鉄槌と清風
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
41部分:40:陸士108部隊
40:陸士108部隊
ガジェットドローンとの遭遇から暫く、その対処方法の検討や、地上で対応できる魔道師がどれだけいるか等の調査を暫く手伝った。
結果、今の段階で地上の魔導師では相手をするのは非常に危険だと判明、その実態を調べるために、はやての口利きで陸士108部隊に紹介してもらい、何人かの魔導師と模擬戦をさせてもらうことになった。
『凪』は、AMF効果に近い性質を持っているため、丁度良い実験台になるらしい、またチラッと聞いた話し話しでは、その部隊には近代ベルカ式、しかも格闘技系の魔導師がいるらしいのだ。
で、現在その隊長室前、ノックをすると男性の声で
「開いてるぜ、はいんな」
と声、素直に入り、中に居た体格のしっかりした白髪の男性に敬礼しつつ、挨拶。
「本局航空隊第1321部隊所属、八坂良彦三等空尉です」
「おう、話は八神の嬢ちゃんから聞いてる、ゲンヤ・ナカジマ三等陸佐だ、よろしくな三尉」
「はい、よろしくお願いします、ナカジマ三佐」
「あんまかてー話し方じゃなくて構わねーよ、気楽にしてくれ、それで今日の用件なんだが」
「じゃぁ、お言葉に甘えて、地上の一般的な隊員の錬度の調査、ですね、空からのこんな依頼中々受けてくれなくて」
「それで嬢ちゃんから、うちにってことかい、ま、良いだろう隊員にも良い経験になるだろう、ただ基本的に陸戦魔導師しかいねーぜ?」
「はい、此方も今回は空は飛ばないで事に当たるんで、問題ないかと」
「わかった、それじゃ…あぁ、丁度良いとこに」
話しているとお茶を持ってきたのか一人の女性、紫の長い髪をした陸士。
「おいギンガ、こっちの八坂三尉を訓練場に案内してくれ、後さっき行った準備は出来てるか?」
「はい、部隊長、準備は完了しています…はじめまして、八坂三尉、ギンガ・ナカジマニ等陸士です」
「よろしく、八坂良彦三等空尉です」
立ち上がってもかなりギンガの方が背が高いが、まあ、お互いに握手…お互い何かに気付いたような顔をして、直ぐに離す。
「じゃ、案内よろしく、ギンガニ等陸士」
「はい、あの…ギンガでいいですよ、八坂三尉の方が年上ですよね、確か」
「ギンガは幾つだ?」
「えと、14歳ですけど」
「そう、か…確かに俺の方が上だな、一応16になるし」
「はぁ!、三尉おまえさん、そのなりで16なのか?」
二人の会話に驚くゲンヤ、隊員証を提示し確認を取らせる良彦。
「たしかに、16だなすまん、一寸驚いたつか、ギンガは何で知ってんだ?」
「え、何度か噂で、”青と赤の子鬼”の事きいて、はやてさんに聞いたんだけど」
「また、その名前か…はぁ」
ゲンヤの問いにギンガが答え、良彦は苦笑。
「ま、いいやな、さっさと案内してやってくれ」
「はい、こちらへどうぞ、八坂三尉」
「あいよ、俺も名前でいいぞ、そっちのがなれてるから」
「はい、では、良彦さん」
案内され、たどり着くのは訓練場、既に数人の隊員がセットアップして、準備している。
そこへギンガの案内ではいれば、視線が集まる、小さく会話している隊員もいるが、そこ等辺は無視、多分身長のこととか噂のことだろう。
「今回無理な願いを聞いてもらって皆さんに感謝しています、八坂良彦三等空尉です、時間も限られてますし、早速開始しましょう」
良彦もセットアップし、何時もの騎士甲冑を纏う。
相手のほうで決めて合ったのであろう順番に、隊員構えに出て、挨拶、最後はギンガだったのでギンガが此処のトップクラスの魔導師なのだろう。
始まった模擬戦…射撃魔法は『凪』で打ち消され、砲撃魔法もそれほど高威力のものは無く、『流し』でけずられ、『捌き』で避けられる。
対AMFの訓練もしておらず、魔導師レベルの平均が低い地上部隊はガジェット相手にはやはりきついと判断する、早急に対AMFの訓練だけでもした方が良いだろうと頭にメモ。
しばらくして、ギンガが、前に出る…白のアンダーに胸元と脛はハードシェルの装甲、指貫のグローブに黒のブーツ、紫と黒のジャケットを纏っている。
前に出たギンガが、足にローラーブレードの様なものをつけ、左手にはごつい籠手、手首の辺りにリボルバー型のカートリッジシステムが見て取れる。
「ほう、やっぱギンガが近代ベルカ式の魔導師だったか」
「聞いてたんですか?」
「はやてが、居るって教えてくれたのと先の握手で、な」
「なるほど、では改めて…ギンガ・ナカジマ、流派はシューティングアーツ、デバイスはこのリボルバーナックルです」
「あぁ、清風の騎士八坂良彦とゼピュロス、流派は八坂流合気術だ、よろしく頼む」
お互いに構える、良彦は何時もの左手を顔の前、右手は腰に…ギンガは少し前傾姿勢で、左拳を顔の横に構え、右拳は肩の辺り。
一瞬の静寂の後…
「行きます!」
「来い!」
二人の声が響き、ギンガが地面を疾走…勢いのまま、左拳、リボルバーナックルを振りぬく。
それに対し、『凪』で一瞬動きを遅め、左拳で『弾き』…反転するのを利用し、身体を沈め、回転の足払い。
それを避け軽くジャンプしたギンガに、そのまま回転し、上段回し蹴り…だが。
「ウィングロード!」
ギンガの声と共に青紫の道が彼女の足元に現れ、そこを疾走してかわして行く。
「なるほど、面白い魔法だな、飛べなくても駆け抜けられるのか、空を」
感嘆と共にそれを見送りつつ、構えなおす。
「まだまだ、行きますよ!」
ぐるんっとウィングロードが反転するように伸び、良彦に向かってくる…交差の瞬間に、肩口への蹴り。
それを左拳で『弾き』、一度距離を取り直す…すぅっと細めた瞳が楽しそうに見える。
再び反転し、正に突撃してくるギンガに…
「でも、動きが直線的過ぎる…ゼピュロス」
『貫き』
だんっと地を蹴り、高速移動…体格差もあり、ギンガの懐へかんたんに飛び込む、引き絞っていた左手を掴んで、引き下ろし…ウィングロードを蹴り上げれば。
ギンガの身体がくるっと半回転し、ウィングロードへ叩きつけられる。
その直後、良彦の右手がギンガの顔の前に広げられ
「ほい、これで一本だな」
「…はい、でも今一体?」
良く判ってない様子のギンガを立たせ、地面に降りる。
「ギンガはいま、自分の突進力で投げられたんだよ」
「突進力で…?」
「ウィングロードを走る速度は中々だが、合気には相性が悪いんだ、相手の力を利用し投げたり、体勢を崩したりできるから」
「なるほど、でもそれだと私は勝ち目がなさそうですけど」
「いや、そうでもないぞ、攻撃が真っ直ぐ過ぎるのが一番の問題だから、フェイントなんかで上手くこっちを動かしたりすれば、何とかなる」
「そうでしょうか?」
「実際、ベルカ式の魔導師に何度も負けてるしな、後は高威力砲撃なんかできるなら、それもありだ」
「砲撃は苦手ですけど…どんな相手なんですか、良彦さんに勝つのって」
「そうだな…戦闘データ渡して良いか相手に聞いて許可出たらギンガに送ってやるよ、参考になると思うぞ」
「はい、お願いします」
そんな会話をして、その日の実験は終了、後日だがヴィータ、シグナム、シャッハの許可を取り、データをギンガに送っておいた。
チラッと見たギンガの感想は、3人とも普通じゃない、だったが。
数日後の八神家、珍しく全員揃ってる所へ、お邪魔している良彦。
先日の108部隊での模擬戦の話をはやてにしているのだ。
「つーわけで、地上部隊でも対AMF訓練はした方がいいと思うぞ」
「せやな、でも108以外はあんまつてもないし」
「なら、ゲンヤ三佐から他部隊に伝えてもらえばいいじゃねーか」
「んー、まぁとりあえずはそうしとこうか」
話は一旦それで終了、夕食になる。
「ほな、皆…いただきます」
「「「「「「「いただきます」」」」」」」
「ヴィータ、あれ取ってくれ」
「おう、ほれ…良彦それたのむ」
「ん、これか、ほいよ」
そんななか、あれやそれで意志疎通してる青と赤、サラダをとりわけ、醤油を渡したりしている。
その様子を見ながら
「あの二人、もう夫婦でいいんちゃうかな」
「部隊でもあんな感じだと聞いています」
「そうね、医務室でも噂は聞こえてくるわ」
「マスターは色々考えてる様子ですが」
「どんなことですか?」
「……良彦であれば、おかしな事ではないだろう」
はやて、シグナム、シャマル、アイン、ツヴァイ、ザフィーラがこそこそ話し。
なんだかんだで食事は終わる。
「あぁ、そうだ…昨日地球いってきて、土産貰ってきたんだ、皆食うか?」
持ってきていた箱…小型の保冷庫…から、翠屋のシューアイスを取り出す。
それを見て、皆はすばやく頷き、あっという間に箱から無くなるシューアイス。
「ほれ、ヴィータ」
「ん…バニラじゃねーか、入ってないから無いのかと思ってた」
「直ぐなくなりそうだしな、先とっといた」
「へ、良彦はせこいな」
「んじゃ、いらねーのか?」
「いるにきまってんだろ、あんがとな」
受け取り、嬉しそうにむぐむぐと食べる、良彦もバニラを一個食べて苦笑。
その日は結局八神家に止まり、ザフィーラと同じ部屋で寝ることになった、夜遅くまで二人は何か話していたらしいが、その結論が聞けるのはもう少し先だった。
************************************************
というわけで、ギンガ登場です、あの動きがメインだと合気には有利だなぁと思いました。
ともあれこれで、ゲンヤとギンガとも知り合いに、顔が無駄に広くなっている気がします。
次回は、教会側の話しにしようと思っています。
ページ上へ戻る