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星屑のステージ

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第二章


第二章

 俺とあの娘が会ったのは何時だったか。高校の時だったのは覚えている。
 その時はまだ俺はアマチュアだった。ステージのある店でいつも歌っていた。
 先輩達が高校を卒業して仲間がいなくなって寂しい時にリーダーが声をかけてくれた。一緒にバンドをやらないかと。
 丁度そいつも先輩達が卒業して仲間がいなかった。それで俺に声をかけてきたってわけだ。
「ああ、いいぜ」
 俺はそれに応えた。そして弟と同じ学校の後輩と幼馴染みも誘った。ついでに俺達みたいに一人になっていた奴を一人と他のバンドからもう一人声をかけてた。これで七人になってはじめた。
 俺達は自分で言うのも何だが人気があった。街じゃ忽ち一番になった。ステージが楽しくて仕方がなかった。そんな時に彼女と出会ったのを覚えている。
「あの」
 彼女の方から俺におずおずと声をかけてきた。丁度店を出たところでだ。
「あん!?」
 俺はその声に顔を向けた。そこにいたのはやけに背の小さいあの娘だった。
「何、あんた」
 俺は彼女に声をかけた。
「サインや贈り物ならノープロブレムだぜ」
「そうそう、できれば食べ物がいいな」
 ヴォーカルをやっている幼馴染みが後ろから言ってきた。高校生なのにもう髭を生やしていた。
「サンドイッチとかな」
「御前せこいな、おい」
 それを聞いたリーダーが笑う。
「他のがいいだろうが」
「じゃあ何があるんだよ」
「フライドチキンとかよ」
「大して変わらねえじゃねえか」
 これは俺も同じことを思った。
「せこいな、おい」
「悪いかよ、フライドチキンで」
「まあいいけれどな。それでどうしたの、君」
「はい」
 また俺に顔を向けてきた。
「お渡ししたいものがあって」
「プレゼント!?」
「あの、それは」
「何なんだよ、一体」
 何か話が読めなくなっていた。贈り物らしいので悪い気はしなかったが。
「これです」
 彼女はそう言うと俺の前にそれを出してきた。
「これは」
「お願いします。受け取って下さい」
「あ、ああ」
 戸惑いながらもそれに答えた。
「それじゃあ」
「はい。それで」
「それで?」
「また後で」
 そこまで言うと慌てて俺の前から姿を消した。何か最後まで話が読めなかった。
「何なんだろ」
「意外と不幸の手紙だったりしてな」
 その一人になってたところを誘った奴、今はベースやってるのが俺に声をかけてきた。
「怖いぜ、それ」
「そんなのだったら別に驚かねえよ」
 不幸の手紙なんて信じちゃいない。そんなので不幸になってたら命が幾つあっても足りないからだ。
「まあ後でな」
 俺は言った。
「後で開けてみるよ。それじゃあな」
「ああ」
「どっかで打ち上げするか」
「そうだな。何処行くよ」
「俺の家なんてどうだ」
 俺はここで言った。
「酒もあるしよ。一杯やりながら」
「ああいいな」
「それじゃあ御前の家でな」
「よし。おい」
 弟に声をかけた。
「ありったけ出すぞ。いいな」
「この前飲んだばかりでかよ」
「構わねえよ。あっても親父が飲むか俺達が飲むかだろ」
「まあね」
 俺も弟も親父も大酒飲みだ。どうもそういう家系らしい。煙草は小学生でやったし酒も中学生からやっていた。そのせいか俺の背は伸びなかった。今じゃ弟より小さい。チビだとは言われ慣れている。
「それじゃあそこでな」
「よし、明日は休みだしな」
 だからだった。とことんまで飲むのは。
「とことんまで飲むか」
「じゃあ行こうぜ」
「よし」
「つまみは銘々で買って来いよ」
「店開いてねえぞ、おい」
 この時代コンビニなんてものはなかった。
「じゃあどうするよ」
「俺一旦家に戻るよ」
 後輩でヴォーカルやっているのがこう言ってきた。
「それで何か探してくるから」
「よし、じゃあ先行け」
「何でもいいから持って来い。いいな」
「わかったよ。それじゃあ」
「ああ」
 これでつまみも確保した。そして俺達はその日は朝まで七人でしこたま飲んだ。
 朝になった。俺は酔い潰れた面々の中で昨日あの娘からもらった手紙を開いた。
「何なんだろな」
 読んでみると何か妙な感じだった。
「!?」
 書いてある内容が何か見慣れたものじゃなかったのだ。それは。
 何とラブレターだった。貰ったのははじめてだった。
 
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