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こんな私(俺)の物語

作者:金猫
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第十三話 聖剣ですか過去話ですか

 
前書き
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続けた甲斐がありました!ありがとうございます!





ジャンプネタが入ります。 

 
妖怪って聖剣に弱いのかな?




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Said兵藤一誠

「聖剣計画?」

「そう、祐斗はその計画の生き残りなのよ」

あのあと、一通りの活動を終え、家に戻ってきた俺とアーシアと部長。
今は俺の部屋に三人集まって、話をしている。話の内容は、そう、木場のことだった。

「数年前まで、キリスト教内で聖剣エクスカリバーが扱える者を育てる計画が存在したの」

「・・・・・・初めて知りました」

アーシアはこの計画のことを知らなかった。ん?じゃあ今は新人悪魔の俺達に伝えてくださってるんだよな?じゃあ、

「部長、紫さんにも木場のこと教えた方がいいんじゃないですか?」

「いいのよ。祐斗のことを言おうとしたら、『もう知っているわ』って言ってたわ。大方、朱乃から聴いていたと思うわ」

情報収集に余念がねぇ。流石紫さん。

「話を戻すわよな聖剣は対悪魔にとっての最大の武器。私達悪魔が聖剣に触れたらたちまち身を焦がす。斬られればなす術もなく消滅させられる。神を信仰し、悪魔を敵視する使徒にとっては究極とも言える兵器よ」

部長の説明から、その聖剣の恐ろしさがわかる。斬られれば終わりだなんて、とんでもない剣だ。

「聖剣はその出自は様々だけれど、一番有名なのはエクスカリバーかしら。日本でも色々な書物で取り上げられているわね。神の領域にまで達した者が魔術、錬金術等を用いて創りあげた聖なる武器ーー聖剣。けれど、聖剣は使う者を選ぶの。使いこなせる人間は数十年に一人出るか出ないかだと聞くわ」

「木場は魔剣を創り出す神器(セイクリッドギア)を持った能力者ですよね?それと同じように聖剣を創り出す神器は無いんですか?」

魔があるのなら、対極の聖剣を創り出す神器もあるんじゃないか?なんて短絡的に思った。

「無いわけじゃないわ。けれど、現存する聖剣に比べると、今のところ聖なる神器は今一つね。勿論、弱いって訳ではないのよ?中にはあなたの神器同様に『神滅具(ロンギヌス)』の聖具もあるわ。イエス・キリストを殺した者が持っていた神器、『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』が有名かしら。『神滅具』の代名詞になったとも言われているわ」

『神滅具』

神を倒せる程の力を有した神器のことだ。俺の左腕に宿っている『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』も神滅具だ。にしても、歴史の謎がいきなりネタバレされるとは。上級悪魔様とのお話は奥が深いぜ。

「ただ、エクスカリバー、デュランダル、日本の天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)、それらの聖剣が強力すぎて、匹敵する聖なる神器は現時点で存在しないわ。魔剣の方もほぼ同様かしら」

う~ん。よくわからない。まだまだ覚えることは多そうだ。
紫さんは詳しそうだな。今度教えてもらおう。

「祐斗は聖剣ーー特にエクスカリバーと適応するため、人為的に養成を受けた者の一人なのよ」

「じゃあ、木場は聖剣を使えるんですか?」

「いいえ、祐斗は聖剣にて適応できなかった。それどころか、祐斗と同時期に養成された者達も全員適応できなかったようだけれど・・・・・・適応できなかったと知った教会関係者は、祐斗達被験者を『不良品』と決めつけ、処分に至った」

処分。
つまりは殺したってことか?

「祐斗を含む被験者の多くは殺されたそうよ。ただ、『聖剣に適応できなかった』という理由だけで・・・・・・」

「・・・・・・そ、そんな、主に仕える者がそのようなことをしていい筈がありません」

アーシアにとってはその情報はショックだったようだ。自分が信じていたものが裏切っていったら、泣きたくもなるよな。

「彼ら教会の者達は私達悪魔を邪悪な存在だと言うけれど、人間の悪意こそが、この世で一番の邪悪だと思うわ」

部長は、根は優しい女性だと思う。人間界にいるのが長いから、人間のような感情を得てしまったと部長はおっしゃっていたが、それだけではないと俺は感じる。
悪魔にだって優しい者はいる。俺の持論だ。

「私が祐斗を転生させたとき、あの子は瀕死の中でも強烈な復讐を誓っていたわ。生まれたときから聖剣に狂わされた才能だったからこそ、悪魔としての生で有意義に使ってもらいたかった。祐斗の持つ剣の才能は、聖剣にこだわるにはもったいないものね」

やっぱり部長は優しい。聖剣に人生を狂わされた木場を悪魔に転生させることで、少しでも救いたかったんだろう。
でも、木場はーー

「あの子は忘れられなかった。聖剣を、聖剣に関わった者達を、教会の者達をーー」

神父を嫌悪していたり、聖剣の情報にやけにこだわったのは、木場がいまだに引きずっているからか。確かに、自分の人生を好き勝手にされたあげく、勝手に殺されたんじゃ、怨恨を持ってもおかしくない。それが幼少の頃からとなると、恨みの大きさも相当なものだろう。

「兎に角、暫くは見守るわ。今はぶり返した聖剣への想いで頭が一杯でしょうから。普段のあの子に戻ってくれるといいのだけれど」

「あ、その事なんですが、切っ掛けがこの写真っぽいんです」

「・・・イッセー、あなたの知り合いに教会と関わりを持つ人がいるの?」

「いえ、身内にはいません。ただ、俺が幼い頃に近所に住んでいた子がクリスチャンだったみたいです」

「そう、あなたの近くにーーいえ、十年以上も前にこの町には聖剣があったなんてね。恐ろしいわ」

「じゃあ、その剣は本物の聖剣なんですか?」

「ええ、聖剣の一つね。先ほど説明した伝説の聖剣ほどではないけれど、本物だわ。となると、この男性が聖剣使い・・・・・・。なるほど、私の前任悪魔が消滅させられたと聞いてはいたけれど、その理由がこれなら説明もつくわ。でも、確かーー」

おおっと、部長が何やら独り言を始めてしまった。何か思い当たることがあるのかな?

「・・・・・・もう寝ましょう。あまりあれこれと考えていても祐斗の機嫌がおいそれとなおってくれるわけでもないわ」

そう言うと、部長は服をーー脱ぎ出した!?

「ぶ、部長!?な、なんでここで服を脱ぐんですか!?」

「何故って、私は寝るとき裸じゃないと眠れないってイッセーも知っているでしょう?」

「いやいやいやいやいや!そうじゃなくて、何故俺の部屋で!?」

「あなたと一緒に寝るからに決まっているでしょう」

ブッ!

お、俺の鼻からおっぱいに対する愛が溢れる!
うおおおおおおっ!女の子に「一緒に寝たい」なんて言われるとは!

「なら、私も寝ます!イッセーさんと寝ますぅ!」

おいおいおいおいおい!アーシアまで脱ぎ出したぞ!?
ダメだよアーシア!部長の真似しちゃダメだよ!

「部長!アーシアに悪影響です!服を着てください!」

「悪影響?それは随分な言い方ね、イッセー。私が裸で寝ているのは知っているでしょう?あなたは私と何度か寝ているのだから」

「・・・・・・な、何度も寝た・・・?そ、そんなイッセーさんと部長さんが・・・?」

相当なショックを受けているアーシア。涙目でプルプルと震えている。
二人の間で何が起きているんですか!?

「アーシア、今夜は私に譲りなさい」

「嫌です。・・・私だってイッセーさんに甘える権利があると思います。私だってイッセーさんと寝たいんです!」

アーシア!そんなに俺と寝たかったのか!複雑だが凄い嬉しいぞ!
二人の間で火花が散る。どうしよう、凄く気まずい。段々と息苦しくなってきた。酸素が足りてない!

「では、イッセーに決めてもらいましょうか」

「イッセーさん、私と寝てくれますよね?」

どちらかを選ぶなんて俺にはできないよ!
この日ほど、紫さんの話術が欲しいと思ったことはない。


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「・・・・・・ふぅ」

俺は台所で水を一杯飲んだ。

「・・・・・・ふぅ」

・・・・・・何故か紫さんがいる。何故?

「相変わらず深夜に五月蝿いから責めて結界でも張りなさいって注意しようと思ったのよ」

読心術!?なんか怖い。この間一年生の古明地さとりって子に思ったことを次々と言い当てられた時以来だ。

それにしても、アーシアが部長の影響でエロくなりそうだ・・・。まあ、それはそれで嬉しいけど、複雑な心境だ。
アーシアは俺が守らないといけないんだ。守るべき女の子がエロエロになっていくってのは・・・いいことかもしれない!でも、悪いことでもある!うぅ、俺の脳味噌じゃ処理しきれないよ・・・・・・。
ふと、紫さんに助力して頂こうと思ったら、既にいなかった。神出鬼没すぎる!
結局は、「今回は二人と一緒に寝る」ということで一応決着がついた。ベッドでは俺を真ん中に、右側にアーシア、左側に部長が寝るという、夢にまで見たシチュエーションだ!これほど素敵なことはないだろう!
だが、左側の部長に手を出せばアーシアが怒りそうだし、右側のアーシアに手を出せば良心の呵責(かしゃく)に苛まれる。
つまりは生殺しなんだよ!
何度もその身体に触れたいと思ったのよ!興奮して寝ることすらできない!
くそ!抱きてぇぇぇぇ!
ここまで俺に甲斐性が無いとは思わなかった!畜生!なんて絶望的な真実なんだ!俺が童貞だからなのか!?
脳内では完璧だったのに!シュミレーションは完璧なはずなのに!現実は厳しい!
うぅ、なんでこんなことに・・・・・・

『よー、相棒。悩んでいるところ悪い』

ーーっ。まさか、そちらから話しかけてくるとは思わなかった。俺の左腕の神器(セイクリッドギア)『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』に宿る存在、『赤い龍の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)』ーードライグ。
フェニックス家とのレーティングゲームの後、突然俺へ語りかけてきたんだ。そして、俺に『禁手(バランスブレイカー)』と呼ばれる神器の持つ究極の力を貸してくれた。
残念ながら、止めをさしきることはできなかったが、そのお陰で精神が疲弊したライザー・フェニックスを紫さんが倒した。まあ、俺がいなくても倒せたような気がしたけど。
しかし、その代償として左腕をドライグに差し出した。結果、俺の左腕はドラゴンの腕になってしまった。
今は部長と朱乃さんの力で普通の腕に戻っている。ドラゴンの力を散らす術を定期的にしないと、またドラゴンの腕になっちまうがな。
ていうか、あれから出てこなかったうえに呼びかけてもシカトしやがって!

『まあ、そう言うなよ。今回は逃げない。ちょっと話そうや』

俺はリビングにあるソファーに座り込んだ。

「急に出てきやがって」

『まあ、そう言うな』

もしかして、俺の中のドラゴンの力とやらが溜まって来ていたのか?こいつが話しかけてきたのはそれの影響だろうか・・・・・・?
明日は朱乃さんにドラゴンの力を散らしてもらう日だ。グフフ、明日が楽しみだぜ。あれ、滅茶苦茶エロいんだよななぁ・・・。つい、涎が出てしまう。

『相変わらず頭の中は如何わしいことで一杯だな』

「うるせぇ!多感な時期なんだよ!で、話ってのは?」

『異性の話でもいいんだがな』

「・・・聞いていたのか?」

『まあ、俺とお前は常に共にあるから、否応なく聞こえてしまうのさ』

丸聞こえですか。筒抜けですか。しかも、心の声まである程度聞こえているらしいから、尚更性質が悪い。

『グレモリーとその眷属は悪魔の中でも特別情愛を持つ者達だ。お前さんの主と仲間も例外じゃない。特にリアス・グレモリーはお前に対する愛情が深いようだが・・・・・・随分と可愛がられているじゃないか』

「・・・うん、なんか、すげぇ可愛がられてる」

そうなんだよなぁ。焼き鳥を倒してから、スキンシップがより過激になってきた。ただ、アーシアの前でもやるとアーシアが何故か怒るんだよな。紫さんは微笑ましいものを見るような目で見てくるし。

『ククク、色を知るのもいい年頃だろう。そういうのは早め早めに体験しておいた方がいい。いつ「白い奴」が目の前に現れるかわかったものではないからな』

「・・・なあ、前から訊きたかったんだけど!その『白い奴』ってなんだ?」

『ーー白い龍、バニシング・ドラゴンさ』

ーーっ。
バ、バニシング・・・・・・ドラゴン?
ドライグーーウェルシュ・ドラゴンと関係があるのか?そういや、ドライグは『赤龍帝(せきりゅうてい)』と呼ばれているんだよな。じゃあ、白い龍ってのは・・・。
そう考えているときに、ドライグが話しかけてきた。

『神と天使、堕天使、悪魔、これら三者が大昔に戦争をしていたのは知っているよな?』

「ああ、基本らしいからな」

『そのとき、いろんな存在もそれぞれの勢力に力を貸した。妖精、精霊、西洋の魔物、東洋の妖怪、人間ーー。だが、ドラゴンだけがどの勢力にも手を貸さなかった』

「どうしてだ?」

『さて、どうだかな。明確な理由は今ではわからない。しかしな、ドラゴンってのはどいつもこいつも力の塊で、どいつもこいつも自由気ままで我儘だった。中には悪魔になったり、神に味方したりしたドラゴンもいたようだが、大半は戦争なぞ知らんぷりして好き勝手に生きてきた。ところがな、三大勢力戦争の最中、大喧嘩を始めたバかなドラゴンが二匹いた。しかもそいつらときたら、ドラゴンの中でも最強クラスで、それこそ、神や魔王に匹敵するほどの力を持っていた。戦争なんて知るものかと、三大勢力の面々を吹っ飛ばしながら二匹だけで喧嘩をし始めたんだよ。三者にとって、これほど邪魔な存在もなかっただろう。真剣にこの世界の覇権を巡る戦いをしているのに、そんなのお構い無しに戦場を乱しに乱したのだからな』

どんだけ迷惑なドラゴンだよ!

「なんでそんなに喧嘩してたんだよ?」

『さて、何が面白くなかっただろうな。そいつらもきっと、最初の喧嘩の理由なんて思い出せないだろう。それで怒り心頭の三大勢力は初めて手を取り合った。「この二匹のドラゴンを先に始末しないと戦争どころじゃない!協力して倒そう!」ってな。喧嘩の邪魔をされた二匹はそれはそれは怒った。「我らの邪魔をするな!」、「神ごときが、魔王ごときが、ドラゴンの決闘に介入するな!」って、バカ丸出しの逆ギレだ。神と魔王、堕天使の親玉に食って掛かった。ーーまあ、それがいけなかったんだろうな』

「・・・その二匹の片方ってお前だよな?」

『気にするな。結局、二匹のドラゴンは幾重にも切り刻まれ、その魂を神器(セイクリッドギア)として人間の身に封印された。神器に魂を封じられた二匹は人間を媒介にして、お互いに何度も出合い、何度も戦いをするようになってしまったんだよ。毎回、どちらかが勝ち、どちらかが死んだ。たまに出会う前に片方が死んでしまい、戦わないこともあったが、大体は戦っていた。媒介である人間が死ねば、神器であるドラゴンたちも機能を一時的に停止する。次にドラゴンの力を宿せる人間が生まれてくるまでこの世に魂を漂わせるのさ。それを長い年月の間、延々と繰り返してきた』

「それがお前、『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』と『白い龍(バニシング・ドラゴン)』か」

『ああ、そうだ。今回、俺の宿主はお前さんだった。しかも悪魔になるとはな。これは長い年月で初めてのことだってだから、楽しみにしているんだよ。今回はどうなるかがな』

おいおい、勝手に俺に宿っておいて、俺の人生を楽しむなよ。だが!この兵藤一誠には夢がある!

「よく聞け、ドライグ!この兵藤一誠には夢がある!俺は上級悪魔に昇格して、ハーレム王になりたい!女の子をたくさん眷属下僕悪魔にして、俺だけの美女軍団を作るのが夢だ!」

『ハハハ!そんな夢を持った宿主も初めてだ。大概の宿主は俺達の力に溺れ驕るか、恐れおののくか、どちらにしてもまともな人生を送ったものはいなかった』

「え?俺って異常か?変?」

『変ではあるが、異常ではないさ。どちらにしても、お前はドラゴンに憑かれた者。ドラゴンってのは、どの時代、どの国でも力の象徴だった。ほら、形は違えど、いろんな国にドラゴンの絵や彫刻があるだろう?人間は様々な時代で憧れを持ち、敬意を払い、恐れたんだよ。ドラゴンは知らず知らずのうちに周囲の者を魅了する。もしくは、ドラゴンの元に力が集まる。お前さんの元に憧れるもの、挑戦するものが現れたとしたら、それはドラゴンの力だろう』

「・・・なんだか、傍迷惑な力だな。俺、いろいろな奴に狙われるかも知れないの?」

『力に引き寄せられた強者と相対する、それが龍帝を宿す者の常だよ。だが、悲観的になることもない。女もよってくるぞ』

「マ、マジか!?」

『ああ、マジだ。俺の宿主だった人間たちは、皆異性に囲まれていた。モテモテっていうのか?異性には困っていなかったな』

「じゃ、じゃあ、女の子もとっかえひっかえ!?」

『毎晩、違う女と寝ていた奴もいた』

「う、うおおおおおお・・・。マ、マジかよ・・・。お、お前、いえ、あなたはそんなの凄い神器様だったのですね!」

『・・・急に尊敬の眼差しと敬語になったな・・・。お前さんみたいにゲンキンな宿主は初めてだ』

「そ、そんな、ドライグ先生に失礼なことなんて言える立場じゃないッスよ!ああ、先生、これからもご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします!」

『・・・わからん男だ。しかし、確かに面白いことになりそうだ。まあ、お互い「白い龍(バニシング・ドラゴン)』にやられないようにするか』

「そういや、『白い龍』って強いのか?」

『強い。元来、俺達の力は神や魔王すらも圧倒できるんだよ。ただ、神器として封印された時は呪縛をかけられてな、力を全て解放するには厳しい状態だ。それでも、力を使い慣れれば上級悪魔や堕天使の高位にいるものなど歯牙にかけない』

やっぱ龍って強いんだな!
まあ、正直神や魔王を倒したりなんて興味ないんだけどね。魔王になって女の子を沢山集めるってのは最高かもしれないけど。
そうだ。『白い龍』の宿主は誰だ?できれば女の子がいいな。俺はドラゴンの運命に囚われることなく、思う存分生きるんだ!日々、強くなってやる!

「・・・どちらにしても今の俺の目標は部長のおっぱいだ。部長のおっぱいをーー」

『揉むのか?』

「いや、吸う!」

『・・・・・・』

「部長のおっぱいの感触・・・いまだに手に残ってる。今後もチャンスがあるなら、一日中揉んでいたい!部長だって、下僕への『ご褒美』として用意してくれるかもしれない。けど、それだけじゃダメだ!男は常に目標を高く設定しなきゃいけない!おっぱい揉んで満足するスケベは二流!だから、部長のおっぱいを吸う!」

『そ、そうか、まあ、頑張れ』

「ドライグ、お前の力も貸してもらうぜ!」

『・・・女の乳を吸うためのサポートか・・・。俺も随分落ちぶれたものだ。しかし、それも一興か。こういう相方もたまにはいい』

「おう!共にやっていこうぜ、相棒!」

『ああ、そうだな、相棒』

こうして俺達は、深夜に新たな誓いを立てるのだった。

Saidout


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どうも、ちょっと遅めの登場の八雲紫です。え?ついさっき出た?気にするな。
今日もレッツ修行中だぜ。今頃一誠はドラゴンの気を散らしているところだろうな。方法は確か、上級悪魔に吸いとってもらうだった。俺は悪魔では精々中級止まりだろうから、いる必要がない。
とりあえず、幽々子が新しい自己強化を思い付いたらしい。つい最近、『死霊を操る程度の能力』を使えるようになったんだけど、どんな強化なのかな?
籃は、武術に磨きをかけていく。あ、籃に聞きたいことがあったんだった。

「籃、妖怪に聖剣ってどれくらい効果があるの?」

「そうですね。正直、私や紫さんには殆ど効果はないと思いますよ?」

「何故?」

「妖力を使う妖怪は精神的に弱いですが、聖なる力はあまり意味がないですね」

「じゃあ、どうされたら危ないのかしら?」

「言霊を込められたりすると厄介かもしれませんね」

言霊?なんだろう。住所不定無職の台詞でも言えばいいのか?精神的に弱い妖怪に言霊。つまりは言葉攻め?

「紫さんは例外ですね。人間から妖怪になったから、精神的に妖怪より強いですから」

ほえ~。その原理から言うと南無三は強かったんだ。
さて、籃によれば、俺が妖怪の時は聖剣にグレイズ(かする)しても大ダメージってことは無さそうだな。

「紫~。やりましょ~」

あら、幽々子が呼んでる。

「そうね、やりましょうか」

「いくわよ~。『悪夢「死霊ナイトメア」』

スペル宣言をしたとたん、幽々子に何か人魂が集まっていった。そして、幽々子の中に入っていく。何が起きている?そして全部、およそ二十ぐらいか。死霊が幽々子の中に収まった。

「受けきってね・・・・・・!」

そう言った次の瞬間、幽々子の姿が消えた。
いや、正確には反応できないレベルの速度で動いている。
だが、ギリギリで幽々子を察知できた俺は、四重結界を腕にはり、幽々子の手刀を受け止めようとした。

バキンッ!

しかし、硝子(ガラス)が割れるような音と共に、俺の張った結界はそれこそ硝子のように砕かれた。
ありえない。幽々子の体術は俺達三人の中では一番弱い。それなのに、あっさり四重結界を貫く?なんの冗談だよ。
いくら今の俺が人間だからって、『蝶符「鳳蝶紋(あげはもん)の死槍」』を防いだ四重結界を砕くって。ドーピングかよ。
ヤバイな。人類と人外の境界、種族を妖怪に。

「くっ・・・!」

重たい。結界を壁にしてなお、この威力。真面目に凄い。

『死符「極楽蝶の舞」』

赤黒い、なんてもんじゃない。どす黒い蝶がやってくる。しかも死の概念を組み込んでいる。俺じゃないと死ぬぞ!

『境符「全てを二つに断つ線」』

このスペルは、境界線を引き、その境界線を引かれた物体を概念で切断するスペルだが、自分と相手の間に引けば、絶対的な防壁となる攻防両立スペルだ。これで大量の蝶の大半を防ぐ。量も桁違いに増えている!

突然だが、俺は幽々子の強化に似た強化がある漫画を思い出した。自分の中に他者を特殊な方法で取り込んで、その経験と能力を一時的に習得する。

『ワンピース』のナイトメアルフィだ。

恐らくだが、影の変わりに死霊を使って強化しているのだろう。数は圧倒的に少ないが、それでこの力って。

『蝶符「鳳蝶紋(あげはもん)の死槍」』

今や幽々子の代名詞といってもいいスペル。やっぱり後ろに展開される扇子の模様が綺麗だな。

『境符「千二十四重結界」』

これぐらい張らないと、今の幽々子のスペルは防げない。だけど正直、これより強いスペルを使われると防げる気がしない。

『再迷「幻想の黄泉還り」』

足元から沸くように溢れ出る無数の霊弾。本来なら、「再迷「幻想郷の黄泉還り」』なのだが、幻想郷がないから、こうなったんだろうな。

圧倒的な物量。幽々子は元々磨耗射撃が得意だったからなぁ。無理だな。普通の俺じゃ受けきれない。
だから、リミッターを外そう。

『反則「有限と無限の境界」』

俺の妖力を無限に。と言っても、単純にこれはゲームで言えばMPが無限になるだけだ。暫くの間いくら弾幕や結界を張っても消耗しなくなくなるだけだ。考えてみてくれ。無限の力を放出したら、世界はどうなる?答えは、無限に破壊を繰り返す。限りなく、終わりのない破壊を繰り返すだけだ。タンクと蛇口に例えると、タンクの中の水は常に満杯だが、捻れる蛇口には限りがある。一度に出せる限度は決まっているのだ。

『境界「幻想的な那由多結界」』

那由多結界の上位スペル。張る枚数は同じ那由多だが、一枚一枚に境界線の役割を持たせた、過去最高の結界スペル。無数の霊弾を受け止める。流石にここまでスペルのレベルを上げれば、比較的楽に止められる。
しかし、俺は見落としていた。
霊弾を目眩ましに、力を溜めるように回転している幽々子を。

『桜符「センスオブチェリーブロッサム」』

桜吹雪が、押し寄せる。数の暴力、物量作戦、質より量。そんな言葉が思い浮かぶ。文字どおり、数えるのもバカらしい量が俺に迫る。だけど、それでも俺は受け止める。


ドオォォォォォォォォンッ!


結界を伝って衝撃が腕に響く。それでも、俺は防ぎきった。俺の結界も、元は物量だ。
幽々子は、力を出し尽くしたのか、横たわっている。幽々子の体から、どんどんと死霊が抜け出ていく。スペルが切れたみたいだ。よかった。そのまま幽々子の中に留まって体操られて二回戦突入なんてのは嫌だぞ。
すぐに幽々子を介抱する。

「んっ・・・」

ブハッ。危うく鼻から愛が溢れそうでしたよ。なにこの可愛い生き物。

「大丈夫?幽々子」

「ん、大丈夫」

「そう、ならよかったわ。あまり無理しちゃダメよ?」

「わかってるわよ~。それじゃあ、私はちょっと休んでくるわ」

「ええ。ゆっくり休んで」

俺達三人は確実に強くなっていると思う。日々、強くなれるのが実感できた。
少し浮かれていたのかもしれない。だから、聞こえなかったのかもしれない。

「・・・また・・・勝てなかった・・・・・・」

幽々子は、そう呟いた。


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紫はなんでもできる。

紫はなんでもしてくれた。

自分のせいで周りの人が死んで一人になっても、一緒にいてくれた。

私のために美味しいご飯を沢山作ってくれた。

今着ている服も紫が作ってくれた。

紫は私に無いものを一杯くれた。

でも、私は紫になにもしてあげられていない。

料理ができるわけでもない。裁縫ができるわけでもない。

私は紫にとって必要なの?

私はなにもできないのに。

側にいていいの?貰ってばっかりなのに。

ずっと一緒にいてもいいの?


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学校での一日が終わり、下校の時。偶然にも兵藤一誠にあったため、護衛ついでに一緒に帰ることにした。と言っても、少し後ろで存在感を薄くして微笑ましく見守るだけなのだが。ストーキングではない。と、信じたい。
珍しくリアスが一緒に帰っていない。まあ、なんか用事があるんだろう。
と、突然、一誠の家の近くにきた瞬間、違和感を感じた。一応俺は、霊力と妖力、それに魔力の感知はできる。
だが、一誠の家の中から漂う雰囲気は違う。今までに感じた事が・・・・・・ある?待てよ。つまりはどこかで見たのか?なにかに似ている。そうだ、堕天使の光とかに似ている。

「紫さん。あの家から、聖剣のオーラが感じられます」

籃が補足してくれた。なるほど、これが聖剣のオーラか。覚えた。
って!聖剣かい!おいおい、対悪魔の最終兵器があるのかい!たしか原作では、一誠の家にエクスカリバーがくるんだっけ?イリナがいるのかねえ。人類と人外の境界、種族を悪魔に。

少し身震いしている一誠に声をかける。

「一誠、落ち着きなさい」

「「紫さん!?」」

悪魔になってよくわかった。確かに、根底から嫌悪を感じる。

「私もお邪魔するわよ」

「は、はい!とにかく、俺は先に行きます!」

あわてて家に上がっていく一誠。しかし、中からは笑い声が聞こえる。まあ、知ってたんだけど。

「でね、これがイッセーの小学生時代の写真なの。ほらほら、こっちなんて、プールで海パンが破れた時のものよ。もう、大変だったわ。破れたままプールの滑り台にいっていしまって」

「・・・か、母さん?」

「あら、イッセーお帰りなさい。どうしたの?血相変えて」

「はぅぅぅ。よかったですぅ」

一応、一誠の母親は無事だった。よかったよ。イレギュラーがあってもおかしくないし。

そこにいたのは、一応、初対面の女性が二人。十字架を胸に下げている。クリスチャンですか?
栗色の髪の女性と、緑色のメッシュを入れた目付きの悪い女性。イリナとゼノヴィアだ。
布に巻かれたあれが恐らく聖剣だな。

「こんにちは、兵藤一誠君」

一誠に微笑むイリナ。まあ、一誠は覚えてないんだがな。

「初めまして」

無理矢理感がある笑顔。

「あれ?覚えてない?私だよ?」

わかっていない一誠に写真の男の子?を指差す母。

「この子よ。紫藤イリナちゃん。このときは男の子っぽかったけど、今じゃ立派な女の子になってきて、お母さんもビックリしたのよ」

「お久しぶり、イッセー君。男の子と間違えてた?仕方ないよね、あの頃、私ったら男の子顔負けにヤンチャだったから。でも、お互い、暫く会わない間に色々とあったみたいだね。本当、再会って何が起こるかわからないものだわ」

俺ほとんど空気だったよ。


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結局、三十分ほど談笑して終わった。俺達は、再度帰路についた。そして、帰宅し、それぞれ各々がやりたいことをやる。俺は食事を作るんだがな。最近、幽々子の座右の銘が『質より量』になってきた気がする。

「紫」

ん?幽々子が呼んでる。なんだろう。

「なにかしら?」

「私は、紫の役に立ってるの?」

・・・・・・は?なにいってんだか。居てくれるだけでいいのにさ。好きでやってるんだよ。

「なんでそんなこと聞くの?」

「・・・紫になにもしてあげられてないから」

う~ん。別になにかしてもらおうなんて考えてないんだけどな。我が家の癒しだもん。

「別になにかしてもらおうなんて思ってないわ。どうしたの?急に」

「だって・・・紫に一つも勝てないのよ?私ができることは全部紫ができるのに、私にいる意味はあるのかが、不安で・・・・・・」

いやいやいやいや、俺って胡散臭いんだぜ?信用得るにも一苦労なんだからさ。みんなの癒しになることもできないし、戦闘においては磨耗射撃じゃ全く敵わない。物量凄いもん。
でも、幽々子は違うのか。なにか、自分の存在意義が欲しいのだ、今の幽々子は。
・・・・・・単純明快、俺の唯一無二の親友だ。

「あら、幽々子は私の唯一無二の親友でしょう?他になにか必要かしら?」

実は、俺、いまだに親しい友達が幽々子以外にいない。霊夢は餌付けみたいなものだし、籃は家族(ペット)だ。だから、幽々子以外にいない。それに、俺は歪で曖昧な存在だ。それでも、幽々子は俺を認知している。俺の側にいてくれる。なあ、知ってるか?

「私は、幽々子がいない世界を認めないわ」

俺って結構寂しがりやなんだぜ?

泣き出す幽々子を、俺はそっと撫で続けた。


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後日、オカルト研究部。部員全員が部室に揃う。その他にも、昨日の二人、イリナとゼノヴィアがいる。
・・・・・・なんか、この感覚嫌だな。人類と人外の境界、種族、妖怪。
お、悪寒がしなくなったぜ。籃の推測は大体当たっていたらしい。さすが天狐だぜ。

にしても、空気が悪い。木場が怨恨丸出しで二人を睨んでるんだもん。今にも攻撃しそうな雰囲気だ。
こんな空気の中、話を切り出したのはイリナだった。

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」

うん。知ってる。
おや、一誠が弱冠混乱している。

「ご免なさいね。私の下僕に悪魔に成り立ての子がいるから、エクスカリバーの説明込みで話を進めてもいいかしら?」

「わかったわ。イッセー君、エクスカリバーは大昔の戦争で折れたの」

「え?折れたの?」

「そうだ。今はこのような姿さ」

そう言って布に巻かれた剣を取り出す。ぶっちゃけ、緋想(ひそう)(つるぎ)の方が強いだろ。相手の弱点をつく剣だぜ?正確には、相手の気質を霧にして、それを読み取って弱点を纏うのが緋想の剣だけど。やっべえ、欲しい。

「これが、エクスカリバーだ。大昔の戦争で四散したエクスカリバー。折れた刃の破片を拾い集め、錬金術によって新たな姿となったのさ。そのとき、七本作られた。これが、その一つ、『破壊の聖剣《エクスカリバー・デストラクション》』。七つに別れた聖剣の1つだよ。カトリックが管理している』

そう言ってゼノヴィアは再び布を巻く。結構頑丈な封印だな。
イリナが懐から長い紐のようなものを取り出す。そして、段々と形を変えていく。その形は、日本刀の形になった。

「私の方は『擬態の聖剣《エクスカリバー・ミミック》』。こんな風に形を自由自在にできるから、持ち運びにすっごく便利なんだから。このようにエクスカリバーはそれぞれ特殊な力を有しているの。こちらはプロテスタント側が管理しているわ」

「イリナ・・・悪魔にわざわざエクスカリバーの能力を喋る必要もないだろう?」

「あら、ゼノヴィア。いくら悪魔だからといっても信頼関係を築かなければ、この場ではしょうがないでしょう?それに私の剣は能力を知られたからといって、この悪魔の皆さんに後れを取るなんてことはないわ」

うん。確かに、ここにいる悪魔に後れを取ることはないかもしれない。悪魔ならな。

って、木場が普段と比べてとんでもないプレッシャーを出している。いざとなったら縛るか。スキマで縛れば動けないだろ。多分。

「・・・それで、奪われたエクスカリバーがどうしてこんな極東の国にある地方都市に関係あるのかしら?」

「カトリック教会の本部に残っているのは私のを含めて二本だった。プロテスタントのもとにも二本。正教会にも二本。残る一本は神、悪魔、堕天使の三つ巴戦争の折に行方不明。その内、各陣内にあるエクスカリバーが一本ずつ奪われた。奪った連中は日本に逃れ、この地に持ち運んだって話なのさ」

「はぁ、私の縄張りは出来事が豊富ね。それで、エクスカリバーを奪ったのは?」

「奪ったのは『神の子を見張る者《グリゴリ》』だよ」

「堕天使の組織に聖剣を奪われたの?失態どころではないわね。でも、確かに奪うとしたら堕天使ぐらいなものかしら。上の悪魔にとって聖剣は興味が薄いものだから」

「奪った主な連中は把握している。グリゴリの幹部、コカビエルだ」

「コカビエル・・・。古の戦いから生き残る堕天使の幹部・・・。聖書にも記された者の名前が出されるとはね」

「先日からこの町に神父(エクソシスト)を秘密裏に潜り込ませていたんだが、ことごとく始末されている。私達の依頼ーーいや、注文とは私達と堕天使のエクスカリバー争奪の戦いにこの町に巣くう悪魔が一切介入してこないこと。ーーつまり、そちらに今回の事件に関わるなといいに来た」

「随分な言い方ね。それは牽制かしら?もしかして、私達がその堕天使と関わりを持つかもしれないと思っているの?ーー手を組んで聖剣をどうにかすると」

「本部は可能性がないわけではないと思っているのでね」

あーあー。リアスがキレてるよ。まあ、可能性を疑えばキリがないからなぁ。俺の家族に関わるのなら、問答無用で捻り潰すけどな。手を出すなと言うのなら、こっちに被害を出すなよ。

「上は悪魔と堕天使を信用していない。聖剣を神側から取り払うことができれば、悪魔も万々歳だろう?堕天使どもと同様に利益がある。それゆえ、手を組んでもおかしくない。だから、先に牽制球を放つ。ーー堕天使コカビエルと手を組めば、我々はあなたたちを完全に消滅させる。たとえ、そちらが魔王の妹でもだよ。ーーと、私達の上司より」

「・・・私が魔王の妹だと知っているということは、あなたたちも相当上に通じている者たちのようね。ならば、言わせてもらうわ。私は堕天使などと手を組まない。絶対によ。グレモリーの名にかけて。魔王の顔に泥を塗るような真似はしない!」

「フッ。それが聞けただけでもいいさ。一応、この町にコカビエルがエクスカリバーを三本持って潜んでいることをそちらに伝えておかねば何か起こった時に、私が、教会本部が様々な者に恨まれる。まあ、協力は仰がない。そちらも神側と一時的にでも手を組んだら、三竦みの様子に影響を与えるだろう。特に魔王の妹ならば尚更だよ」

「1つ聞くわ。正教会からの派遣は?」

「奴等は今回のこの話を保留にした。仮に私とイリナが奪還にした場合を想定して、最後に残った一本を死守するつもりなのだろうさ」

「では、二人で?二人だけで堕天使の幹部からエクスカリバーを奪還するの?無謀ね。死ぬつもり?」

「そうよ」

迷いのない言葉。覚悟。

「私もイリナと同意見だが、出来るだけ死にたくはないな」

「ーーっ。死ぬ覚悟でこの日本に来たと言うの?相変わらず、あなたたちの信仰は常軌を逸しているわね」

「我々の信仰をバカにしないで頂戴、リアス・グレモリー。ね、ゼノヴィア」

「まあね。それに教会は堕天使に利用されるぐらいなら、エクスカリバー全て消滅しても構わないと決定した。私達の役目は最低でもエクスカリバーを堕天使の手から無くすことだ。そのためなら、私達は死んでもいいさ。エクスカリバーに対抗できるのはエクスカリバーだけだよ」

まあ、大切な物のために死んでもいいってのは理解できないでもない。俺も幽々子や籃のためなら身を削ってでも動くだろう。だけど、俺は死なない。二人のために。

「二人だけでそれは可能かしら?」

「ああ、無論、タダで死ぬつもりはないよ」

「自信満々ね。秘密兵器でもあるのかしら?」

「さてね。それは想像にお任せする。さて、それでは、そろそろおいとまさせてもらおうかな。イリナ、帰るぞ」

「そう、お茶は飲んでいかないの?お菓子ぐらい振る舞わせてもらうわ」

「いらない」

「ご免なさいね。それでは」

まあ、毒でも入っているんじゃないかと、俺だったら疑う。
その場を後にしようとする。ーーが、二人の視線がアーシアに集まった。

「ーー兵藤一誠の家で出会った時、もしやと思ったが、『魔女』アーシア・アルジェントか?まさか、この地で会おうとは」

魔女、それはアーシアにとって辛い言葉だ。

「あなたが一時期内部で噂になっていた『魔女』になったもと『聖女』さん?悪魔や堕天使をも癒す能力を持っていたらしいわね?追放され、どこかに流れたと聞いていたけれど、悪魔になっているとは思わなかったわ」

「・・・あ、あの・・・私は・・・」

「大丈夫よ。ここで見たことは上には伝えないから安心して。『聖女』アーシアの周囲にいた方々に今のあなたの状況を話したら、ショックを受けるでしょうからね」

複雑な表情を浮かべるアーシア。

「しかし、悪魔か。『聖女』と呼ばれていた者。堕ちるところまで堕ちるものだな。まだ我らの神を信じているのか?」

「ゼノヴィア。悪魔になった彼女が主を信仰しているはずはないでしょう?」

「いや、その子から信仰の匂いーー香りがする。抽象的な言い方かもしれないが、私はそういうのに敏感でね。背信行為をする輩でも罪の意識を感じながら、信仰心を忘れない者がいる。それと同じものがその子から伝わってくるんだよ」

「そうなの?アーシアさんは悪魔になったその身でも主を信じているのかしら?」

「・・・捨てきれないだけです。ずっと、信じてきたのですから・・・」

それを聞いたゼノヴィアは、布に巻かれた聖剣を突きだす。

「そうか。それならば、今すぐ私達に斬られるといい。今なら神の名の下に断罪しよう。罪深くとも、我らの神ならば救いの手を差し伸べてくださるはずだ」

その救いの手は、既にないんだよ。あったらこんな風に悪魔になることもなかったんだよ。
俺は一誠と共にアーシアを庇うように前に立つ。

「触れるな。アーシアに近づいたら、俺が許さない。あんた、アーシアを『魔女』だと言ったな?」

「そうだよ。少なくとも今の彼女は『魔女』と呼ばれるだけの存在ではあると思うが?」

「ふざけるなっ!救いを求めていた彼女を誰一人助けなかったんだろう!?アーシアの優しさを理解できない連中なんか、皆ただの馬鹿野郎だ!友達になってくれる奴もいないなんて、そんなの間違っている!」

「『聖女』に友人が必要だと思うか?大切なのは分け隔てない慈悲と慈愛だ。他者に友情と愛情を求めたとき、『聖女』は終わる。彼女は神からの愛だけがあれば生きていけたはずなんだ。最初からアーシア・アルジェントに『聖女』の資格はなかったのだろう」

「勝手にアーシアを『聖女』にして、少しでも求めていた者と違ったから、見限るのかしら?随分と身勝手なことね」

「そうだ!アーシアの苦しみを誰もわからなかった癖によ!何が神だ!その神様はアーシアが窮地だったときに何もしてくれなかったじゃねえか!」

「神は愛してくれていた。何も起こらなかったとすれば、彼女の信仰が足りなかったか、もしくは偽りだっただけだよ」

久し振りだな。ここまで腸煮えくり返ったのは。わかっていても、腹が立つ。

「君たちはアーシアの何だ?」

「家族だ。友達だ。仲間だ。だから、アーシアを助ける。アーシアを守る!お前たちがアーシアに手をだすなら、俺はお前ら全員敵に回してでも戦うぜ」

「そうね。私達家族も相手するわよ」

酷く、怒気を含んだ声になりかけた。知り合いに対しては甘いな、俺。

「それは私達ーー我ら教会全てへの挑戦か?一介の悪魔に過ぎない者たちが、大きな口を叩くね。グレモリー、教育不足では?」

「イッセー、紫、お止めーー」

「ちょうどいい。僕が相手になろう」

「誰だ、君は?」

「君達の先輩だよ。ーー失敗だったそうだけどね」

無数の魔剣が、部室を埋め尽くした。







「紫さん。一緒にアーシアを守ってくれてありがとうございます」

「気にしないで。私も、思うところがあったのよ」

アーシアも見方によっては能力に振り回された者の一人だもんな。


幽々子と同じように。




 
 

 
後書き
やっと更新できました。少し直しました。 
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