久遠の神話

「力は授けてもらいます」
「神の力か」
「はい、ですから」
　広瀬に対して言う。
「ご安心下さい」
「ならいいがな。ではだ」
「お話に乗って頂けますか」
「俺もあの先生と同じだ」
　どう同じかもだ、広瀬は聡美に話した。
「本当は戦いは好きじゃない」
「そうですね」
「誰かを傷付けることは好きじゃない」
　彼にしてもなのだ、不要な暴力は好まないのだ。
「暴力は何を生み出すか」
「何も、ですね」
「俺は乗馬や牧場は好きだ。動物はな」
　そうした存在はだというのだ。
「しかしヤクザやゴロツキは嫌いだ」
「暴力を振るう人はですか」
「ああした連中は軽い、そして小さい」
「その程度の者達だというのですね」
「俺はそんな連中にはなりたくない」
　遠くを見てだ、そのうえでの言葉だった。
「そうでないとあの娘とつり合えない」
「それ故に」
「俺は暴力は嫌いだ」
　それはだというのだ。
「軽く小さいものはな」
「では戦わずにですね」
「それで済めばいい」
　充分にだというのだ、こうした話をしてだった。
　広瀬はあらためてだ、今も自分の横にいる聡美にこう告げた。
「その話受けた、戦いから降りてだ」
「願いを適えられますか」
「順番が逆か、願いを適えることを決めてだ」
「戦いを降りられるのですね」
「そうする、ではな」
「それを降りる条件ですね」
「どうすればいい、何もしないで願いは適えられないな」
　やはり聡美を見ない、見ているものは一つだけだった。
　それを見ながらだ、彼は言った。
「それは何だ」
「最後にもう一回だけ戦ってもらい」
　そしてだというのだ。
「願いを適えてくれるものを手に入れてもらいます」
「そうしてか」
「それでいいでしょうか」
　聡美も広瀬を見ない、彼女も彼女が見ているものを見ながら話した。
「最後にもう一回だけ」
「それで願いが適うのなら」
　それならばだった、広瀬に異論はなかった。
「喜んでな」
「ではまた」
　聡美はここまで話してそのうえで広瀬に別れを告げた。そうしてだった。
　広瀬は乗馬部の厩舎に向かった、そこでは後輩達がいて彼等が馬の世話していた。その彼等が広瀬の顔を見てこう言って来た。
「ああ、さっき由乃さんが来ておられましたよ」
「ここに」
「そうか」
「何か先輩を探しておられましたけれど」
　後輩達はこう彼に話す。
「もうここに来てるのかって」
「お話があるとかね」
「話か、わかった」
　それを聞いてだ、広瀬はすぐに自分の携帯を取り出した。そして相手に電話をかけると。