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万華鏡

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第五十二話 文化祭のはじまりその九

「じゃあいいわね」
「あんたもね」
「お化け屋敷に入れっていうのね」
「ええ、メイクしてね」
 そうしてだというのだ。
「いいわね」
「それで何のメイクなの?」
「化け猫よ」
 それだというのだ。
「前にやってもらったでしょ」
「そういえばそうだったわね」
「そう、だからね」
 それでだとだ、クラスメイトの娘は言ってだった。
 琴乃をそのメイク担当の演劇部の娘のところに連れて行った、その娘は丁度他の娘のメイクをしているところだった。
 その彼女はだ、琴乃を見てすぐに言った。
「次はあんたね」
「ええ、お願い出来る?」
「確か化け猫よね」
「そうよ」
「わかったわ、それじゃあね」
 その言葉に頷いてだ、そしてだった。
 演劇部の娘はすぐにだった、今の娘のメイクを終えて。
 そして琴乃にだ、こう言ったのだった。
「じゃあ前に来て」
「うん、じゃあ」
「手早く綺麗にいくわよ」
「その両方を両立させるのね」
「それがメイクだから」
 それでだというのだ。
「メイクアップアーチストの心得よ」
「それ何処かの特撮ヒーローみたいな言葉ね」
「そういえばあの人家あったのかしら」
「あったわよ、野宿もしてたけれど」
「バイオリンを化粧品入れにしてたけれどね」
 そのことも言う演劇部の娘だった。
「あれがね」
「よかったの?」
「よかったっていうかね」
 どうかとだ、早速メイクの道具を出しながら言う。
「出番少なかったけれど私好きだったのよ」
「格好よかったから?」
「そう、だからね」
「そうなのね」
「ええ、じゃああの人みたいに」 
 やると言ってだ、実際に。
 琴乃をメイクしていく、それは恐るべき速さだった。
 その速さでメイクをしてからだ、こう琴乃に告げた。
「鏡見て」
「えっ、もう?」
「そう、もうよ」
 終わったというのだ。
「後は確かめてみて」
「それじゃあ」
 琴乃も鏡を出して自分のメイクの様子を確かめる、見ると。
 その顔はそのまま映画に出られそうだった、夜道で出会ったら卒倒しそうだ。
 今の自分のその顔を見てだ、琴乃はこう言った。
「いいわね」
「そうでしょ」
「ええ、怖いわ」
「こうしたメイクは怖くてこそでしょ」
「だからなのね」
「そうよ、思いきりきつねでメイクしたのよ」
 そうしたというのだ。
「目の周りとか口元とかね」
「後は服を着るだけね」
「そっちも用意出来てるわ」
 もう一つのメイクの要素である衣装もだというのだ。 
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