ドラゴンボールIF
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
若き戦士は己の信じる道を歩む そして彼は初めて父親の温もりを感じる
ドラゴンボールIF
飛空艇で移動していた私はベジータと
別れてからもずっとその光景を見ていた
ブルマ「馬鹿・・プーアルもヤムチャも
馬鹿よ とびっきりの大馬鹿よ あんた達が
居なかったら誰も笑顔になんてなれない
じゃない」
溢れ出る涙が止まらなかった 嘗て私が
心の底から愛した人 生涯を共にしたいと
一生傍に居たいとそう思った人
別れた今でもお互いに心に蟠り等存在しない
大切な友人
ブルマ「ヤムチャ大好きだったよ・・
愛してたよ・・ちゃんと聞こえてたよ
二人の声が・・テレビなんか見てなくても
私達にはちゃんと届いてたよ」
だからこそ彼には幸せになって欲しかった
嬉しかったのだ 彼が 家族と再会出来て
あの幸せな光景を見る事が出来て本当に
嬉しかったのだ
幼い頃生き残った家族と離れ離れになり
その果てに記憶を失い砂漠の盗賊となり
陰日向の生活を送って来たそんな彼が
やっと掴んだ幸せだったのだ
これからはずっとずっと幸せが待っている
筈だった けど漸く掴んだ彼の幸せは
一瞬の泡となって消えてしまった
その幸せを奪ったのが他ならぬ孫君だなんて
ブルマ「こんなの残酷すぎるわよ・・
ねぇヤムチャ残された皆はどうなるのよ
ホープ君は? スピアちゃんは? あんたの
家族はどうすれば良いのよ!!・・・
ねぇお願いだから返事をしてよ!!
私達を置いていかないでよヤムチャぁああ!!」
けれどそ んな私の叫びにヤムチャやプーアルが
答えてくれる事はない
そして孫君の恐慌の犠牲になったのは
ヤムチャとプーアルだけじゃない
ブルマ「亀のおじいちゃん・・ヤムチャと
プーアルが守ろうとしたヤムチャの家族を
守ってくれてありがとう」
画面の中では双子のホープ君とスピアちゃん
そしてレッドおじいちゃんを守ろうとして
孫君と戦った亀のおじいちゃんが 全身から
夥しい血を流して倒れていた
幸い意識はあるようだが 直ぐに治療
しなければ危険な状態なのは誰の目にも
明らかだろう
だがそれでも亀のおじいちゃんはちゃんと
生きていた
あの子が守ってくれたからだ ベジータと
私の愛の結晶の逞しく成長した姿
在り得たかもしれない未来からやってきた
愛しい息子
状況等何も分から無いだろうに 道を
間違えずにその瞳はしっかりと在るべき場所を
見据えていた
ブルマ「ありがとうトランクス・・守って
くれてありがとう 復讐心に負けないで
いてくれてありがとう」
そして私は亀のおじいちゃんが口にした
言葉を思い出していた
弟が天津飯に助言した 儂が認めた兄から
託された武天の名前
無泰斗様の弟子だった亀のおじいちゃん
そして無泰斗様のもう一人の弟子
ブルマ「鶴仙人と桃白白・・そっか・・
そうだったんだ あの二人は亀のおじい
ちゃんの兄弟だったのね・・ふふ なぁんだ
悪ぶっていても結局は家族の事を大切に
思ってい たんじゃない」
ならあの二人もきっとテレビを見ているに
違いない
ブルマ「亀のおじいちゃん 絶対に死んじゃ
駄目よ 生きて家族の所に帰るのよ」
画面の中ではトランクスが怒り哀しみ困惑
絶望等全ての感情を露わにして孫君に
向かって涙を流して絶叫していた
「どうしてだぁあああ!! 悟空
さぁああん!! 何故こんな事になって
しまったんですかぁああ!! ははっ
決まってるだろうトランクス 楽しいからさ
あんたって人はっ!! 俺にしてみれば
お前の行動が理解出来んぜ お前にとって
人造人間は敵だろうが 俺と一緒にそいつ等を
殺そうぜ あぁ・・確かに俺は人造人間が
憎いさ・・今直ぐに殺してやりたいさ
話がわかるじゃねぇか」
ブルマ「・・・・・・」
私は固唾を飲んで二人のやり取りを聞いていた
言葉の通りならトランクスは孫君の仲間に
なるつもりなのだろう
でも何故か私の心は落ち着いていた
トランクスは絶対にそんな事はしない
ブルマ「だって貴方の目はそんなにも
優しいもの 傷付いた彼等をそんなにも
優しい瞳で見ているんだもの」
「けど俺は貴方の味方にはならない
俺はこの人達を守る為に戦う!!
君は・・見ず知らずの儂等の為に
気にしないで下さい 俺は只やりたい事を
しているだけですから ありがとう
トランクス君 そうか・・だったら
てめぇも敵だ その爺と同じ場所に送って
やる よ!! やってみろ 俺の身体に流れる
父さんと母さんの血はそう簡単に枯れ
果てはしないぞ!!」
そして今度はトランクスと孫君の戦いが
始まった
ブルマ「ねぇベジ―タ 私達の息子が
戦ってるよ どうかあの子を守ってあげて」
・・・・・・・・
・・・・・・・・
トランクス「行くぞ悟空さん!!」
孫悟空「はっ その足手纏い共が居る限り
無駄だよ その場を動いたら後ろの奴等が
死ぬぜ」
レッド「駄目じゃトランクス君!!
その外道の言う事を聞いてはいかん!!」
トランクス「やはりそう来るか・・・
貴方は本当に変わってしまったんですね
それともそれが俺も母さんも知らなかった
貴方の本性だったと言 う事か」
俺は直ぐに治療が必要な重体の武天老師様の
事を考えて 短期決戦に持ち込むべく
気を解放し悟空さんに飛びかかろうとした
しかし悟空さんは俺の予想外の行動に
否 俺の予想通りの行動に出た
幾十もの気弾を作り出し 俺の周囲に
配置させる
きっと俺が動けば 後ろの老人も人造人間も
重体の武天老師様も瞬く間に殺されて
しまうだろう
トランクス「武天老師様もこれにやられ
たのか」
孫悟空「そうさ 死なせたくなかったら
動くなよ 気で身体を覆うのも許さないぜ
少しでも妙な真似をし 「ごちゃごちゃ
言ってないでさっさと撃ち込んで来たらどうだ
それとも達者なのは口だけか?」 っの
野郎!! なら望み通りに してやるよ!!
何処まで耐えられるか見せてもらうぜ!!」
トランクス「耐えてやるさ この人達は
絶対に死なせない」
レッド「駄目じゃ 逃げるんじゃぁああ!!」
・・・・・・・・
・・・・・・・・
ブルマ「・・・・・・」
私は先程迄の興奮が嘘のように テレビ
から流れる息子の誇り高き姿に魅入っていた
孫君の数限りない拳がトランクスに
終わる事のない攻撃を加えてゆく
「そりゃあああ!! ぐうっ
ヒャアッハアアアア!! おらぁああ!!
がはあっ どうした おねんねには
まだ早いぜ!! ハァアアア!!
くふっ どうしたちっとも効いていないぞ
何だと? へっ痩せ我慢しやがって
這いつくばって許しを乞えば楽にしてやるぜ
今のあん たを見たら悟飯さんは何て
言うだろうな 何だと? 悟飯さんは
何時も言っていた 自分には二人の父親が
居ると その二人に何時か胸を張って
会う為にも絶対に裏切ったりしないと
自分自身の心を裏切ったりしないとそう
言っていた それが何だってんだ?
あんたは本当にわからないのか!?
人には死ぬ事よりも痛い事があるんだよ
自分の心に嘘を吐いてまで助かっても
意味は無いんだよ!! そんな事をしたら
俺は二度と父さんと母さんに顔向け出来
ないんだよ!! 俺の中に流れる父さんの
血が この人達は敵じゃないって叫んで
るんだよ!! トランクス君 俺は
何時か父さんに会えた時胸を張って会える
自分で在りたい だから絶対にあんたに
命乞いなんかしない!! それが俺だ
サイヤ人の王子ベジ―タとブルマの息子が
俺なんだ!! だから絶対にこの人達を
傷付けさせはしない!! トランクス君
君はまさか だったら望み通りに殺して
やるよ!! ・・・そこまでたカカロット
・・貴様は何処までサイヤ人の誇りに泥を
塗る気だ 何!? このサイヤ人の
面汚しがぁあああ!! 〔ボキャアアア!!〕
グハァアア!!」
・・その声を聞いた時 私は溢れ
出る涙を止められなかった・・
ブルマ「来てくれたよトランクス 貴方の
父親が来てくれたよ」
・・そこには私の夫であり 誰よりも
誇り高き父親が居た・・
ベジ―タはそれだけで人を殺せそうな
凄まじい眼光で孫君を 睨み付けながら
トランクスの前に歩み寄ると 視線は
そのままに孫君と話す一方で 後ろの
トランクスに優しさに溢れた声をかけていた
「カカロット貴様はサイヤ人の
誇りだけでなく 人としても漢としても
道を外れてしまったようだな 痛ってぇ
じゃねぇかベジ―タ へへっ随分と遅い
到着だなぁベジ―タよ カカロット
よくも俺の息子を傷付けてくれた 貴様は
サイヤ人の誇りに賭けて俺が殺してやる
父さん!?・・知ってたんですか俺の事
当然だろう 息子の成長した姿だ
直ぐにわかったさ・・・良く頑張ったな
トランクス お前は俺達の自慢の息子だ
後は任せておけ 父さんっ ありがとうっ
ありがとう父さん!! トランク ス君
・・君はやはり」
ベジ―タは照れ臭いのか横目ながらも
とても穏やかな表情でトランクスを見ていた
きっとベジータも嬉しかったのだろう
自分の息子が道を間違えなかった事が
何も分からなくても 目の前の現実から
目を離さずに しっかりと真実を見据えて
いてくれた事が本当に嬉しかったのだろう
その一方で初めて感じる父親の感触に
優しさに 逞しさに そしてその言葉に
トランクスは涙を流し喜んでいた
ブルマ「良かったねトランクス 貴方に
とっては物心付いてからは初めて会う
父親だもんね」
そうしている間にも画面の中では状況が
刻一刻と変わり ベジ―タに一歩遅れて
ピッコロとドクターゲロも駆けつけ てきた
二人も目の前の惨劇を目にして絶叫していた
「うおおおああああああああああ!!
ヤムチャァアアア!! プァアアアル!!
畜生ぉおおお!! サムッ サムゥウウ!!
何て事だ!? 武天老師までかっ
孫貴様ぁあああ!! よう お出ましか
丁度良い所に来たな これから最高に
楽しいパーティーが始まるんだからな
パーティーだって!? 今度は何を
するつもりだカカロット!!」
今にも孫君に襲いかかりそうなベジ―タと
トランクスとは違いドクターゲロは涙を
流して声を張り上げてヤムチャにすがり
付いていた
もう目を覚まさないとわかっていても
何度も何度も声をかけていた
「サム眼を開けておくれ っ サム!?
サム!! ううっう すまんゲロ儂は
何も出来んかった そればかりか武天老師殿も
トランクス君も危険に晒してしまった
レッド!? 良かったお前は無事
だったのか!!」
ピッコロは恐らくは責任を感じている
のだろう 小さい謝罪の言葉を呻き声に
しながら只只悲しく項垂れていた
「すまん・・すまん・・・・畜生
・・・・畜生 そんなに悲しむなよ
ピッコロ ヤムチャもプーアルもあの世で
喜んでくれるさ・・・特にヤムチャはな」
私はその言葉に 例えようもない嫌な
予感を覚えた
ブルマ「寂しくなくなる? ヤムチャが
喜ぶ?・・どう言う事かしら?」
けどその疑問の答えを私は直ぐに知る
事にな る
・・自分自身の身を持って・・
私が訝しんでいると画面の中の孫君が
奇妙な行動を取り始めた
「背中を見せるだと!? 何をする
つもりだ カカロット!! へへっへ
そんな意味のない場所に気弾を放って
何の意味があるんだ さぁどんな意味が
あるのかなぁ・・なぁベジ―タはわから
ないか? 何!?・・・はっ!?」
孫君は作り出した気弾をベジ―タ達に
放つ事なく 突然後ろに向き直ったのだ
孫君の向き直った方角に私は覚えがあった
ブルマ「あれ?・・あっちは確かベジータの
来た方角よね?・・そんな方角に何の意味が」
画面の中の孫君の邪悪な笑みは最高潮に
達していた
そしてその表情が更なる狂 笑に変わると
その手に作り出した気弾を何処かに向けて
思いっきり投げつけた
「感謝しろよヤムチャ 今お前の
好きな女を届けてやるぜ!! おらぁああ!!
やはりあの方角はブルマの!?
よせカカロットォオオオ!! そんな!?
あの方向に母さんが!?」
ブルマ「え?・・・私?」
言葉の意味が理解出来ずに一瞬呆けていた
私だったけど 投げ付けた気弾が画面から
消えると 次の瞬間気弾は私の視界に
飛び込んで来た
ブルマ「・・・・え?・・・あれ?」
ドッガッアアア!!
次の瞬間 気弾は私の乗った飛空艇を
破壊していた
事ここに至って私は漸く理解した
ブルマ「・・(あぁ・・そっか・・ベジータが
来た方角って私が 居る場所じゃない)・・」
この高さじゃ絶対に助からないわよねぇ
参ったなぁ ベジータとトランクスは
泣くでしょうね皆も悲しませちゃうかな
「ブルマァアアア!! 母さぁああん!!」
ブルマ「・・(ベジータ・・自分のやるべき
事を見失っちゃ駄目よ・・トランクス
悲しませちゃうね・・ごめんね)・・・」
飛空挺の動力部が破壊され 爆発の凄まじい
衝撃を受けた私の身体が 勢いよく飛空艇の
外に投げ出されて行く
ブルマ「・・(ん?・・あれは)・・」
薄れゆく意識の中で 私は視界の隅に
何かを見た気がした
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
一方その頃西の都のブルマの実家がある
カプセルコーポレーションでもある騒ぎが
起こっていた
ブリーフ「なんじゃと小型飛空挺が盗まれた?」
ブリーフ婦人「そうなのよ朝は確かにあったんだけれど」
ブリーフ「盗まれた大体の時間はわかるかい?」
ブリーフ婦人「えぇと・・多分・・・ヤムチャ君と
プーアルちゃんが死んでからじゃないかしら」
ブリーフ「あの二人が死んだ直後!?・・
ヤムチャ君・・プーアル君・・2人に共通する事
或いはどちらかに共通する事・・っ!?」
ブリーフ婦人の言葉に何事かを考えていた
ブリーフ博士であったが軈て何かを思い出したのか
次の瞬間顔面蒼白になり家の中に駆け込んだ
ブリーフ「まさか・・まさか・・まさか!?」
ドタドタドタドタ!!
ブリーフ婦人「突然どうしたのあなた!!
何かわかったの!?」
ブリーフ「彼じゃ彼しかいない!!」
ブリーフ婦人「彼って・・・・っ!?・・
まさかあの子が!!」
ブリーフ博士の言葉に漸く彼女も気がついたのだろう
2人は最早話さす手間も惜しいとばかりに無駄と
わかっていながらも辺り一帯を探し出す
ブリーフ「何処じゃあああ!! 何処に
行ったぁあああ!!」
ブリーフ婦人「良い子だから出てきてちょうだい
お願いよぉおおお!!」
・・しかし2人の言葉に返事が返ってくる事は
なかった・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
ベジータ「カカロット貴様ぁあああ!!」
トランクス「悟空さんっ 貴方は戦士
でもない何の力もない只の女の母さんまで
殺したんですか!? 何故だ 何故貴方は
こんな事をするんだ悟空さん!!」
孫悟空「ごちゃごちゃ喧しいんだよ
てめぇ等地球人には最初から命の価値なんざ
ねぇだろうが けどまぁ ひょっとしたら
まだ生きてるんじゃないか 最も例え
生きてても直ぐに治療しなけりゃどうなるか
わからんがな フハハハハハハ!!」
人の命を何とも思わない様な悟空さんの
言葉に 俺は怒りを感じながらも母さんを
助ける為に飛び出そうとする
トランクス「あんたって人はぁあああ!!
くそっ 母さん今直ぐに助けに行きます!!」
ベジータ「・・・・落ち着けトランクス
先ずはこいつを片付けるのが先だ」
トランクス「そんな!?」
孫悟空「・・ほぅ」
だが それを止めようとする父さんの
信じられない言葉に俺は驚き 悟空さんは
面白そうな表情をする
トランクス「何故ですか父さん!?
どうしてそんなに平気なんですか父さんっ
今こうしている間にも母さんが死ぬかも
しれな・・・・父さん」
孫悟空「どうしたんだトランクス 行くのか
行かないのか?」
俺は込み上げる怒りを抑えられずに
思わず我を忘れ父さんに詰め寄ろうとした
だが父さんのその表情を見てその思いは
消し飛んでいた
父さんは歯を食い縛り 青くなる程に
拳を握り締め 溢れ出そうになる激情に
必死に 耐えていた そして悟空さんを
睨み付けながら口を開く
ベジータ「ふんっ もし仮に俺が此処で
あいつを選んだらブルマは一生俺を許しては
くれないさ・・あいつはきっとこう言う
だろうさ・・自分のやるべき事を見失うな
ってな・・・そう言う女さ 俺が愛した
ブルマって女はな」
トランクス「その言葉!?・・その言葉は
何時も母さんが言っていた言葉だ」
俺は刹那の瞬間 自分の世界での事を
思い出していた 俺にとって師匠であり
そして兄でもあった悟飯さんが人造人間に
殺されて以来 俺はずっと一人で戦い
続けてきた
思うように行かず悩む事も沢山あった
でも悩み事があっても 一人ぼっちの
俺には相談する友人など誰も居なかった
どうすればいいか悩んでいると何時も
母さんが言っていた言葉
・・(「良い事 良く聞きなさい
トランクス 貴方はこれからきっと沢山の
大きな壁にぶち当たるわ でもどんな事が
あっても自分のやるべき事を見失っちゃ
駄目よ 迷った時は頭で考えちゃ駄目
そんな時は自分の心に問い掛けてご覧なさい
大丈夫貴方ならきっと答えが見つかるわ
だって貴方には私が愛したあの人の血が
流れているんですもの きっとあの人が
貴方を導いてくれるわ 強くて優しくて
絶対に自分を見失わない誇り高いサイヤ人の
王子の人の血が貴方には流れているん
ですもの」)・・
何時も母さんは俺にそう言ってくれていた
けどその言葉を聞いて も生まれてから一度も
父さんの温もりを知らない俺にはその答えが
分からなかった
けど今なら母さんの言っていた言葉の
意味が良く分かる
今の俺には自分の進むべき道がはっきりと
分かる この人がそうなんだ 自分の
目の前に居るこの人が俺がずっと会いたくて
ずっと探し求めていた俺の父さんなんだ
成らば自分のするべき事はもう決まっている
目の前に居る父さんに無様な姿を曝す事は
出来ない 俺は今一度父さんの横に並び
悟空さんを見据えながら横に居る父さんに
話し掛ける
トランクス「父さん貴方はやっぱり俺が
ずっと思い描いていた通りの人だ・・・
会えて良かった・・貴方の息子になれて
良かった」
ベジータ「 ふん・・餓鬼のくせに言って
くれるじゃないか だったら俺もその期待に
応えなきゃならんな・・・それに見物人は
他にも居るようだからな」
トランクス「え・・・・はっ!? この
気配はまさか!?」
俺の万感の想いを込めたその言葉に
父さんはぶっきらぼうな言葉を投げ掛け
ながらも 何処か気恥ずかしそうにすると
視線を何処かへと向けながら話を続けた
その言葉に何だろうと訝しんだ俺だが
直ぐにその意味がわかった そして俺の
表情も軈て喜びに変わった
トランクス「この気配は間違いないっ
母さんだ!! 母さんは生きていたんだ!!」
ベジータ「ああ どうやらブルマは無事
だったようだな」
孫悟空「ちぃっ あの女生きてやがったのか
・・しぶてぇな」
母さんが生きていてくれた事に喜びに
打ち震える俺と父さんと若干苛正しげな
表情で舌打ちする悟空さん
そんな俺達の視線の先では母さんの気配が
段々と大きくなってくる そして母さんの
姿が見えた時の反応は様々だった
ブルマ「皆ぁああ 私は無事よぉおおお!!」
トランクス「母さん!? 良かった無事で
・・でも母さんを抱き締めて飛んでいる
あの人は?」
ベジータ「あれはミスターポポか・・・
そうかポポがブルマを助けてくれたんだな」
トランクス「ミスターポポ?・・そうか
あの人が」
孫悟空「はんっ また増えやがったか
次から次へと御苦労な事だ」
ピッコロ「何?・・・ポポだと?・・・
馬鹿な何故ポポが地上に」
ミスターポポさんに抱かれている母さんは
間違いなく生きていた
恐らくは爆発の衝撃と バラバラに吹き
飛ばされた飛空艇の破片が酷く母さんを
打ちつけたようで 失明はしていない
ようだが 瞼が真っ赤に腫れ上がり
頬や額は打ち付けた際の痣で血が滲み
肌が青く変色していた 身体も衣服は
所々が破け流れ出た血が染み込み 元は
華やかで綺麗だったと思われる服は血で
真っ赤になっていた
だがそれでも母さんはしっかりと意識を持ち
生きていた そしてそれ程の怪我を負っても
溢れ出る母さんの生気を奪う事にはなら
なかった
そしてそんな母さんを醜いと言 う人間は
この場に誰一人として居はしない
ミスターポポさんに抱きとめられ地上に
降りた母さんに 父さんと喜びを隠し
きれない俺が声を掛ける
ベジータ「ふんっ 随分と元気そうじゃ
ないかブルマ そんなに元気なら心配する
必要もなかったな」
トランクス「母さん・・よかった無事で」
母さんはミスターポポさんの肩を借りながら
話し出す
どうやら歩けない程に片足を痛めてしまった
ようだ
しかし母さんはそんな事何でもない事の
ように振る舞っていた
ブルマ「そんなの当たり前でしょう
私を誰だと思ってんのよ あんたの妻が
これ位の怪我でへこたれる訳無いでしょ
それよりもあんたこそ戦場をほっぽり 出して
私の所に来たら許さなかったわよ・・
トランクスもありがとう心配してくれて
本当に危ない所をミスターポポが助けて
くれたの」
ベジータ「はんっ 俺を誰だと思っている
お前の夫だぞ 俺は自分のやるべき事を
見失ったりはせん」
ブルマ「ふふ それでこそベジータだわ」
トランクス「はは・・・よかった本当に」
母さんの軽口に釣られるように 同じ
く軽口で返した父さんの言葉に母さんも俺も
状況を忘れ一時笑顔になる
だからこの時俺達は気が付く事が出来
なかったんだ
・・ミスターポポさんがこの場に来た
本当の意味を・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
ベジ―タ達が喜ぶ一方で 先程からずっと
嫌な予感が止まらない者が居た
ピッコロ「・・(一体何だと言うんだ
恐ろしいまでのこの嫌な予感は)・・」
それは先程の自分の失態と相まってどうしても
拭いきれない恐ろしいまでの嫌な予感となって
彼を支配していた
彼はそれを振り払うように生唾を飲み込み
ながら ゆっくりと問い掛ける
ピッコロ「何故だ・・ポポ・・・何故お前が
此所に居る?」
その声はまるではあってはいけない恐怖を
現実のものとしたく無い そんな祈りの
籠った言葉だった
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・未来は不確定なものである・・
ここは神の宮殿の一角にある可能性未来を
映し出す映世 の鏡が安置されている部屋
その映世の鏡に映る三つの邪悪な影が今
静かに脈動初めていた
霞のようだった三つの邪悪な影は今や
漆黒の闇となって映世の鏡を覆い尽くそうと
していた
・・だがそれは些細な切欠で 確定
された未来へと変わる・・
三つの邪悪な影の中の二つは金色の輝きを
放っているように見えた
そしてその漆黒の闇が映世の鏡を完全に
覆い尽くそうとしたその時
映世の鏡の闇の中から 小さく仄かな
三つの輝きが現れた
・・だが闇が在れば光も又存在する・・
その煌めきは徐々に大きくなり 軈ては
その輝きは三つの邪悪な影に拮抗する迄に
成長していった
その中の一つの光は先の二 つと同様の
金色の輝きを放っているように見えた
・・希望は受け継がれ 決して潰える
事はない・・
後書き
トランクスの揺るがぬ決意 そして初めて感じる
父親のぬくもり
ここはオリジナルにはなかった追加の文章なのですが
力を入れて書きました
そして前回と繋がるようにして この先の
重要な伏線も出てきました
次回は遂にお待たせのあのキャラが登場
ページ上へ戻る