戦国異伝
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第百四十九話 森の奮戦その三
「わしもな」
「しかしです」
侍大将の一人がここで森に述べてきた。
「ここを守りきらなくては」
「わしが言った通りな」
「はい、どうしようもありませぬ」
幾ら敵が多く強くともだというのだ、それでだった。
森も城兵達もだ、鉄砲や弓矢を放ち城壁に近寄り攻めてくる門徒達を迎え撃つ、森は壁を登ってきた門徒の一人を槍で突き落としてから言った。
「よいか、ここはな」
「殿が来られるまで」
「何としても」
「何、凌げる」
こう確かな声で言うのである。
「この程度ならな」
「ですな、援軍が来るまでなら」
「充分に」
「だからじゃ」
まだ来る門徒達を突き落としつつまた言う。
「この程度の数、何ともないわ」
「そうですな、所詮十倍」
「それ位ならば」
城の中にいればだった、彼等も数日は戦える自信があった、
森に士気を鼓舞されつつ戦うのだった、それが今の彼等だった。
宇佐山城で激戦が行われている頃長政は一万の兵を率いて小谷城を発っていた、そのうえでその宇佐山城に向かっていた。
その彼等を指揮する中でだ、長政は言うのだった。
「よいか、このままな」
「はい、宇佐山城にですな」
「向かうのですな」
「そうじゃ、しかしじゃ」
その城に向かう途中にだというのだ。
「必ず来るぞ」
「一向一揆がですか」
「我等のところにも」
「うむ、近江にも一向宗は多い」
だから出て来るというのだ、彼等も。
「そそのことは覚悟しておくことじゃ」
「ですか、では」
「今にも」
「覚悟しておくのじゃ」
攻める、そうしてくるだというのだ。
「数もかなり多いであろうな」
「しかし殿」
家臣の一人がここで長政に言う。
「相手は門徒です」
「だからというのじゃな」
「確かに数は多いですが」
この家臣は安心しきった顔で長政に言うのだった。
「あの者達は馬も具足も持っておらず」
「武器もじゃな」
「鍬や竹槍といったものばかりです」
それに鎌だ、そうしたものしかないというのだ。
「数だけの者達です、我等は弓矢も鉄砲もあり槍も長いです」
「相手にならぬというのじゃな」
「そう思いますが」
「そうじゃな・・・・・・むっ」
ここでだ、長政の横に忍の者が出て来た。忍の者は長政の横に片膝をついてこう言ってきた。
「猿夜叉様、殿からの文です」
「義兄上からか」
「はい、一旦小谷城に向かったのですが」
それでもだというのだ。
「もう出陣されておられたとは」
「与三殿の危機じゃからな」
それを察して出陣したというのだ。
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