DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第6章:女の決意・男の勘違い
第19話:何か忘れてない?
(デスパレス)
アローSIDE
魔族達の居城デスパレス……その禍々しいシルエットを眼前に控える林の中で、オイラ達は進入の準備に勤しんでいる。
何故オイラ達がこんな所に居るのかを話さなければならないだろう。
それはリバーサイドで仕入れた情報に端を発している……
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(リバーサイド)
「ねぇねぇ……この町の南に魔族の城があるんだって! もしかしたらデスピーがそこに居るかもよ。行ってみない?」
相変わらずの情報収集力を発揮するマリー。
「マリーさん酷いですぅ! デスピサロ様の事を変な風に呼ばないで下さい」
「あらあら……私が何時デスピサロ様の事を話題に出しましたか? 私の故郷では『デスピー』とは『お偉いさん』という意味なのですよロザリーちゃん。貴女がデスピサロ様の事をそんな風に思ってたから、勘違いしちゃったんじゃないのでは?」
相変わらず性格の悪い女だ……
アニキはリューノ一人に絞るべきだと思う。
品位が落ちるよなぁ……
「むぅ……」
プクッと頬を膨らませ憤慨するロザリー……
無理だから諦めた方が良いぞ。この一族に口喧嘩で挑むなんて馬鹿げてる。
「聞いた事ない言葉だな。勝手な造語を造るんじゃないマリー。本人が聞いたら怒るぞ」
「そうですよねリュカさん!」
一族の総大将がロザリーの援護に出てきた。本気で嬉しそうなロザリー……やはり相手が美女だと無条件で助けるのかな?
「そう言う陰口はしちゃダメだ……どうせなら目の前で言うんだな。その方が反応を見れて面白いだろ」
違った……美女を助ける気など微塵も無かった様だ。
アニキが言ってた通り、リュカさんは他人の女に興味が無いらしい。
「止めなさい、父娘してロザリーさんを苛めるんじゃないっての!」
ロザリーが哀れに思えたのか、アニキが救援に駆け付ける。
と言うより、この二人を止められるのはアニキかビアンカさんだけだ。
「で、そんな危険な場所に行く理由は何だ? 『ちょっと見てみたいんですぅ~♥』とか言ったら別れるぞ!」
そうだ別れろアニキ!
そんなイカれ女からは手を引くんだ!
「ち、違うわよぉ……え~っとね……そ、そうよ! お父さんも言ってたけど、互いの事を解り合おうとせずに共存するのは難しいじゃない? だからこのチャンスに魔族の事を知ろうと思うのよ。その為には居城への視察なんて最適じゃん!」
何を言ってんだこの女は!?
“互いの事を理解する”大いに結構! だがその為に世界一危険な場所に忍び込むなんてキチガイ沙汰としか言いようがない。
「なるほど……つまりマリーは『もっと魔族の情報を集め、今後のアドバンテージを取ろう』と言いたいのだな?」
何だアドバンテージって!? この父娘の言ってる意味が一個も解らんぞ……
どうして相互理解を深める為にアドバンテージを取る必要があるんだよ!
「やれやれ……では危険な魔族の城にみんなで潜入大作戦ですか?」
拙いぞ、アニキまでもが危険地帯潜入を支持し始めた。
助けを求める意味を含めて、ビアンカさんに視線を向けたけど……優しく微笑んでるだけで止めてくれそうに無い。
「“みんなで”じゃないよ。僕はそんな危険な場所に行きたくない。何よりそんな責任は僕に無い! 魔族との相互理解を求めてる勇者達が行けばいいんだよ」
何だそりゃ!? アンタの娘がトチ狂った提案をし、それを父親として了承したんだろうに……
「ちょっとリュカさん、それはズルいでしょう! リュカさんだって潜入案に賛成したじゃないですか!」
「賛成したのは、相互理解を深める為に労力を厭わないという姿勢にであって、僕自らがその努力をしたいと言った訳ではない」
「ほぼ同じ意味じゃんか!」
「微妙に違う。若干のニュアンスが違う! これ、結構大事」
「まぁまぁまぁ……お父さんもウルフも喧嘩をしないで。大丈夫よ……別に乗り込んで魔族を皆殺しにしようって訳じゃないんだから。気付かれない様にすれば良いのよ」
事の元凶が偉そうに二人を宥めてる。
お前が余計な事を言わなければ、こんな事にはならなかったんだ。
アニキには悪いけど、オイラはコイツが大嫌いだ!
「気付かれない様にって……魔族の巣窟に入るんだぞ! そんな事は不可能に決まってるだろ」
「おやおやマイダーリンはネガティブメンね。大丈夫よ姿を変えて潜入すれば……あ、『変化の杖』を手に入れ忘れた!!」
アニキの不安に、偉そうな態度で反論してたが、何かを忘れてたらしく突然狼狽えだした。
いい気味だと言いたいが、この女の狼狽様はオイラ達にも影響がありそうで凄く怖い。
普段態度のでかいヤツが酷く狼狽えるのを見ると、こんなにも不安感に襲われるのか!
「何だ……この世界にも変化の杖が存在するのか?」
「え、ええ……本当はそれを手に入れてからデスパレスに乗り込む必要があったの……どうしよう……」
妙な会話だな。リュカさんとマリーの間では成り立ってるみたいだが、どうにも気になる事ばかりだ。
「おいアロー! お前、人間になったが狐時代の能力は失われてないよな!」
「え、あ……はい! まだオイラは人を化かす事が出来ます!」
突如話を振られ、偽る事なく答えてしまった……
「じゃぁデスパレス潜入にはアローも同行しろ。それからウルフも行け!」
「ちょっと待て! どうしてアンタが行かないのに、俺は行かなきゃならないんだ!? この世界にも変化の杖が存在するというのなら、それを手に入れてからでも良いだろう」
「ダメだね……あんなアイテムは世間に出さない方が良いんだ。わざわざ探し出さないで、このまま人々の目に晒されない様にシカトするべきだ!」
「じゃぁ俺がデスパレスに行かなきゃならない理由は何だ!?」
「万が一アローの能力が効き目なく、お前等が危険な状態に陥った場合に備え、ルーラの使えるウルフが同行するべきだ」
「だったらお前が行け! リュカさんの方が俺よりも大勢移動できるのだし、何より遙かに強い! 危険な状況になることすらないだろう!」
「僕がデスパレスに行くと言う事は、やっと再会できたビアンカを一緒に連れて行くと言う事だ。しかし僕はビアンカを危険地帯へ連れて行きたくないし、別行動もしたくない! だから絶対に行かない」
なんて我が儘な大人なんだ……
「デスパレスに行かなきゃならない理由があるのは、この世界を平和にしたがってるシン達であって僕じゃない。それにウルフも元の時代に戻りたいらしいから、率先してシン達に協力している。だからお前は行け! この世界の事も、この時代の事も、どうでもいいと思ってる僕には関係ない事だから、僕は絶対に行かない!」
「……ウルフさん、アロー君、申し訳ないけど俺と一緒にデスパレスに行ってくれないですか? 腹は立つけどリュカさんの言い分は尤もです。どうか俺に協力して下さい」
リュカさんの我が儘発言に唖然としてると、諦めたシンが深々と頭を下げオイラとアニキに懇願してきた。
「はぁ~……分かった分かった。今回はオッサンに頼らず、アロー君の才能を信じてシン君のサポートを頑張るよ……」
オッサンが言い出したら言う事を聞かないのはアニキも分かってる……渋々デスパレス行きを承諾した。
「まぁまぁウルフ。私も一緒に行って危なくなったら吹き飛ばしてあげるから、元気出してよ」
この問題を発生させたイカれ女が偉そうにアニキを慰める。
そして『危なくなったら吹き飛ばす』の言葉に、ロザリーとラピスが顰め面で反応した。
「ダメだよマリー。今回はお前とリューノはお留守番だ!」
「な、何でよ!?」「どうして私まで、お父さん!?」
名前を呼ばれた娘二人が、揃って抗議の発言をする。
しかし何故だろう……マリーは事を厄介にする危険があるから理解できるけど、リューノは問題なさそうだけども?
「『何故』って、今の発言が全てを物語ってるだろう! お前は咄嗟に唱える魔法力が巨大すぎて、何時かは相互理解を深めたいと思ってる魔族に対し、マイナスのイメージを与えかねない! 考えてみろ……家や家族に仲間などを吹き飛ばしておいて『本当は仲良くしたいんだよ』と言っても説得力が無いだろう! 今回は視察だけなんだから、咄嗟に吹き飛ばしそうなお前は留守番だ」
うん。非の打ち所の無い家族分析。
つーか、リュカさんは解ってて放置してるんだね。
う~ん……もっと厄介な状況だね。
「そしてリューノお前が留守番なのは、戦闘力的に全く役に立たないからだ。万が一の場合は速やかに脱出しなければならない状況で、無駄に人員を増やしていくのは下策だ。スパイ行動なのだし少数精鋭で行くのがベター。つまり、マリーは強すぎるからダメで、リューノは弱すぎるからダメって事! あぁ、勿論トルネコも行くんじゃねーぞ!」
「行きませんよ……頼まれたって、そんな危険地帯には行きませんよ!」
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(デスパレス)
そんな訳で、オイラ達は少数で魔族の居城に潜入しようとしている。
メンバー内訳は、シン・アニキ・リューラ・ライアン・ホイミンそしてオイラ……
ロザリーも行くと言い出したのだが、今回は動向を探るのが主目的であって、我々がロザリーを連れている事を知らせるべきではないとリュカさんが行った為、あえなく却下された。
筋肉姫も行くと言い出したが、リュカさんとブライが言葉を濁しながら却下してた。
まぁ理由は分かる……彼女は頭の方にちょっと問題があるから、下手に総大将の前に行かせたら何をするのか解らないからだろう。
リューラが選抜されたのは、オイラを守る為らしい……
オイラが行くと決まった時から、手を握り離れない様にしてくれてたからね。
リュカさんもリューラの実力なら大丈夫だと判断し、同行する事に反対しなかった。
むしろ他の娘がブーブー言ってたなぁ……
あと、ライアンが選抜されたのはホイミンを守る為だ。
一応ホイミンはモンスターだったし、行った事のないデスパレスでも多少は役に立つだろうとの事だ。
まぁ言い出したのは本人だし、リュカさんにも反対する理由が無かったんだと思う。
あとはオイラの化かす能力で、どれだけ魔族を欺けるかだ……
今気付いたけど、オイラって結構責任重大じゃね!?
やっべーよ……緊張してきたよ!
「アロー……君なら大丈夫。絶対私達を無事に帰らせてくれるよ」
オイラの緊張に気付いたリューラが、微笑みながら声をかけてくれた。
うん。俄然やる気が出てきたぜ!
絶対にリューラを無事返し、そして……
アローSIDE END
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