虹の軌跡
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第三十話
教室には、放課後の影響もあり、数人の生徒が雑談しているだけだった
目的の人物を見つけた啓一は並んだ机の間を縫うように進んでいく
啓一
「はじめ、ひさしぶり」
机で雑誌を読んでいる男子生徒の前に立つと、啓一は声を掛けた
はじめ
「ん?…おぉ潮見じゃん、ひさしぶり。そっかお前も峰応に入ったのか」
はじめと呼ばれた男子は雑誌を閉じて立ち上がった
はじめ
「東館のクラス行かないからなぁ。…あ、お前、この間のメガネ」
矢部
「矢部でやんす。オイラも名前間違えたとは言え、覚えておいてほしいでやんす」
はじめ
「つー事は、潮見も野球同好会のメンバーか。差し詰め、皆で説得か?」
啓一
「ビンゴ」
昔からの知り合いもあってか、隠すことはしない啓一
はじめ
「うーん、前に断ったんだが…これじゃあ何で野球部無い高校選んだのかわかんねぇよ」
啓一
「野球、やりたくないのか?」
盛大にため息を吐くはじめに尋ねる
はじめ
「いや、そんなことは無いさ。ただ、俺バイトしてるから、あまり参加出来ないんだ」
あおい
「え?バイトしてるんだ?スゴいね」
はじめ
「新聞配達とたこ焼き屋な。新聞配達は毎朝やってるから朝練とか無理だぞ」
何でも、病気で入院している母親の治療費を稼ぐためだそうだ
啓一
「まだ部になってないしな、朝練なんて無いさ。しかし、たこ焼き屋かぁ。…旨いの?」
はじめ
「まだ下手くそだよ。店長なんて神だぜ。あんな旨いたこ焼き食ったこと…ん?」
ふと、はじめの目があおいの隣の虹太郎を捉えた
そして
はじめ
「……シキシマ?お前までいたのかよ…」
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