戦国異伝
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第百五十一話 四国と三河その四
「奴等の後ろから攻めるぞ」
「はい、わかりました」
「それでは今より」
元親はまず攻める者だ、だから今も十河城を囲む彼等に急行しそのうえで攻撃を仕掛けた、城を囲み彼等に注意を払っていなかった彼等は瞬く間に攻められた。
「なっ、織田の援軍か!」
「何処から出て来た!」
「まさか阿波からか!?」
「阿波から来たのか!」
「この兵は紫の具足ぞ!」
「では土佐からか!」
長宗我部の兵達である何よりの証だ、それでわかったのだ。
元親はその彼等に容赦なく攻撃を加える、槍で突き刀で斬る。元親はそれと共に戦の場で叫ぶのだった。
「降れ!武器を捨てれば攻めぬ!」
「何っ、武器を捨てればか」
「攻めぬというのか」
「そうじゃ、攻めぬ」
全くだ、それはないというのだ。
「織田家は武器を持たぬ者には何もせぬ、武器を捨て村に帰れ!」
「そういえば顕如様も言っておられるな」
「うむ、無駄に命を捨てるなと」
「百姓として生きることを優先せよと」
「そう仰っておる」
灰色の本願寺の服を着た百姓達も言いだ、そして。
僧侶達もだ、戦が自分達にとって危ういと察して百姓達に言うのだった。
「よいか、命は粗末にするな」
「織田家は武器を持たぬ者には何もせぬ」
「だからこそじゃ」
「ここはじゃ」
「早く武器を捨てよ」
「そして逃げよ」
こう話してだ、そして。
本願寺の門徒達は武器も旗も捨ててすぐに戦の場を後にした、元親も彼等についてはこう言うのだった。
「よいか、あの者達は攻めるな」
「はい、逃げる者はですな」
「決してですな」
「そのまま村に帰らせてやれ」
一切手を出さずにだ、そうしろというのだ。
「わかったな」
「はい、そうですな」
「それでは」
元親の家臣達も兵達も頷きだ、そうして。
彼等は逃げる者達は追わなかった、それも一切だ。
それで襲い掛かって来る者達だけと戦う、だがだった。
その彼等を見てだ、元親は戦いながら言うのだ。
「今我等が戦っている相手は」
「ですな、どうやら」
「この者達は」
「只の門徒ではない」
それはだ、到底だというのだ。
「灰色の服を着た者は一人もおらんぞ」
「はい、何故でしょうか」
「あの者達こそが門徒だというのに」
灰色の服や旗こそが本願寺の証だ、親鸞が定めた色だ。
本願寺の門徒達は敵味方を区別する為にその親鸞が定めた灰色、悪人にならねばならぬがこそ救われるべき民の色、その色を着て戦うのだ。
しかしその彼等はというと。
「一人もな」
「全くですね」
「一人もですね」
「そうだ、一人もおらぬ」
灰色の服を着ている者で戦う者はというのだ。
「全くな」
「確かに面妖ですな」
「あの者達こそが戦うというのに」
「何かやけに暗い服の者達だけが来ます」
「それに」
しかもだった、さらに。
「鉄砲や弓矢はその者達が持っております」
「よき刀や槍も」
「この者達は一体」
「この動き、百姓のものではない」
自ら槍も振るいながらだ、彼は言った。
槍を右に左に振るいながら彼等を蹴散らす、そして言うのだ。
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