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ローマ帝国

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第三章

「私はローマ皇帝なのだ、そしてこのモスクワはだ」
「ローマですか」
「ローマ帝国の帝都ですか」
「そうだ、この街は第三のローマだ」
 それになったというのだ。
「第一のローマ、第二のローマ、そして」
「第三のローマですか」
「ロシア、そしてモスクワは」
「そうなる、そしてだ」
 イワンはさらに言った。
「第三のローマになる、このローマは永遠のローマだ」
「では第四のローマはですね」
「ありませんね」
「そうだ、ローマ帝国は第三のローマで終わる」
 永遠に続くというのだ。
「私はこの国を永遠のローマ帝国とするのだ」
 こう宣言してだった、ロシアは第三のローマ帝国を称し皇帝も戴いたのだった。それが為にコンスタンティノープルも目指した。
 しかしこのローマ帝国も滅んだ、革命により皇帝も正教も否定された、モスクワは共産主義者達のものとなった。
 しかしレーニンはモスクワに入りその宮殿の中でこう同志達に言った。
「ローマ帝国は全て受け継がれることになる」
「我々にですね」
「共産主義に」
「そうだ、キリスト教に代わり共産主義が人類を導くのだ」
 こう言うのだった。
「これからはな」
「では我々がですね」
「ローマ帝国になるのですね」
「そうなりますか」
「そうだ」
 まさにその通りだとだ、レーニンは答えた。
「これまでローマは三度世界を征服したな」
「一度は軍、二度は法、そして三度は教ですね」
「その三つによって」
「そしてローマは三つあった」
 このことも話すのだった。
「ローマ、コンステンティノープル、モスクワとな」
「そしてこのモスクワで、ですね」
「ローマは永遠にあるのですね」
「そこに我々が新たなローマ帝国を築く」
 第四のローマではない、新しいローマをだというのだ。
「その三度世界を征服した力でだ」
「まずは軍ですね」
 同志の一人がこれを出した。
「これですね」
「そうだ、人民の軍が世界を解放するのだ」
「そして法は」
「人民の法だ」
 それがだというのだ。
「党が定めたな」
「それが世界の新しい法になりますね」
「教えはもうある」
 それはというと。
「共産主義だ、この三つが新たなローマだ」
「そして我々がですね」
「このモスクワからですね」
「新たなローマ帝国を築くのだ」
 皇帝はいない、しかしローマ帝国はあるというのだ。レーニンは自分達が占領したモスクワの奥の宮殿において同志達に言うのだった、永遠の都において。


ローマ帝国   完


                     2013・10・1 
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