とある蛇の世界録
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四話
まだ七時を過ぎてないくらいだったが、朧のいる路地裏は真っ暗な闇に包まれていた。そんな中朧は、壁に寄りかかり腕を組んで、目を閉じていた。
すると先が行き止まりであるはずの路地裏の奥から、一人の少女が現れた。音もなく朧に近寄っていく少女。朧の目の前まで来ると、とたんに笑顔になって、声を弾ませた。
「お父さん、久しぶりだね」
その声に目を開け、ふっと笑みをつくり答える。
「あぁ、本当に久しぶりだな――マユ」
その返事に、また笑みを深めるマユと呼ばれた少女。
アンリ・マンユ。絶対悪の象徴とされる存在。
かつて世界を創造した神の一人だったが、戦いに敗れた後に、姿を消した大天災だった。
「で、用とはなんだ?」
「いやね。僕も最近暇になってきたんだよ。さすがに何万年も姿を隠すのはつまらないでしょ? だからちょっとだけ遊ぼうかと思って」
いぶかしむ目でマユを見る朧。だが、それに何も反応を見せずに――強いて言うならば笑うことで返した。
「だからね、そろそろ世界滅ぼそうかなって」
まるでおもちゃを与えられた子供のように笑うマユ。とてもとても嬉しそうに笑うのだ、この少女はいつも。
「で、どうした?」
「うん、だから力を返してもらおうと思ってさ。お父さんのところに来たんだ」
マユをにらむ。実際は目を合わせているだけだが、それでもじっとマユの目を見つめる。
「その後は、どうするんだ?」
「うーん、どうしようかな。お姉ちゃんに協力して、あの赤い龍を倒すのもいいかな……、それとも世界を超えて、また滅ぼすかな……悩んじゃうね」
「…………」
「でも一応は、お姉ちゃんを手伝わないとだよね。時々遊んでくれるし」
世界を滅ぼすことに、全くのためらいがないことが手に取るように分かる。さらに確実にマユは世界を滅ぼせるだろう。絶対悪の名は伊達じゃないのだから。
「………世界を滅ぼすのはやめておけ。その後の反動が面倒だ」
それに、今現在において、新しい世界を創造出来るのは、グレードレッドと自分だけなのだ。世界の創造は面倒、というのが本当の建前だった。
「えー、なんでさー」
「だが、三勢力の壊滅くらいなら私は知らん。それに、『あいつ』も三勢力を滅ぼしに懸かるだろうしな、さっき『おまもり』から解放されたの感じた」
「んー? 三勢力って、僕が昔倒さなかったっけ」
「お前のつめが甘いんだ。数百年で復興したぞ」
「そうなんだ、へー、凄い生命力だね」
「……まぁ、いい。力は返してやる。早くするぞ」
そういい、マユの目線と合うまで腰を下ろす。それにまた無邪気にわらって――朧の唇と自分のそれをくっつけた。
力が流れるのを感じた。マユはそのままの勢いで舌を絡めようとしたが、すぐに朧が唇を離した。
「むー、けち。もう少しくらい良いじゃん」
「馬鹿か、お前は。あまり粗相をするなよ。あと人間に関しては手を出すなよ」
「当たり前だよ。だって僕、人間がいないと生きていけないし」
「そうだったな。さっさといけよ。『あいつ』のことも頼んだ」
「りょーかい」
マユは笑顔でその姿を闇へと消した。それを見送り溜息をつく朧。
「……これも龍のせいか? まったく面倒なことをしてくれる」
それだけ言い残し、朧はその場を立ち去った。
――――それから数日後の天界にて
「ミカエル様っ――!」
一人の男が、ドアを乱雑に開け中に入ってきた。それに微笑みを加え、言う。
「どうしたのですか?」
「こっ、これをッ!」
そう言って男が差し出したものは、一枚の報告書だった。そこに書かれていたのは、三頭のドラゴンが現れたむねだった。
「! こ……これ、はッ。大変ですッ」
直ぐにミカエルは、アザゼルとサーゼクスに連絡をいれる。おそらく二人のところにも連絡はいっているはずだ。
まさかあの龍が復活するなんてッ――――
三頭の頭を持った暗黒の龍。
歴史上、比類ないほどの大災害もたらした邪龍の名は――
――暗黒龍アジ・ダハーカ。
大天災、アンリ・マンユの再来だった。
後書き
さぁ、何故か混沌としてきましたこの作品。思いっきり迷走している感が……
今回、また朧の子が出てきましたね。
アンリ・マンユ
身長 143cm (実体がないためNG)
体重 27kg (実体がないためNG)
白い髪に、赤い目の美少女。
こんな感じですかね、一応オーフィスと同等の力を持っていますが、相性によって敗北します。
また、朧の言っていた『あいつ』というのもおいおい出しますのでお待ちください。
では、また。
ページ上へ戻る