ほうれん草
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第三章
「スパゲティに入れてもいい」
「スパゲティにもですか」
「カプyリチョーザに行け」
イタリア料理のチェーン店だ、大蒜とオリーブをふんだんに使っておりしかもその量が見事なものである。
「トマトソースのスパゲティの中に入ってるぞ」
「ほうれん草がですか」
「あれもいい、あとだ」
さらに言う哲章だった、にこりとした笑みで。
「バターで炒めるとな」
「ああ、あれいいですね」
「そうだろ、あれは美味いだろ」
「はい、本当に」
「ほうれん草は偉大だ」
「美味いですし」
「栄養の塊だ、いつもたっぷり食べてるとな」
それでどうなるかというと。
哲章は己のその筋肉、胸や腕のそれを誇示してぴくぴくとさえさせながら言った。上半身はティーシャツ一枚なので余計に目立つ。
「俺みたいになれるぞ」
「そのシュワちゃんみたいなボディにですね」
「スタちゃんでもいいぞ」
シュワルツェネッガーでもスタローンでもだというのだ、尚女性問題は哲章は起こしていない。彼女は今はいない。
「どっちにしてもな」
「ムキムキですからね」
「何だかんだでなったよ」
「あの水兵みたいにですか」
「あそこまで食ったらすぐに滅茶苦茶強くならないけれどな」
それでもだというのだ。
「ラグビーみたいなスポーツ出来る位になったさ」
「そうですね、じゃあ」
「これからも食うぜ」
「ほうれん草をですね」
「山みたいに食ってくからな」
「それで健康になってですね」
「強くなるからな」
このことはあの水兵と同じというのだ、だが。
ここでだ、哲章は笑ってこんなことも言った。
「あんな顎にはならなかったな」
「ああ、あの顎ですね」
「ほうれん草を食べたら急に強くなる体質も気になるけれどな」
「顎もですよね」
「凄い顎だからな」
「アントニオさんより凄いですね」
「実はあの顎にも憧れてたんだよ」
あまりにも目立つその顎にだというのだ。
「それも無理だったな」
「まあそういうことは仕方ないですね」
「ああ、そうだな」
顎の話は笑って終わらせた、そのうえで。
哲章は部活の後で後輩を自分の家に招いた、そして両親と共に母が作ってくれたほうれん草をどっさりと入れた鍋を食べた。その強くなる野菜を。
ほうれん草 完
2013・9・21
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