dark of exorcist ~穢れた聖職者~
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第5話「戦いへの決意」
アメリカ東部で発生した、動物の連続変死事件。
被害報告は既に甚大なものになっている。これが悪魔の仕業なら、早急に排除しなければならない。
上位の悪魔という可能性があるため、なおさら早くに倒す必要がある。
その調査のために、ヴァチカンから5人の悪魔狩りが派遣された。
ーーー【アメリカ東部・とあるカフェ】
アイリス、クリス、パトリックの3人は、疲れた様子で椅子に座っていた。
「あ~あ、ここまでなんの情報も掴めてねぇなぁ………」
天井をボンヤリと眺めながら、パトリックが愚痴をこぼす。
彼らがアメリカ東部で調査を始めてから、既に1週間経っている。
聞き込みや、目撃情報、現地調査。
出来る限りのことはしてきたものの、一向に良い情報が手に入らないのだ。
「……少し悔しいですね。ここまで調べて何も掴めないなんて……」
クリスが悔しそうな表情を浮かべて俯く。
「焦ったって仕方ないよ。ゆっくりコツコツ情報を集めよ?ね♪」
一人、笑顔を見せたアイリス。その言葉は確実に、クリスとパトリックの焦りを解した。
「そうだな……慌てたってしょうがない。まぁ、ゆるーく調査を進めるか」
「ハハハッ、アイさんらしい意見です」
焦りとイライラが募っていた空間が、一気に和やかになった。
他人から負の感情を忘れさせてしまうのが、アイリスの特徴だ。
「あぁ、いたいた。アイリスちゃん、クリス、パトリック」
「………………………………終わったぞ」
3人と別行動をとっていたアリシアとキリシマが、カフェの中に入って来た。
アリシアとキリシマの方でも、調査が終わったらしい。
「あっ、アリシアさん、キリシマ君、お疲れさま。さ、コーヒー飲も♪」
「……………悪いな」
「おう、戻ったか。で、どうだ?何かあったか?」
パトリックの質問に、アリシアが座ってコーヒーを飲みながら答えた。
「芳しくないわね。聞き込みも目撃情報も空振り。現地調査の方は………キリシマ、説明して」
「……………あぁ。現地調査で、妙な発見をした…………」
「妙な発見……ですか?」
「………動物の死体を見たんだが………外傷が全く無かった……」
「まるで………いきなり脈が止まったような………そんな死に方だった………」
キリシマの言葉に、4人の表情が一変した。
「魂の消失………いや、"吸収"か……」
パトリックの言葉を聞き、全員が同じ結論に至った。
「間違いない……相手は、上位の悪魔だ」
全ての悪魔は、ヴァチカンの「シェルター」に閉じ込められていた。
長年「シェルター」に閉じ込められていた悪魔にとって、必要になってくるのは"力"だ。
下位の悪魔は元々"力"がさほど無い。
強力な個体もいるが、それでも上位の悪魔と比べれば大したことはない。
下位の悪魔は少ない"力"を節約しながら戦うため、弱い個体が多い。
しかし、上位の悪魔にとって、"力"が無いのは死活問題だ。
"力"の無い上位の悪魔は、自分の存在すら維持出来ず、身体が即座に崩壊する。
そのため、上位の悪魔は他の生物から魂を吸収し、自分の"力"として蓄える。
魂を吸収したとなれば、標的となる上位の悪魔は相当"力"を取り戻したはずだった。
5人が恐れているのは、標的となる上位の悪魔が"力"を完全に取り戻すことだ。
「早い内に見つけ出して倒さないと………面倒なことになるわね」
「…………………潰す」
「あぁクソッ、上位か……」
3人の表情が一気に沈んだ。先ほどアイリスが作り出した和やかな空気はどこかに吹き飛んでしまった。
「……僕達のやるべきことは、変わらない。ですよね?アイさん」
クリスがアイリスに問いかけた。
アイリスはクリスに笑顔を向けた。
「うん」
「ねぇみんな」
「確かに大変なことがこれから起こるかも、だけど」
「それでも、手を貸してくれる?」
アイリスからの問いかけ。
その答えは、全員がもう決まっていた。
「僕はいつでもアイさんに付いていきます」
「まぁ、アイリスがそう決めたんだ。俺は従うぜ」
「私も。アイリスちゃんの決断だしね」
「…………………異議は無い」
上位の悪魔との遭遇は近い。
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