戦国異伝
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第百四十九話 森の奮戦その八
「もうよい、降れ」
「命は粗末にするな」
「御主達はそれぞれの村に降れ」
「武器は捨てよ」
見れば灰色の服の者達は皆粗末な武器しか持っていない、鎌だの鍬だの竹槍だのだ。そうしたものしか持っていない、旗も急ごしらえのものだ。
そうしたものをだ、すぐにだった。
捨てていく、長政もその彼等についてはこう言った。
「武器を捨てて逃げる者達は追うな」
「はい、わかりました」
「そうした者達はですな」
「そのまま村に帰してやるのじゃ」
逃げるに任せろというのだ。
「わかったな」
「ではあくまで戦う者だけを」
「そうした者達のみをですな」
「うむ、討て」
そうした者達だけをだというのだ。
「それだけでよいわ」
「では今より」
「あくまで歯向かう者を」
家臣達も応える、そしてだった。
彼等は向かって来る者達だけを相手にして戦った、見れば武器がいいのはその者達だけであった、しかし彼等も既に二度の突破で陣形が崩れていた。
長政はその陣が崩れた場所を攻めさせる、そうして言うのだった。
「よいか、歯向かう者達の中でまずは陣の崩れたところからじゃ」
「攻めてですな」
「数を減らしていきますか」
「そうせよ」
こう命じるのだった。そして自らだった。
その陣が崩れた場所に向かいだ、そうして。
槍を振るう、そこに兵達も進み。
浅井の者達は多勢の門徒達と戦っていく、近寄っては鉄砲も弓矢も満足に使えないことも彼等にとってよかった。
門徒達は逃げる者は増えそして向かって来る者も倒れていく、だがここで。
長政は気付いた、その気付いたことはというと。
「いかんな」
「!?いかんとは」
「といいますと」
「時間がかかるわ」
こう言ったのである。
「このままではな」
「時間がですか」
「それが」
「うむ、この者達はしぶとい」
二度も突破しそのうえでさらに攻めながらも戦っている、逃げ去っていった者達も多いがそれでもなのである。
まだ戦う者が多い、そしてその者達がなのだ。
「嫌に粘りおる」
「これが本願寺ですが」
「死を恐れぬとのことです」
彼等はこう返した。
「そうではないのですか?」
「いや、それはそうじゃが」
長政はまだ彼等の素性に気付いてはいない、しかしそれでも今はこう言うのだった。
「ここは七千の兵をおきじゃ」
そしてだというのだ。
「三千で宇佐山城に行くぞ」
「その三千を先に行かせるのですか」
「そうされますか」
「そうじゃ」
長政ははっきりと答えた。
「ではな」
「ではその三千の兵ですが」
「それを率いるのは」
「わしじゃ」
他ならぬだ、長政自身だというのだ。
「わしが行く」
「殿がですか」
「御自ら」
「そうじゃ、行く」
そして森を助けに行くというのだ。
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