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フェアリーテイルの終わり方

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六幕 張子のトリコロジー
  6幕

 
前書き
 フキゲン な 大精霊 

 
 ユリウスはというと、ルルの前にしゃがんで。

「ルル、美味しそうなの食べてるな」
「ミラが作ってくれたんだよ。ちょーおいしー!」

 フェイもこくこくと肯いた。

「ミラは料理スキなのに、村の人はミラの作った料理食べてくれないんだって」

 家の玄関付近にいたメンバーが驚きの声を上げた。

「あのミラが料理!?」
「作るより食べるの専門のミラが…」
「意外すぎます」
「分史世界ってこえーな」
「まったくです」
「みんなミラにシツレーだよ!!」
「――あなたたち、なに勝手に人の家に上がり込んでるの!」

 エルが怒った声に気づいてか、奥にいた噂のご当人が出てきた。律儀にナンらしいものが入った籠を持って。

「ミラ! スープおいしかったよ。ごちそーさまっ」
「ゴチソウサマ」

 奥にいる間に何かあったのか、ミラは頬を赤くしてそっぽを向いてしまった。

「こんなので喜ぶなんて、普段よっぽどろくなもの食べてないのね」
「そんなことないもん!」
「そうだよ。よく分かったね」

 姉妹で答えが正反対になった。

「……何言ってるの、フェイ。フェイだって一緒にパパのごはん食べてたでしょ」
「うん。オイシかったよ。でも、味しなかった」

 エルが意味を尋ねてきたが、フェイは黙ることで回答を拒否した。

(……パパのゴハンは、全部お姉ちゃんのためだけに作られてた。同じもの食べてても、フェイのはただの残飯(アマリモノ)

 思考に没入しかけたところで、奥の戸が開き、フェイは我に帰って顔を上げた。入ってきたのは。

(このヒト…ううん、精霊。大精霊だ。クロノスもだけど、この精霊、とっさに人間と思いそうなくらい人間態がニンゲンらしい)

「お、お帰りなさい、姉さ……」
「臭い」

 開口一番、水色の大精霊は険しい声を上げた。

「お前、また人間の食べ物を作ったのね」
「ごめんなさいっ。この子たち、お腹空かせてたから、」

 それ以上の抗弁はなかった。何故なら水色の精霊が攻撃術を放ってミラを吹き飛ばしたからだ。
 ミラは転がり、籠の中身が散乱した。

「臭いと私が動けないって知ってるでしょ!?」

 傷こそないようだが、ミラは歯を食い縛って涙を堪えている。

(おんなじだ。この人、パパにぶたれた時のフェイと同じガマンしてる)

 エルが急いでミラに駆け寄り、ミラを支え起こそうとする。だが子供の手では力不足。ルドガーが行って、エルと手を重ねるようにミラを起こし――

「「あ!」」

 ほんの一瞬だけ、ルドガーの体が黒と山吹の鎧を纏い、消えた。

「なに……これ」
「どうしたの……?」

 まるでルドガーとエルが骸殻を発動させるのを待っていたように、水色の精霊の胸から黒煙が噴き出した。

「! 姉さん! それは…」

 ミラが慌てて立ち上がったが、それ以上を言う前に、水色の精霊はミラの頬を平手で打った。

「訳の分からないことを……あそこへ行く時間よ。さっさとなさい」
「は、い……」

 水色の精霊が裏口から出て行った。ミラがエルとルドガーの手をほどく。

「もう用はないでしょ。帰るまでには出て行ってて」

 ミラは一切こちらを見ようとせず、自身も裏口から外へ出て行った。 
 

 
後書き
 連投します。続きます。 
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