久遠の神話
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第七十二話 愛の女神の帯その十
「そして勝ってだ」
「願いを適えられますね」
「そうする」
「ではその様に」
「今日だったな」
「今日の夜に」
まさにこの日にだというのだ。
「貴方に闘ってもらいます」
「そして勝てばか」
「貴方の願いは適います」
まさにだ、そうなるというのだ。
だが、だった。もう一つの結果になればだった。
「しかし敗れれば」
「死ぬな」
「どちらかです」
ある意味において非常に単純明快だった、どちらかしかないのだから。
「それでは」
「答えは一つだ」
広瀬が偉ぶべきそれはだというのだ。
「勝つ、それだけだ」
「そうですね、御願いします」
「今夜また会おう」
「楽しみにしています」
「俺が戦いを降りれば残りは十一人だな」
「そうなります」
「確実に減っていくか、剣士は」
「いいことに」
まさにだ、そうなっていくというのだ。
「いい流れです」
「そうだな、剣士の殆どは本音では戦いを求めてはいない」
確かに加藤という例外はいる、だがそれでもだった。
「誰かを倒さないで済むのならそれに越したことはない」
「有り難いことに」
このこともだ、聡美達にとってはだった。
都合のいいことだというのだ、それでまた言ったのだった。
「一人ずつ確実に」
「剣士を減らしていってか」
「戦いを終わらせます、必ず」
「そちらも頑張ることだな。応援はしないがな」
「応援はですか」
「俺はそこまで人はよくはない」
それでだというのだ。
「あの娘と一緒になれればそれでいいからな」
「だからだというのですか」
「応援はしない」
またこう言った広瀬だった。
「ただ批判もしないし軽蔑もしない」
「どちらでもないですか」
「また言うがあの娘と一緒になれれば」
由乃とだ、共にいられればそれでいいというのだ。
「他の剣士の連中にもそうだ」
「貴方が願いを適えられれば」
「基本他の奴がどうなろうといい」
関心、それはないというのだ。
「そう考えている」
「そうですか」
「ではだ」
ここまで話してだ、そしてだった。
広瀬はふと左手の時計を見た、そのうえで聡美に告げた。
「そろそろ時間だ、馬を厩に戻す」
「そしてですね」
「講義に出る、今夜また会おう」
「はい、また今夜に」
聡美はその広瀬に微笑んで応えた、そしてその夜に。
広瀬の携帯に連絡が入った、それに出ると。
聡美からだった、聡美はこう言って来た。
「あの、場所ですが」
「何処だ?」
「大学の森です」
そこだというのだ。
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