Element Magic Trinity
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てっぺんとるチャンスだろ!
「俺と勝負しろやぁァ!ラクサス!」
右拳に炎を纏い、ナツがラクサスに向かって駆け出す。
「ナツ・・・」
「無理を為さらないでください」
それを見たエルザが起き上がろうとするが、先ほど不意打ちで喰らった雷のダメージは大きく、シュランが気遣うように寄り添う。
「テメェのバカ一直線もいい加減煩わしいんだよ」
ラクサスはウザったそうに向かってくるナツを睨み――――――――
「うせろザコがっ!」
ナツに向けた左手から容赦なく雷を放つ。
それを確認したナツは右側に跳んでそれを避ける。
「火竜の鉤爪!」
跳んだ状態から頭を下に向け炎を纏った蹴りを放つ。
だが蹴りはラクサスの右腕で軽々と防がれた。
「おおっ!」
肘で曲げられた右腕から雷を放ち、ナツを弾き飛ばす。
何とか着地するナツだが―――――――
「んが!」
そこに雷を纏ったラクサスの蹴りが決まった。
そして蹴り飛ばしたナツの右腕を掴む。
「逃がさねぇぞコラ」
そう言ったと同時にラクサスの拳がナツに連続で叩き込まれる。
すると、掴まれたナツの右手がラクサスの左腕を掴んだ。
「逃げるかよ」
予想外の行動にラクサスの拳が止まる。
ナツは笑い、構えた。
「てっぺんとるチャンスだろ!」
そして炎を纏った左拳をラクサスの顔面へと決める。
ビビビ・・・と音を立て、ナツの腕を掴むラクサスの手に電撃が走る。
更にラクサスの拳がナツに決まった。
「おおおっ!」
みしっとラクサスの腕を掴むナツの手から煙が噴き出す。
豹柄に似たラクサスのシャツの袖口が燃えた。
「っだらぁっ!」
「はっはぁっ!」
そこからはただただ拳が叩き込まれ続ける。
お互いに腕を掴んでいる為逃げる事が出来ず、防ごうにも防いでいる場合ではないので、ひたすらに拳を決めていく。
「フン」
「うおっ!」
ラクサスがナツの腕をぐいっと引いた。
それによってナツはバランスを崩して倒れ、ラクサスの右手に雷が現れる。
「らぁっ!」
その雷が放たれる前にナツは足払いをするかのように両足に炎を纏って回転する。
ラクサスはそれを飛んで避け、腕を掴み、ナツが顔を上げた瞬間―――
「ごべっ!」
雷を纏った右足でナツの頭を踏みつけた。
「うおおおおっ!」
更にアッパーを決めるかのように腕を振るい、雷を浴びせる。
更に攻撃を仕掛けようとしたラクサスを――――――――
「水流の蛇」
青い蛇模様が止めた。
目を向けると、そこには右掌を向けるようにして立っているシュランの姿。
「何すんだシュラン!ラクサスをやんのは俺だ!」
「私はガジル様よりその方の討伐を命じられているのです。命令遂行順位に基づきナツ様の命令は却下とし、私はラクサス・ドレアー氏の討伐を遂行致します」
淡々と告げるシュラン。
そして魔法陣を展開させる。
「大地の蛇」
茶色に似た色合いの蛇模様が素早く空を駆けるが、体を雷へと変えたラクサスの速さには追いつけない。
「っ!速・・・」
「オラァ!」
「くっ・・・!」
その速さにシュランが目を見開いた瞬間、ラクサスは既にシュランの後ろに回っている。
防御も何も無い背中に容赦なく蹴りを決められ、シュランは床を転がった。
(速い・・・でも、あの閃光には届かないし追いつけない。何より、あの方の速さは小細工などないのだから!)
かつて戦った海の閃光の事を思い出しながらシュランは体を起こす。
確かにラクサスも速いのだが、体を雷へと変える事が魔法の種に入るのなら、ティアの速さは別物だ。
あれは純粋なる自分の力。魔法に頼らずとも彼女は時に鉄の森のテロ事件の時にエルザがオシバナ駅に向かうまでに運転していた魔導四輪並みのスピードを出す事が可能なのである・・・本気になれば。
もちろん、日常生活においてそんな速さを必要とする事はまずないし、そんなにスピードを出さなくても追い付ける奴の相手ばかりをしているから彼女の本気の走りを知る者はいない、あのルーやアルカ、クロスやヴィーテルシアといったティアとよく行動する人達でさえも。
「ナツ様」
「あ?」
そういえばあの方はよくナツ様と行動していますね・・・と思いながら、ふとナツに目を向けたシュランが声を掛ける。
「後方注意です」
「何言って・・・おごっ!」
体勢を立て直そうとしていたナツの頭に右手を乗せ、ナツを飛び越えるようにエルザが跳び、そのまま地面に倒れ込む。
シュランが「だから言ったじゃないですか・・・」と呟いたのは余談だ。
(ミストガンの事はひとまず忘れなければ。今はラクサスだ)
言い聞かせるように思いながら、エルザは黒羽の鎧へと換装する。
空が斬れる音と共にエルザが剣を振り、ラクサスはそれを避けた。
「エルザ!」
がばっとナツが顔を上げる。
「あの空に浮いているものは何だ、ラクサス!」
「神鳴殿・・・聞いた事あるだろ?」
「まさか街に攻撃をするつもりか!?」
エルザの剣を抑えるかのようにラクサスが右手に雷を纏う。
「はははっ!新しいルールさ。俺も本当は心が痛むよ、ククク・・・」
「貴様!」
ラクサスの言葉にエルザは憤慨し、その怒りを露わにして蹴りを決め込む。
が、その足は軽々とラクサスの右手に捕まれ、防がれた。
「あと2分だ」
告げられた残り時間にエルザが目を見開く。
「ナツ!シュラン!全てを破壊するんだ!」
「壊せねーんだよ!てか、違うな・・・壊したらこっちがやられちまうんだよ」
「ガジル様曰く、あの魔水晶には攻撃してきた者と自分のダメージを連結させるタイプの生体リンク魔法がかけられているようです」
エルザの言葉にナツが苛立つように叫び、シュランが至って冷静にガジルから得た情報を告げる。
「生体リンク魔法!?」
「そう・・・アレは誰にも手出しは出来ない魔水晶」
「卑劣な!」
エルザが叫んだ、瞬間。
「フン!」
「ぐっ!」
ラクサスはエルザに向かって、掴んでいた足を離すと同時に雷撃を放つ。
煙が起こり、それを斬り裂くように現れたエルザの脚には先ほどとは違うブーツが装備されていた。
ブーツだけではない。
たん、途中を回転した事で現れたエルザの纏う鎧は黒羽の鎧ではなく、ポニーテールだった髪はうなじ辺りから1本の三つ編みにされている。
「雷帝の鎧!?」
その鎧の名は雷帝の鎧。
炎帝の鎧が耐火能力に優れているように、この鎧は耐雷能力に優れている。
「フン・・・そんなもので俺の雷を防ぎきれるとでも?」
そう。
いくら鎧が雷を防げるからといって、相手はギルド最強候補。
全部を防げるかと聞かれれば答えは曖昧なものにしかならないのだ。
「何ラクサスとやる気マンマンなってやがる!こいつは俺がやるんだ!」
既に対ラクサス戦闘モードに入っているエルザにナツが怒鳴る。
その言葉にエルザは振り返り―――――――
「信じていいんだな?」
笑みを浮かべ、言い放った。
「へ?」
「は?」
予想外のエルザの言葉にナツだけでなくシュランも首を傾げる。
「オ・・・オイ!どこ行くんだよ!」
大聖堂から出ていこうとするエルザの後ろ姿を振り返り、ナツが叫ぶ。
が、エルザは振り返らない。
「まさかお前、神鳴殿を止めに・・・」
「ははははっ!無駄だァ!1つ壊すだけでも生死に関わる!今、この空には300個の魔水晶が浮いているんだぞ!時間ももう無いっ!」
ラクサスが高笑いも交えて叫ぶが、エルザの意志は揺るがない。
「全て同時に破壊する」
はっきりと言い切るその表情には、強い決意が溢れていた。
「不可能だ!出来たとしても確実に死ぬ!」
「だが街は助かる」
ラクサスの脅しに似た言葉に対してもエルザは揺るがず、ラクサスが目を見開いた。
「ラクサスを止めておけ、ナツ!シュランも頼むぞ!」
「了解致しました。ガジル様とエルザ様の命令が一致、命令遂行は絶対です」
「テメェ・・・ゲームのルールを壊す気か・・・」
ガシャガシャと鎧を鳴らしながらエルザが走り、シュランが恭しく頭を下げ、ラクサスが何処か慌てたように叫ぶ。
「こっちも信じていいんだな、エルザ」
ナツの言葉に、コクッとエルザが頷く。
「可能か不可能かじゃねえぞ!」
大聖堂を去っていくエルザに向かって、ナツが叫ぶ。
「お前の無事をだぞ!」
叫び、指を突き付ける。
それを聞いたエルザは笑みを浮かべた。
(お前とティアに救われた命だ。粗末にする気はない)
言葉には出さずに心の中で呟く。
雷帝の鎧を纏い、エルザは神鳴殿破壊へと駆けて行った。
「くそっ!」
「火竜の・・・」
「火炎の・・・」
エルザを追おうとラクサスが駆けだす。
ナツが頬を膨らませるのとシュランが右手を向けるのはそれとほぼ同時だった。
「咆哮!」
「蛇!」
「ぬ!?」
刹那、竜をも殺す炎がラクサスを包み、更に真っ赤な蛇模様が紅蓮を駆ける。
煙が晴れ、現れるのはかつて敵対した2人。
桜色を揺らす紅蓮の竜と、蛇へと変化する髪を揺らす蛇娘。
「エルザ様の後は追わせませんわ」
「俺はお前を倒す」
怒りを露わにするナツと、やはり冷静なシュラン。
見慣れていないようでどこか見慣れているような2人が揃う。
「このガキどもが・・・」
ラクサスが苛立たしげに呟いた。
後書き
こんにちは、緋色の空です。
いやー・・・最後の方にもありますけど、ナツとシュランって若干ナツとティアっぽいんですよね。ティアもシュランも冷静キャラだし。
・・・関係ない話、その2。
世界観フェアリーテイル、魔法D.Gray-man転生物を書きたいと思い、考える。
・・・やっぱり更新が疎かになりそうで怖い。
という訳で、やるとしても非公開で合間合間にやろうかな。
感想・批評・ミスコン投票、お待ちしてます。
ミス・フェアリーテイルコンテスト、結果発表まであと8話!多分!
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