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ローマ帝国

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第一章

                ローマ帝国
 ローマ帝国は何処に起こったのか、それは言うまでもない。
 ローマ、この街においてだ。このことは誰もが知っている。
 実際にローマ帝国の帝都はこの街にあった、だが。
 ローマ帝国といえど何時までも繁栄していられはしない、帝国は長い混乱の時代を迎えその中でローマ自体も。
 戦乱と人心の荒廃により乱れていた、コンスタンティヌスはそのローマを観て自身の側近達に嘆息してこう問うた。
「今のローマをどう思うか」
「この荒廃したローマをですね」
「この街を」
「前より人が多く集まり汚れてはいた」
 これは人口が密集していれば当然起こる問題だ、ローマは繁栄していた頃から人が出すゴミや排泄物に悩まされていた、それはコンスタンティヌスが観ている今もだ。
 だが、だ。それ以上にだった。今のローマは。
「戦乱で荒れ果て荒れ果てた場所はそのままだ」
「屍すらそのままですな」
「何もかもが荒れています」
「これでは」
「うむ、最早ローマではだ」
 この街では、というのだ。
「帝国の帝都足りえない」
「では、ですか」
「コンスタンティヌス様は遷都を」
「それを考えている」
 まさにだ、その通りだというのだ。
「このローマからのな」
「ではその帝都は」
「一体何処に」
「ビザンチウムだ」
 彼に縁のある街だ、バルカンの端にある。
「あの街にしたい」
「あそこですか」
「あの街にですか」
「海に面していて良港がありしかも守りやすい」
 経済、貿易に国防を考えてだというのだ。
「だからだ」
「それに、ですね」
「あの場所では」
 ここで側近達が彼にさらに言う。
「キリスト教もですね」
「認められますね」
「そうだ、ローマではな」
 この街ではとだ、コンスタンティヌスは言うのだった。
「様々な宗教と神々が多過ぎる、このローマでキリスト教は認められない」
「最早キリスト教を認めるしかありません」
 それがローマ帝国の現状だった。
「彼等の勢力は日毎に大きくなっています」
「最早その信徒の数は弾圧しきれるものではありません」
「だからこそ認めなくてはなりませんが」
「それはローマでは」
「無理ですね」
「そうだ、しかし新しい街ならばだ」
 ビザンチウム、あの街ならというのだ。
「だからだ、いいな」
「はい、それでは」
「遷都ですな」
「そうだ、そうする」
 こう言ってだった、コンスタンティヌスは側近達にローマからの遷都を話した。帝国発祥の地であり帝都である街を後にすることはまさに驚天動地の事態だった。
 しかしコンスタンティヌスはその新しい都、三方を海に囲まれ黒海と地中海を同時に観るその街に入るこう言うのだった。
「ここがローマだ」
「この街がですか」
「ローマなのですか」
「新しいローマだ」
 それになるというのだ。
「以後この街の名をコンスタンティノープルとするが」
「帝のお名前ですね」
「そうだ、以後この街には私の名を冠する」 
 己の街である、今高らかにそのことも言ったのだ。 
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