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久遠の神話

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第七十一話 全ての光でその七

「戦いも降りられるよ」
「そうよね」
  樹里はまた落ち着いた、そうして。
 闘いを見守った、高代は接近戦になってからだった。
 その剣でだ、上から来たその爪を弾いた。
 右の前足のそれを弾いた、そして。
 返す刀でケルベロスの胸を切り裂いた、聡美はそれを見て言った。
「ケルベロスは回復力もかなりだったわね」
「はい」
 その通りだとだ、豊香が答えた。
「ケルベロスはヒュドラの兄弟です」
 テューポーンとエキドナの間に生まれている、そうした意味でギリシア神話の中では由緒正しい怪物なのである。
「ですから」
「そうね、じゃあ」
「首を切り落としてもです」
 そうしてもだというのだ。
「その首はすぐに生えてきます」
「犬の首も蛇の首もよね」
「はい、そうです」
 その通りだというのだ。
「切り落としてもすぐに生えます」
「二つになるの?」
「そこまではならないですが」
 ヒュドラは二つになる、それはないというのだ。
「一つだけです、生えるのは」
「そう、首が生えるから」
 生える、だからだというのだ。
「首を攻めても意味はないわ」
「首は、ですね」
「かといって手足もね」
 そこを攻めてもだというのだ。
「同じよ」
「はい、また生えます」
「そうね、けれど」
 それでもだというのだ、それだけの生命力があってもだった。
「この世に倒せない存在はないわ」
「例えケルベロスでも」
「ええ、倒し方はあるわ」
「首が駄目でもですね」
 それでもだというのだ。
「倒し方があるから」
「では」
 こうした話をしてだ、そうして。
 高代は魔犬の胸を攻めていた、その胸にまずは斬撃を浴びせ。
 そのうえで左の胸を突いた、ケルベロスは右の前足で高代の頭を狙っていたがそれが仇になってしまった。
 身体を起こしていたので高代から胸が露わになっていた、そしてその胸にだったのだ。
 高代は剣を繰り出した、その突きを。
 光を、渾身のそれを込めた剣が怪物の胸を貫いた、それを受けてだった。
 さしもの怪物も動きを止めた、だが。
 上城は勝敗が明らかになった様なその状況を見てもだ、にこりともせずに言った。
「まだだよ」
「えっ、けれど」
「心臓を突き刺したっていうんだね」
「ええ、心臓よ」
 そこをだとだ、樹里は高代がケルベロスの心臓をその剣で貫いたのを見ながら上城に対して戸井嘉永sた。
「そこを貫いたから」
「そうだね、けれどね」
「それでもなの」
「心臓を貫いたよ、それでもなんだ」
「まさかあの怪物には心臓が幾つも」
「違うよ、その可能性もあったけれど」 
 だがそれでもだというのだ。
「今の怪物の動きは完全に止まってるよ、それを見るとね」
「あの怪物の心臓は一つなの」
「そう、一つだよ」
 生きるうえで脳と同じく最も重要なその部分はだというのだ。 
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