転生物語―魂の力―
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DS編
地下墓地~巨人墓場
次なる標的は巨人墓場の奥地にいるという墓王ニト。初めて聞いたときにニート? と思ってしまったのは秘密だ。
巨人墓場へ行くには地下墓地を抜けねばならず、そこにいる骸骨どもは神聖の属性を有する武器で倒さねば復活してしまう。
そのため、今回ばかりはこの世界で手に入れた武器を使わざるを得ない。そのため、俺は複数持っていた蛇人の大剣の内の一本を神聖属性へと派生させ使っている。
「それにしても、入り組んでるな」
敵の強さはそれほどでもない。ただし、道が複雑に入り組んでいるのだ。基本的にダンジョンの類はすみずみまで回ってアイテムを回収するためこうも入り組んでいるとなかなかに時間がかかる。
とはいえそれだけであり、せいぜい骨の鍛冶屋バモスにであったこと以外は特筆するべきこともなく最下層へと到達した。
最下層の先には巨大な棺のようなものがあり、蓋に相当する部分がわずかにずれることで中に入れるようになっていた。
「よっと」
一応剣を抜いた状態で柩の中へと身を躍らせる。出迎えたのは大量の骨と、怪しげな儀式を行う三つの面をつけた敵。
ゆっくりと振り返りこちらを見据えた三人羽織はこちらの敵意を察知するとすぐさま魔術を放ってきた。
現在装備している盾は魔法に対するカット率が高い紋章の盾だが、それでも正面から受けるのは得策ではない。
俺は右前方へと回避行動をとり、一気に距離を詰める。三人羽織へとたどり着くまでの数秒の間に武器を黒騎士の大剣へと換装。前進の勢いのままにその巨大な等身を振り下ろす。
――オ、オオォォォ!
体を深く切り裂かれ痛みに呻く三人羽織。だが、そこへ容赦なく追撃を仕掛ける。
――ソウルの槍!
高い理力を持つ者のみが放つことを許される、ビックハットことローガンの編み出しし魔術。その威力は、グウィン王の雷にすらたとえられる凄まじさを誇る。
剣と魔術、その二つの攻撃をもろに受けた三人羽織は光の粒となりその場から消滅した。
――――――――
三人羽織を倒した柩から出てみると、そこには闇が広がっていた。所々に七色石が落とされているようだが、せいぜいそこには地面があるという目印程度で、灯と言えるほどのものではない。
「ここでこいつの出番か」
地下墓地を進む中、屍術師と呼ばれる敵がドロップした頭蓋ランタンを取り出す。正直、頭蓋骨そのままの形をしているこれを使うのは気が引けるのだが背に腹は代えられない。
巨大な骸骨剣士を退け、下へ下へと降りていく。途中、斜めに置かれた棺桶の蓋をスノーボードの要領で滑り降りたりしながら降りていきようやく篝火を見つけ一休みする。
実は篝火の近くに槍と大盾を持った坊主頭の男がいたのだが華麗にスルーである。
休憩を終えた後も男をスルーし、とりあえず辺りを探索する。発見したのは巨大な棺桶で、中は真っ暗だった。
しかし、その暗闇の中でも薄ぼんやりと光る何かがいくつか存在している。巨大骸骨剣士の目だ。恐らくここに入ってくるものを討つべく待ち構えているのだろう。
「ま、安全な方法で行くか」
敵の注意を引き寄せる効果を持つ音送りの魔術を使い敵を一箇所に集める。そうした後は貫通効果のあるソウルの槍を放ち一網打尽だ。
敵を殲滅した後、棺桶の中を探索していると神聖の武器を更に強化することができるようになる種火を発見した。アンドレイに渡してやれば喜ぶだろう。
嬉しい成果があったことに笑みを浮かべながら俺は篝火へと戻り、転送でアンドレイの元へと向かった。
「さて、いい加減話してみるか」
更に強化された神聖の蛇人大剣を手に、坊主頭の男へと歩み寄る。まだ一言も話していないというのに、なぜだろうか・・・・・・なんというか、こう胡散臭いと感じるのだこの男。
しかし、何か有益な情報を持っていないとも限らないので仕方なく話しかける。
「どうもはじめまして、俺はエイトといいます」
「ああ、ようやく話しかけてきたか。俺はパッチってんだ」
話してみて更に胡散臭さが増したような気がする。
「所でアンタ、一つ聞きたいんだが」
「何ですか?」
「こんな場所に用があるなんて、アンタは聖職者かなんかか?」
聖職者。この言葉を口にした際、パッチの瞳に濁りが生じたのを見てとった。これでも王として過ごしたことのある身だ。それくらいは見透かせる。
「いえ、違いますけど」
「そうかいそいつは良かった」
濁りは消えた。だが胡散臭さは消えてはいない。恐らく何かよからぬことでも企んでいるのだろう。生憎と、おとなしく引っかかってやる必要はない。
とりあえず、奴に唆されたふりをしてお宝があるという崖へと歩を進め、下を覗き込む。
当然、背後からゆっくりと忍び寄るパッチから注意をそらすことはない。
「ハッ! 馬鹿が!」
真後ろまで放ったパッチが繰り出したのは背中目掛けた前蹴り。崖下を覗き込んでいる際にこんなことをされては真っ逆さまに落ちていくしかないだろう。
だが、俺はすぐさま体を反転させパッチの足を掴み取る。
「なっ!?」
「バカはお前だ」
そのまま足を強く握り締め、体を再び反転させる勢いに任せてパッチを崖へと放り投げる!
「一名様ごあんなーい」
さて、落としたのはいいがそのっま放っておくのもなんだし俺も降りるとするか。
――――――――
あの後、俺はパッチに深く深く反省させた後レアという名の聖女を助けた。話を聞くに、彼女と彼女の護衛二人もパッチによってここへ落とされ、その護衛二人は既に亡者と化してしまったらしい。
それを聞いた俺がパッチに更に深く反省させたのは言うまでもない。
俺はレアの頼みを聞き、亡者と化した護衛ニコとヴィンスを倒し彼女から彼らの形見とも言える奇跡、生命湧きを受け取った。
その後、レアとパッチを篝火まで連れて行きくれぐれも変な真似はしないようにとパッチに言明し、巨人墓場の奥へと歩を進めている。
強敵だったのは四足歩行をしている巨大骸骨だ。剣士を遥かに上回る攻撃に、危うく盾を弾かれてしまうところだった。
「明るい場所に出たな」
これだけ明るければ、もうランタンは必要ないだろう。
崖下に広がるのは・・・・・・灰の湖、だろうか。距離があり過ぎてはっきりとはしないが何とも幻想的な光景だ。
この辺りに敵の気配はない。短い間だが、この光景を眺めることで心に一時の休息を得ることができた。
恐らく進路であろう横穴。そこに足を踏み入れる前に今一度湖を眺め、その光景を心にしっかりと記録し歩を進めた。
横穴に入ってすぐ、結晶トカゲがおりこれを撃破し武器の強化素材を入手。そこに侵入してきた黒いファントム聖騎士リロイを撃破しその武器を手に入れた。
さらに奥へと進む俺を出迎えたのはたくさんの三人羽織と、小さな骸骨どもだった。
「ボスだった敵がザコ敵で再登場ってのはよくある展開だが、再登場が早すぎやしないか?」
三人羽織の早すぎる再登場にため息をつきながらも剣を抜く。装備は一発一発の威力を重視して黒騎士の大剣だ。見た感じでは地下墓地で戦った個体よりも弱そうなため手こずることなく殲滅できるだろう。
その予想は外れることなく三人羽織を殲滅した。どうやらこいつらは白楔石の塊をドロップするようなのでそれ頭の片隅にとどめつつ先へと進む。
「ここか?」
穴、というのが適切だろう。どうやらここに飛び込まなければならないようだ。
また骸骨どもが出てこないとも限らないため武器を神聖の蛇人大剣へと変更してから飛び込む。すると、まるで眠りから覚めるかのようににしてソウルが高まっていくのを感じる。
「さて、死者狩りだ!」
敵はゆっくりとコチラへ近づいてきているが、わざわざ待ち受けている必要もない。こちらの行く手を遮るかのように現れる骸骨どもをひと振りで粉砕し、ニトのもとへと駆ける。しかし、突如足元から嫌な気配を感じその場を飛び退いた。
「遠隔攻撃か!」
先程までエイトがいたそこには、真っ赤な三日月上の刃が突き出ていた。もし避けていなければあの刃によって体を貫かれていただろう。
「それならこっちも!」
既にニトはこちらの視界に入っている。ならば問題ない。
――ギガデイン!
紫電が降り注ぎ、ニトの体を焼いていく。さすがは使い手の希少な雷系の呪文。かなりのダメージを与えたようだ。ここは一気に叩く!
神聖の蛇人大剣を両手で持ち、スタミナの限り斬撃を繰り出していく。幸い、ニトの動きは鈍重で、攻撃もおお振りばかり。たまに放たれる死の波動が少々厄介ではあったが、それだけだ。
そう時間もかけず、俺はニトを倒すことに成功し二つ目の王のソウルを手に入れた。
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