久遠の神話
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第七十三話 帯の力その六
「考えたものだ」
「貴様を外から倒すことは無理だとわかった」
これまでの攻防でだ、それはだというのだ。
「しかしだ、無敵の存在はいない」
「だからこそ我の身体の中をか」
「攻めた」
そうしたというのだ。
「あえて貴様の口が見えやすい上に位置してな」
「頭を使ったか」
「確かに木を巻き込むことはしない」
先程そうした様にだというのだ。
「だが、だ」
「使うことはあるな」
「その通りだ」
己の前にいる猪、自分自身が致命傷を与えた相手に告げる。
「こうしてな」
「人間もまた神を倒せるか」
「そのことがわかったな」
「よくな、見事だったと褒めておく」
広瀬を認める言葉、それも告げた。
「満足させてもらった、ではだ」
「消えるか」
「うむ、これでな」
そうなるというのだ。
「心残りはない」
「それならいいがな」
「貴様は願いを適えた」
祝福、その言葉すら出ていた。
「よいことだ」
「確かにな、これで俺は戦いから降りることが出来る」
広瀬も言う。
「無事にな」
「それではだ」
ここまで話してだ、そうしてだった。
猪は全身から白い光を放ってそのうえで姿を消した、それが終わってからだった。
広瀬は森を出た、そのうえで聡美達の前に出て彼女達に問うた。
「これで終わりだな」
「いえ、まだです」
「まだ戦う必要があるのか」
「それはありません」
聡美は広瀬に対して確かな声で答えた。
「そのことはご安心下さい」
「ならいいがな」
「そして戦いを終わらせるには」
それには、というのだった。
「一つやり方がありまして」
「それはどうしたものだ」
「まずは剣を足元に寝かして置かれて下さい」
そうしろというのだ、まずは。
「そのうえで戦いを降りられると言われれば」
「それで終わりか」
「貴方の戦いは終わりです」
それでだというのだ。
「そうなりますので」
「わかった、それではな」
ここまで聞いてだ、そしてだった。
広瀬は聡美に言われた通りにその剣を彼の前に横に置いた。そうしてから一言言った。
「戦いを降りさせてもらう」
「では」
こう応えてだった、そのうえで。
広瀬は戦いから降りた、彼の剣はこの言葉と共に黄金の光となって消え去った、それを見届けてだった。
彼はその場を後にしようとする、その彼に中田が声をかけた。
「じゃあ今からか」
「祝いに行く」
そうするというのだ。
「二人でな」
「そうか、それじゃあな」
「さて、どうなるかだな」
「あんたの願いだな」
「俺は確かに倒した、だがな」
「帯ですが」
後ろから声がした、今度は智子の声だった。
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