悪役
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白菊大雅
「今日入学式だな!春馬!」
「さすが祐樹、テンション高いね、入学式から」
「おうよ!さっそく彼女作ってやるぜえ!」
「できるといいね」
「なんだよ!いくら春馬がモテるからって高校でも一緒だと―――――」
(くだらねえ)
自分の隣を歩く2人の男の会話が嫌でも入ってくる。
朝から耳障りな声を出され、いかにも不快だという表情をする白菊大雅。
いや、もともと目が鋭く、表情は曇っていて黙っていても何かに怒っているようににしか見えないのだが…。
今日は高校の入学式、桜が満開とは言わないまでも、美しく凛々しく咲いていた。
風が吹くたび花びらが不規則に舞い、足元に落ちる。
白菊はそれに八つ当たりするようにわざと踏みつけ、横の2人から離れるように早足で学校に向かった。
学校につき指定された教室に向かった。
2階に行く階段をゆっくり上っているとき、白菊はふと窓の外を見た。なんとなくだった。
――――思わず白菊は足を止める。
窓の向こう側、中庭の木が見える。校舎との距離はほぼなく、窓に木の枝がふれてしまいそうなくらいだった。
細い木の枝、そこに一匹のカラスがこちらを静かに見つめていたのだ。
いつもは素通りする光景のはずのその光景がなぜかとても白菊には魅力的感じられてしまった。
漆黒の黒い羽根、しかしかすかにその羽根は虹色を帯びていて、目は鏡のように綺麗で白菊をはっきりと映し出していた。
白菊は吸い込まれるようにその窓に近づいていた。
しかし、ドッという衝撃に突然襲われた。
階段を横に歩いたのだから当然のように人とぶつかった。
「おわっごめん!」
「祐樹、ちゃんと前見なよ」
白菊はそちらに目をやる。
それは登校中に隣を歩いていた男だったが、そんなことはとうに忘れた白菊はまた視線を正面、窓の方にやった。
しかしすでにそこには何もいなかった。
「?なんかいんの?」
白菊は無言で自分の教室に改めて向った。
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