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久遠の神話

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第七十四話 実った愛その十四

「区役所に行ってそうして」
「二人で婚姻届を出してだ」
「それで一緒になるのね。それでね」
「それで、何だ」
「式は何処でしようかしら」
「知り合いにいい神父の人がいい」
 大石のことだ、広瀬は由乃に彼のことを話した。
「その人に頼もう」
「神父さんなのね」
「俺達は二人共キリスト教徒じゃないがな」
 だがそれでもだというのだ。
「いい人だ、だからな」
「式を挙げてくれるのね」
「そうしてくれる、ではな」
「ええ、それじゃあその時はね」
「その人に頼もう」
 大石、彼にだというのだ。
「そうしよう」
「それじゃあそのことは御願いね」
「任せてくれ。神父さんには俺から頼んでおく」
「キリスト教だったら」
 由乃は目を輝かせている、そのうえで恍惚として語ることは。
「ウェディングドレスよね」
「そうなるな」
「私もあれを着られるのね」
 完全に夢見る乙女の言葉だった。
「そうなるのね」
「そうだが」
「やっぱりね、ウェディングドレスってね」
 どうしたものか、由乃はその夢見る顔で話していく。
「全部の女の子の憧れだから」
「だからか」
「楽しみよ。早く大学を卒業して」
 そしてだというのだ。
「それでね」
「結婚式もか」
「多分六月よね」
 先の先の話もした、広瀬に。
「式は」
「ジューンブライドか」
「夢みたい」
 そのジューンブライドもだというのだ。
「本当にね」
「本当に嬉しいんだな」
「女の子の憧れだからね、花嫁って」
 それに自分がなれる、嬉しくない筈がなかった。
「まだ先だけれど楽しみで仕方ないわ」
「大学を卒業すればか」
 広瀬は今度は未来を見て言った。
「俺達はな」
「そうね、今私達二回生だから」
「あと二年だ」
「そうね、長いかしら」
「長いと思えば長い」
 時のことも言う由乃にこう返した広瀬だった。
「しかし短いと思えばだ」
「短いのね」
「俺は短いと思う」
「広瀬君は?」
「楽しんでいれば時間が過ぎるのは早い」
 楽しんでいるならば時の流れは早い、それでだというのだ。
「だからな、卒業までもな」
「楽しむのね」
「二人で楽しまないか」
 広瀬は本当に少しだけだった、だがそれでもだった。
 微笑んだ、由乃にその微笑みを見せてそのうえで由乃に言う。
「卒業まで、それからも」
「結婚してからも」
「それで終わりじゃない」
 結婚して幸せになって、だがそれでだというのだ。
「まだあるからな」
「だからなの」
「そうだ、結婚してからも幸せは続く」
 これが今彼が言うことだった。
「ずっとな」
「そうね、結婚してもね」
「そして結婚までもな」 
 大学にいるその間もだというのだ。
「幸せだからな、俺達は」
「じゃあ私達ってあっという間に人生が終わるのね」
 由乃は広瀬の言葉をここまで聞いてこの考えに至った。
「そうなるのね」
「そうだな、幸せだからな」
「うん、幸せな時はあっという間に過ぎていくから」
「それをずっと続けていこう」
「二人でね」
 二人で話す、そうしてだった。
 その二人で家に戻った、やがて二人で過ごすその家に。そうしたのであった。


第七十四話   完


                         2013・7・7 
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