戦国異伝
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第百五十話 明智と松永その九
「城には必ず間に合います」
「それでは」
こう話してそしてだった。
彼等は森の守る宇佐山城に向かった、その中には当然信長もいる。
信長は己の馬を進めながらだ、宇佐山城の方を見て周りに言った。
「必ずな」
「はい、与三殿を」
「そして城の兵達も」
「必ず救う」
そうするというのだ。
「間違いなくな」
「はい、それでは」
「今より」
「必ず間に合う」
これが信長の今の言葉だった。
「そうするからな」
「必ず間に合いますな」
「当然じゃ」
このことは間違いないというのだ、信長にしても。
「猿夜叉もおるからな」
「では猿夜叉殿がですか」
「いざという時は」
「そうじゃ」
だからだというのだ。
「あ奴は必ず助かる、そしてじゃ」
「そして?」
「そしてといいますと」
「近江の次じゃ」
こう言うのだった、ここで。
「問題はな」
「近江の次といいますと」
「それは」
「うむ、越前か」
若しくはだった。
「摂津か」
「どちらに行くか、ですか」
「それが問題ですか」
「越前の北には加賀がある」
本願寺、一向宗の拠点の一つのこの国がというのだ。
「あの国がのう」
「お気になりますか」
「どうしても」
「うむ、あの国じゃ」
信長は危惧する顔で言った。
「あの国から越前に攻め込んでおるからのう」
「殿、お言葉ですが」
ここでだ、こう言って来たのは竹中だった。
「今越前には兵を碌に置いていませぬ故」
「しかもじゃな」
「はい、そして前波殿もです」
その彼がだ、どうかというと。
「他にも朝倉家の方々がおられますが」
「どの者もな」
「はい、越前から来る一向宗の大軍を抑えるには」
「危ういのう」
「ですから越前は」
「やはりな」
ここでだ、また言う信長だった。
「越前は一旦やられるか」
「かなり攻め込まれるかと」
そして前波達は敗れるというのだ、竹中はその読みを言うのだった。
「今から与三殿をお助けしてそのうえで近江を収め」
「そのうえで越前に向かうべきじゃな」
「摂津はまだ余裕があります」
信行、信広が五万の軍勢を率いて石山御坊を囲んでいる、そこは確かに本願寺の総本山であるがそれでもだ。
「四国を収めた鬼若子も来られるでしょうし」
「まだ余裕があるな」
「しかし越前は違います」
この国はというのだ。
「おそらくこうしている間にも」
「一向宗に押されておるな」
「はい、ですから」
だからだというのだ。
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