久遠の神話
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第七十四話 実った愛その十一
「飲んでだな」
「そう、そうしてね」
「そうしていればいいな」
「私達はね」
由乃も缶を開けた、その一リットルを。
それを飲みながらだ、こうも言うのだった。
「美味しいからね」
「楽しめばいいな」
「そう、多分飲んで食べて終わった頃には」
二人がそうしてからだというのだ。
「お父さん達の話も終わってるから」
「そうか、しかし俺達は今はな」
「蚊帳の外っていうのね」
「そう思うが、いや」
思って言葉に出してすぐにだった、広瀬は考えを変えた。
そしてだ、こう言い換えたのだった。
「見られているな」
「そういえば視線をね」
ちらちらとだ刺す様なものを感じていた、由乃は今それがわかった。
広瀬も気付いた、それで言うのだった。
「感じるわね」
「気付かないふりをすべきだな」
「そうね、今はね」
「普通にしていればいい」
これが広瀬の今の考えだった、実際にビールを飲み肉を焼いて食べてそうしていくのだった。
肉にはタレをつける、皿の上のそれを。
それも食べてだ、こうも言うのだった。
「やはり美味いな」
「そうでしょ、うちの牧場のお肉よ」
野菜は違うがだ、由乃の家では野菜は作っていないのだ。
「美味しい筈よ」
「そうだな」
「そう、だからね」
それでだとだ、さらに言う由乃だった。
「どんどん食べてね」
「そうさせてもらう」
「ビールも飲んで」
こちらも忘れない、由乃はそのビールを自分でも美味そうに飲みながら広瀬にこんなことを話した。
「ただね、うちのお父さんね」
「ここは」
「もうお義父さんでいいわよ」
にこりと笑ってこう囁く。
「呼び方はね」
「そうか」
「前からそう言ってるじゃない」
広瀬はそう言われてもどうしてもまだ遠慮しているのだ、それで今もいささか口ごもっていた。だがそれはもういいというのだ。
それでだ、由乃はその広瀬に笑顔で言ったのである。
「遠慮なしでね」
「わかった、それならな」
「うん、じゃあ今はね」
「こうして焼いてな」
「食べよう、お酒もあるしね」
ここでまたビールを飲む由乃だった。飲みながらにこにことしている。
「いや、お外で飲むビールはね」
「最高か」
「ええ、最高よ」
本当にというのだ。
「お酒はどれも好きだけれどね」
「外だとビールか」
「特にバーベキューにはね」
これしかないと言いながらさらに飲む由乃だった。
「これでしょ。ただね」
「ビールだからだな」
「痛風がね」
ビールにはどうしてもついて回る、由乃はこのビール飲みの宿敵については曇った顔でこう言うのだった。
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