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ヘタリア大帝国

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TURN122 砂嵐の中でその十二

「確かに」
「ほら、そうだよね」
「ではマリー様もですか」
「僕元々こうした服装が好きだったんだ」
 ラフなものがだというのだ。
「それでなんだよ」
「しかしネルソン提督は」
「私も私の好みです」
 ネルソンは微笑んで今のスーツ姿でモンゴメリーに答える。
「こうした服装がです」
「卿の好みだな」
「はい、スーツが」
 他にはタキシードも好きだ、こうした端正な正装が彼の好みなのだ。
「あくまで私の好みです」
「そうか」
「私もですが」
 日本も普段の海軍の軍服姿ではない、ラフな私服である。
「普段はこうしたものです」
「左様ですか」
「提督はそのままで宜しいのですか?」
 日本はエイリス軍の騎士提督の軍服姿のままのモンゴメリーに問うた。
「暑くはないですか?」
「いえ、別に」
「それならいいのですが」
「では、ですね」
「はい、案内させて頂きます」
 こうしてだった、モンゴメリーは日本と共に枢軸諸国を回ることになった。エイリスの植民地だった国々も含めて。
 ベトナムに行くとだ、フェムと共に観たその国は。
 横暴な貴族も厳しいエイリス軍人達もいない、かつて植民地統治の下で暗い顔だった現地の者達が笑顔で歩いていた。
 そして勤勉に働き楽しげに遊んでいた、その彼等を観てだった。
 モンゴメリーはまずこう言った。
「いや、これは」
「全く違いますよね」
「はい、これがベトナムですか」
 モンゴメリーは彼の記憶の中にあるベトナムを思い出しながらフェムに答える。
「かつては暗鬱としていたというのに」
「独立してからです」
「ここまでなったのですか」
「はい、そうなんです」
「ただ明るいだけではないですね」
 モンゴメリーはそのことも見ていた。
「経済が急成長していますね。外国人も多いです」
「ビジネスで来ている方にです」
「観光客ですね」
「そうなんです」
 そうした外国人達も多く来ているというのだ。
「皆さんベトナム料理も楽しんで下さってます」
「私としても何よりだ」
 今度はベトナムが出て来てモンゴメリーに話してきた。
「お陰で観光産業も産まれたからな」
「観光産業ですか」
「かつては想像も出来なかったな」
「植民地では」
 モンゴメリーもベトナムに答える。
「観光というよりは」
「ただ横柄に見て回るだけだったな」
「そうでした、ですが今は」
「この通りだ」
 観光客達はベトナムの観光スポットを回り土産を買い料理に舌鼓を打っている、それが植民地の頃と全く違うというのだ。
「私は一変した」
「まさにですね」
「無論問題は多いがな」
 問題のない国家なぞない、ベトナムもこのことは隠さない。
 だがそれでもだ、植民地だった頃よりはというのだ。
「この通りだ」
「左様ですか」
「貴殿も何か食べるか」
「生春巻きなんかどうですか?」
 フェムはベトナム名物のこの料理を出した。
「如何ですか?」
「そうですね。それでは」
 モンゴメリーはフェム達に誘われてその生春巻き等のベトナム料理を食べた。箸の扱いには苦労したがそれでもだ、その味には。
「これは」
「どうだ」
「美味しいですか?」
「はい、かなり」
 生春巻きの生地だけではない、中の生野菜やスライスした肉も。
 そしてナムプラーもだ、そういった全てがだった。
「これがベトナムの味ですか」
「そうだ」
 その通りだとだ、ベトナムは答えた。
「幾らでも食べてくれ」
「他のお料理もありますよ」
「それでは」
 モンゴメリーはベトナム達に勧められるまま暑いがその中に浮かび上がるベトナムの風景にも魅了された、これがはじまりであった。


TURN122   完


                      2013・7・9 
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