならばと、接近戦をしても返り討ちにされる。
全く勝ち目が見えないのだ。
「弱い」
そんな四人にたった一言、口に出す。
「ちくしょうが、強すぎんだろコイツ」
「勝ち目が見えませんね。困りました」
そんな話し合いも、長くは続けられなかった。アンフィスバエナの攻撃に四方に散ることで避け、戦闘を再開した。
一方グレモリー眷属の方も、たった一人の人間に対して苦戦を強いられていた。
「どうした? 悪魔はそんなものか?」
それに言葉を返す余裕も無い。曹操の持っている槍を悪魔の本能が危険だと告げている。
『黄昏の聖槍』
かつてイエス・キリストを貫いたとされる『聖遺物』が元となっているらしい、神滅具の一つだ。並の悪魔ならば、この槍が放つ光だけで滅んでしまうほどの強さを持つ、最強の神滅具とされている。
「クソっ! 部長ッ!」
「イッセー、大丈夫よ」
意志を高めあうグレモリー眷属に、アンフィスバエナと同じ台詞を告げる。
「弱いな。思わず殺してしまいそうだ」
「ッ!」
悔しいが、反論は出来ない。守りに手一杯で攻撃が出来ない。さらに、少しずつ傷も目立ってきた。それに相手はおそらく本気ではないだろう。
「それでも――ッ」
全員で頷きあい、攻撃を仕掛けようと意気込んだ瞬間だった。
今まで感じていた、朧の固有結界『アジ・フロイライン』の力が消えたのだ。ちょうど、グレートレッドが朧を夢へといざなった頃の事だった。
「…………潮時か。ここは引くとしよう」
「ッ! 待ちなさい」
それに聞く耳を持たずに、曹操はいつの間にか隣に居たアンフィスバエナと共に、霧に飲まれて消えていった。
誰がどうみても惨敗だった。全員の雰囲気が暗くよどんだものになる。そんな中、一誠がリアスの近くに寄っていく。
「部長、俺強くなりますッ! 部長のこと護れるように、俺は最強の兵士になりますからッ!」
それに目を見開き、そして笑顔で頷くリアス。
「えぇ。絶対に強くなるわよ、イッセー」
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「起きてよッ! 朧ッ! ねぇ、朧ッ!」
後書き
さぁ、なんだかんだいってもエクスカリバー編はここで終了です。
次からは新たな章。朧の過去編です。
では、次回また
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