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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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3rd Episode:
高き破滅より来たる大罪
  Ep1再会

――新暦75年 5月4日 とある有人世界

次元世界を管理する“時空管理局”にとっては管理()となる世界、そのある一国で今、未曾有の災害が発生している。
しかしそれは自然による天災ではなく、その地に住む人間による人災でもない。それは、世界の意思である“界律”が遣わした、絶対なる抑止力(ちから)による神罰という名の災害だった。それらは人の姿をしておきながら、神の如き力を振るい、悪魔の如き行いを成す者たち。
白き者は、同じく白く輝く十字架を振るいて、この世界を侵略しに来た他世界の人間を薙ぎ払って蹂躙する。黒き者は、何もない宙より無数の武器を配置し、ソレらを侵略者の兵器へと撃ち出しては次々と破壊していく。

「大丈夫? ここは危ないから避難しなさい」

「あ、あり・・・がとう、ありがとう、白いお姉ちゃん!」

そんな中、白き者は侵略者の兵器によって傷つき倒れていた少女を保護。負傷している両脚に白き者が左手を翳しただけで怪我が一瞬にして癒され、少女はお礼を述べながら安全地帯へ走って行った。それを見ていた黒き者が「残りは貴様たちだけのようだな」と、仮面の内から侵略者たちへと再度視線を向ける。その向けられた目からの見えない視線に侵略者たちは慄いた。

「はぁはぁはぁ――うおおおおおおッ!!」

為す術もなくその生を奪われていく侵略者たちは、それでも必死に死の恐怖に抗おうと得物を取る。侵略者たちの攻撃は確かに白き者と黒き者に当たっているものの、しかし何一つとしてその存在に傷を与えていない。

「ば、化け物め・・・・この・・化け物めぇぇぇーーーーーッッ!!」

おそらく戦いを挑んでくる者たちの中で、最も実力が有るであろう青年が叫ぶ。手にする剣はすでに折れていて、その体も満身創痍だ。

「・・・化け物で結構だ。侵略者(キサマ)たちはこの世界の怒りを買った。それゆえの滅びだと覚悟せよ」

「怨みたいのなら怨みなさい。背負ってあげるわ」
 
その言葉を最後として白き者は消える。その場に残った黒き者はゆっくりと左腕を天へと伸ばし、そして小さく囁いた。

凶竜の殲牙(コード・ニーズホッグ)

天より現れたるは、先程まで多くの侵略者たちの兵器を破壊していた無数の武器。今度は雨あられのように降ってくるのではなく、無数の武器が1ヵ所に集まり、“翼竜”のような姿をとっている。

「残念だがアウトだ」

黒き者は指を鳴らして、無数の武器で構成された“翼竜”を逃げ惑う侵略者たちに放つ。一瞬の阿鼻叫喚の果て、この世界より侵略者は誰1人としていなくなった。

「契約執行、完了」

黒き者――天秤の狭間で揺れし者の二つ名を有する4thテスタメント・ルシリオンは静かに告げて、この世界から消えた。

†††Sideシャルロッテ†††

「はぁ、こんなつまらない契約にわざわざ界律の守護神(わたしたち)を呼ばないでほしいよ」

私とルシルが管理局を辞めてもう2年は経つ。管理局を辞めたことで、守護神としての“契約”を多くこなすことが出来るようになった。その分、本当に下らない契約内容も増えてしまったけど。マジあり得ないんですけどぉ。その世界が持つ抑止力でも十分なことにすら“界律の守護神(わたしたち)”が呼ばれる。これでは本当に何でも屋になってしまうかもしれない。今更な気もするけど・・・。

「なのは達・・・元気かなぁ?」

突き出た崖に座り込んで、遠くの空を眺めて思うのは親友たちのこと。次々と頭の中に浮かぶみんなの表情は笑顔だ。2年前に別れてから、当然の如く逢っていない。一応メールのやり取りはしているけど、ミッドから遠のくと携帯端末が繋がらなくなる。メールのやり取りの回数としてはこの2年でたったの8回。そんで一度繋がると膨大なメールが一気に届いたりする。それに対処するのは大変だけど、でもみんなと繋がっていると思うと嬉しくなる。

「あの子たちなら元気に決まってるだろ」

私の背後に突如として現れたルシル。私は振り返って、労いと謝罪の言葉を口にする。

「お疲れ様、ルシル。ごめんね、いっつも最後を任せちゃって」

「構わない。これが第四の力(わたし)の役目だ」

そう言ってルシルも私の隣に座り込んだ。眼下に広がるのは、返り血と怨嗟で穢れた(これも今さらだけどさ)私たちには勿体ないほどに美しい天然の花畑。その綺麗な景色が私の心にグッとくる。

「気持ちいいね」

「ああ。私たちには勿体ないほどの心地よさだ」

この2年、私たちは多くの命を奪ってきた。それが滅ぼされる側にとって自業自得なことであろうと理不尽なことであろうと、だ。だから私は、なのは達と友達だということに負い目を感じ始めていた。

「一度逢いに行くか、みんなに?」

ルシルが、なのは達に逢いに行くか、と聞いてきた。本音を言えば、今すぐにでも逢いに行きたい。でも今の私たちに、みんなと逢う資格はあるのだろうか。こんな血に塗れ、多くの命を奪い取ってきた私に。この次元世界に来てから初めての殺人。それが私の心を押し潰してくる。

(・・・ハッ、この次元世界でだろうと何だろうと人殺しには変わりないというのに、今さら何を・・・)

本当に今さらよね。負い目を感じるならもっと早い段階で感じるべきだった。でも楽しかったから。なのは達と一緒に過ごす時間が。とても愛おしくて、たまらなく幸せだった。

「・・・時間、考える時間を――っ!」

私の携帯端末からメールの着信音が連続で鳴り響く。そうか、この世界はミッドからさほど離れていないんだ。

「メールの確認・・・した方がいいんじゃないか?」

「うん」

携帯端末を開いてメールの内容を確認する。一番古いメールから1件1件読んでいったら、最近のメールまでに1時間も掛かった。

――シャルちゃん、ルシル君、元気? 私はすごく元気だよ! このメールを読んでいるとき、2人は何をしているのかな? いま私ははやてちゃんが設立した部隊、“機動六課”の新人演習を終えたとこだよ。それでね・・・――

「そっか、はやてはちゃんと自分の部隊を持てたんだね」

なのはのメールを読んで、自然と笑みが零れる。零れてしまう。はやてが部隊を設立したのはごく最近とのことだった。本当なら私もその“機動六課”の一員になる予定だったんだけどね。

「ほう、それにしてもメンバーはかなり豪勢だな。お、スバルとエリオ、キャロも・・・。はは、ヴァイスもいるのか! ん? ティアナ・ランスター・・・? ランスターってまさか・・・」

ルシルにも携帯端末の画面を見せてメールを読ませる。するとティアナって娘のことで、何か深く考え込んじゃった。私はすぐに思い出す。ルシルも「ティーダ一尉の身内か・・・?」って呟いた。そうだ。数年前に殉職した、地上本部の一等空尉、ティーダ・ランスターさん。
逃走中の違法魔導師の追跡中、ソイツに手傷は負わせることに成功するも、でも逃亡を許した。その際に致命傷を受けて逝去。逃亡していた違法魔導師は、当時私が所属してた地上部隊に出向していたルシルが逮捕した。

「そうか。ティーダ・ランスター一尉の遺志は、ティアナという娘が受け継いだのかもな」

ルシルはそう言ったきり黙った。当時のことを思い出しているのかも。だから今はそっとしておく。私は改めてメールの続きを読むことにする。ふと、“機動六課”のメンバー、というより戦力に引っ掛かりを覚える。このメンバーには私もさすがに驚いた。
なのは、フェイト、はやてだけならまだしも、シグナムたち守護騎士。私も入っていたらさらにすごいことになっていた。一体どうしてそこまでのメンバーを集めるのか理由が判らない。何か嫌な予感がする。

――それで、もしよかったら一度帰ってきてほしいな、ってみんなで話してるの。それじゃまたメールするから。2人と再会できるの楽しみにしてるよ!――

なのはのメールはそう締めくくられていた。再会を楽しみにしている、か。

「現時点において、界律との契約はもう残っていない。しばらくは解放されるはずだ。どうする、やはり一度帰って逢っておくか?」

ルシルは立ち上がって私に左手を差し出す。私はその手を取って立ち上がった。

「でも、私にはもう友達としての資格があるかどうか・・・」

「素直になればいい。逢いたいなら逢いに行く。逢いたくないなら、このまま次の契約が発生するまで待機だ」

ルシルも自分の通信端末に送られてきたメールを読み終え、広い空へと視線を移す。

「・・・じゃあ――」

私も青く広がる空を見上げた。

†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††

私たちは今、はやてちゃんが立ち上げた部隊・“機動六課”の初任務の現場であるエーリム山岳丘陵地区へと来ている。

「ヴァイス君! 私も出るっ。フェイト隊長と一緒に、空に展開されてるガジェットを掃討するから、安全にみんなを送ってあげてね」

私はヘリのパイロットであるヴァイス君(階級は陸曹ね)に声を掛けた。六課の初任務は、ここエーリム山岳丘陵地区を走る貨物車両に積まれているロストロギア・“レリック”の回収。でも、その“レリック”を狙った機械兵器・“ガジェット”が貨物車両を占拠しているとのこと。
それを排除して、暴走している貨物車両を停止させることも私たちの任務だ。本当なら私も、新人であるスバル、ティアナ、エリオ、キャロの4人と一緒に貨物車両へと行きたかったんだけど、航空型の“ガジェットⅡ型”が現れたために空に上がることになった。

「うっす、了解です。なのはさん、お気をつけて」

ヘリのメインハッチが開いてあとは出撃するだけなんだけど、その前に私は新人たちに声を掛ける。

「それじゃ少し出てくるね。みんなも、頑張って任務をサクッと片付けよう!」

「「「はい!!」」」

「は、はい・・・!」

スバル、ティアナ、エリオは少し緊張気味ながら元気よく返事をしてくれた。だけどキャロは、3人より遅れてつっかえながら返事をした。3人よりずっと緊張している所為だ。私はキャロの側まで歩み寄って、キャロの頬にそっと両手を添える。

「キャロ。そんなに緊張しなくても大丈夫だから。キャロは独りじゃない。離れてても、通信でみんなと繋がってる。ピンチの時は助け合えるから。だからきっと大丈夫だよ」

「そうだよ、キャロ。あたし達がちゃんといるから!」

「僕も、それにフリードも一緒だから」

「なのはさん、スバルさん、エリオ君・・・。はいっ、もう大丈夫ですっ!」

うん、これで心配はない。仲間が近くに居るっていう安心感のおかげだね。今のキャロの顔は本当にいい顔になっている。

「それじゃ行ってくるね」

みんなに微笑みかけて、私はヘリから飛び降りる。落下の途中、長年のパートナーである“レイジングハート”を起動させた。

≪Stanby Ready≫

「さぁ行くよ、レイジングハート」

≪Barrier Jacket, Aggressive Mode≫

「スターズ1・高町なのは、いきます!」

バリアジャケットへの変身を終えて、臨戦態勢に移る。そして“ガジェット”を掃討するため、少し遅れて来たフェイトちゃんと合流する。

『フェイトちゃん。同じ空を飛ぶの、久しぶりだね』

『うん、なのは。本当に久しぶり。また一緒に飛べて、こんな状況だけど嬉しいよ』

一緒に空を飛ぶのは本当に久しぶりだ。でも嬉しさの反面少し悲しい。一緒に飛ぶということは有事が起きた事を意味するから。それでも嬉しさの方が上回るんだけどね。

『来た。こっちは任せて、なのは』

『うん。それじゃ私はこっち担当ってことで』

それぞれにアプローチしてきたガジェットⅡ型との戦闘に、私とフェイトちゃんは入った。

†††Sideなのは⇒????†††

なのはさんも出撃したことですし、わたしも任された仕事をするです。スバルたち新人に、今回の任務の内容を再度確認させます。リインたち“機動六課”に与えられた任務。それは車両内に居るガジェットを全機破壊することと、目標である“レリック”を安全に確保すること、この2つです。新人のみんなに解りやすいように小型のモニターを出して、説明を続けます。

「――スターズ・ライトニング両分隊は、列車内部に展開されているガジェットを破壊しながら、車両前後から中央に向かって移動してくださいね。そして確保目標であるレリックは、7両目の重要貨物室にあるです。スターズかライトニング、先にここに着いた方が確保してください!」

「「「「はいっ!」」」」

モニターに詳しい場所を表示させてみなさんに教える。リインの任務の説明を、みなさんは強く頷いて応えてくれました。リインは騎士甲冑に変身して、「といことで、わたしも管制を担当するために、みんなと一緒に現場に行きますよ♪」みなさんと一緒に降りる準備をします。

『新人ども。隊長たちが空のごみ掃除してくれたおかげで、俺たちは安全無事に降下ポイント到着だ。隊長たちの頑張りを無駄にしないためにもヘマすんじゃねぇぞ。ま、心配してねぇけどな』

「「「「はい!」」」」

ヘリのパイロットを務めるヴァイス陸曹の言葉にみんなが応えます。ヴァイス陸曹。そんなプレッシャーを与えるようなこと、言わないでほしいのですけど・・・。でもリインが心配していたようなことはなかったです。みんな、初陣でありながらも確りとした目をしてますから。

「スターズ3、スバル・ナカジマ!」

「スターズ4、ティアナ・ランスター!」

「「いきますっ!」」

まずハッチに立つのはスターズ2人――スバルとティアナ。顔を見合わせた2人がヘリから飛び降ります。リニアレールの車両に降り立つまでの間に変身を終えた2人が、無事に車両へと降り立ったのを確認。

『ライトニング、降下ポイントに到着だ! 頑張ってな、チビども。行ってこい!』

「「はいっ、いってきます!」」

車両の反対側へと移動して、ヴァイス陸曹の激励が飛びます。次はライトニングの2人、エリオとキャロ。この2人が出たあとにリインも出撃するですよ。

(キャロ・・・?)

飛び下りることに躊躇っていたキャロでしたが、「・・・一緒に降りようか?」と優しくエリオが手を差し出したです。エリオはすごく優しいですねぇ。ジェントルマンってやつですか? キャロは「うん!」と差し出された手を取って、覚悟を決めたみたいです。

「ライトニング3、エリオ・モンディアル!」

「ライトニング4、キャロ・ル・ルシエとフリードリヒ!」

「「いきますっ!」」

新人のみなさんの出撃はこれで完了ですぅ。

『リイン曹長もお気をつけて!』

「はいですぅ!!」

リインもみんなを追うようにヘリから飛び立ちます。

†††SideリインフォースⅡ⇒フェイト†††

『スターズF、ライトニングF、降下完了しました』

みんなの降下が完了したことをロングアーチから報告を受けた。なら私となのはがやることは、ガジェットⅡ型が貨物車両へと向かうのを阻止することだ。私となのはは次々と増えてくるガジェットⅡ型を破壊しながら空を翔る。そのとき・・・

『こちらロングアーチ! 新たなガジェット30機と・・・それと、何・・・これ?』

ロングアーチからガジェットⅡ型増援の報が入る。けど少し様子がおかしい。ガジェット30機“と”って言ったシャーリー。ガジェットの他に何か別の援軍が来たみたいなんだけど・・・。でもすぐにシャーリーのその疑問に満ちた気持ちが解った。

『フェイトちゃん。あれって・・・眼?』

『う、うん。たぶんだけど・・・まるで人の眼みたい』

私となのはが相手にしていたガジェットⅡ型に追随するかのように、人の眼のような形をした未確認(アンノウン)が飛んで来ていた。数は2mほどの眼が1個。1mほどの眼が35個といった感じだ。

『とりあえず敵であることは間違いないと思う』

「『そうだね』こちらスターズ1、増援ガジェット及びアンノウンと交戦に入ります!」

「ライトニング1、同じく交戦に入ります! 新人たちの方は任せるよ!」

『了解しました。お気をつけて!!』

なのはと2人で再度交戦に入った。まずはガジェットⅡ型への攻撃を放ったけど、ガジェットⅡ型へと当たる直前で、小さい(アンノウン)の内の4つが十字の盾となって攻撃を防ぐ。さっきまでの動きと違って、かなり速く動く。

≪Haken Slash≫

ならば、と私は大きい方の大型眼(アンノウン)へと斬り掛かる。何故なら大きいのはこの1つだけ。この(アンノウン)達のリーダーだと推測できる。それならこの1つを墜とせば、小さい方に何らかの影響が出ると判断しての攻撃だ。

「はああああッ!!」

――ハーケンスラッシュ――

私の攻撃に対して大型眼(アンノウン)は何の抵抗もせず、“バルディッシュ”の刃を受け入れた。確かに何かの模様が描かれた瞳孔部分に攻撃が入っているのに、「・・・え?」全くダメージを受けた様子がない。

「っ・・・!?」

私はそれに何かを感じて無意識に距離を取った。次の瞬間、その大きい大型眼(アンノウン)の虹彩部分から白い砲撃が放たれた。

≪Sonic Move≫

すぐさま射線上から離脱して難を逃れる。もしあのまま止まっていたらどうなっていたか判らない。何せわたしの知っている魔力とはまた別の、魔力でありながらも感じたことのない異質な魔力を感じたから。

『ダメ! 逃げてフェイトちゃん!!』

ガジェットⅡ型を相手にしているなのはの叫びが頭の中に響く。私は考えるよりも先に体を動かして、その場から再度離脱した。するとさっきまで私が居た場所を、さっき避けたはずの白い砲撃が通過していった。

「一体――・・・な!?」

どうして回避したはずの砲撃が再度私の元へと戻ってきたか、その理由を見た私は驚愕した。

「くっ・・・!」

再び私の元へといくつもの砲撃が襲い掛かってきた。その砲撃の数は次々と増えていき、襲い掛かってくる角度もまた増えてくる。私は動きを止めることなく砲撃を回避し続ける。何故なら・・・

『フェイトちゃん! まずは砲撃を反射する小さいのから墜とさないとダメかも!!』

そう、小さい小型眼(アンノウン)が砲撃の反射板の役割として動いていたのだ。反射した砲撃は幾本にも分かれて数を増やし、さらに別の小型眼(アンノウン)に反射してさらに数を、角度を増やしていく。それはまるで私を捕らえるための、砲撃による檻のようなものだった。

『(これは結構キツイかも・・・)うん! 小型のアンノウンを最優先に叩くよ!』

リミッターを掛けられている私にとって、この大小眼群(アンノウン)は厄介だった。

†††Sideフェイト⇒なのは†††

増援として現れたガジェットⅡ型を掃討し終えて、私はフェイトちゃんの元へと翔ける。フェイトちゃんは目にも留まらぬ速さで、今なお続く幾本もの砲撃を回避しては小さい小型眼(アンノウン)を斬りつける。

「レイジングハート!」

≪Short Buster≫

「シューーット!!」

私も反射砲撃の要である小さい小型眼(アンノウン)へと砲撃を放つ。さっきはシューターを完全に防いだことから、今度は威力の高いバスターを食らわせる。でも、「うそっ!?」小さい小型眼(アンノウン)は、私の砲撃をも反射して、自らの攻撃として利用し始めた。

「なのは! 大きい方をお願い! 小さいのは私が引き付けるから!」

「フェイトちゃん、・・・判った! 待ってて!」

フェイトちゃんへの攻撃を行っているのは小さい小型眼(アンノウン)だけ。大きい方は白い砲撃を放ってからは一切の動きを見せていない。もしかすると、小さいのを操作しているから動きが取れないのかも、と推測する。だったら今こそ破壊するチャンスだ。

「レイジングハート、今出せる出力でディバインバスター、いくよ」

≪All right, My Master. Devine Buster≫

大きい大型眼(アンノウン)へと“レイジングハート”を向けたところで、瞳孔部分の前面に周囲の魔力が集束していく。間違いない、アレは「集束砲!?」だ。さすがにこれには驚きを隠せない。もし放たれてしまったら今の私たちに防ぐ術はない。

≪Devine Buster≫

集束砲のチャージを妨害するためにバスターを放つ。でも大型眼(アンノウン)はあろうことかチャージ中にも関わらず、転移してバスターを回避した。

「はやてちゃん! リミッ――」

最後まで口にすることが出来ずに、大型眼(アンノウン)から集束砲が放たれた。おそらくSランクはあろだろう、かなり大きい砲撃だった。集束砲が向かう先にはリインとフォワード4人の居るリニアレールの貨物車両。リイン、スバルとティアナは車両内。エリオとキャロは屋根の上で、エリオが球体型ガジェットであるⅢ型を破壊し終えて、キャロはフリードリヒの背に居る。エリオとキャロは砲撃に気がついているけど、今からだともう全てが間に合わない。


『心配するな。私が防いでみせる』


最悪な事態が起きるってところで頭の中に響いたのは、2年前に別れて以来逢うことのなかった幼なじみの1人の声。どうして?だとか、そんなことを考えるより先に私の中に安堵が広がっていく。

――|護り給え汝の万盾|《コード・ケムエル》――

貨物車両の側面に、蒼く光り輝く巨大な円い盾が現れた。大型眼(アンノウン)が放った砲撃を容易く防いで、砲撃が途切れた後に盾は無数の蒼い羽根になって散っていった。


「ほらっ、ボサッとしない。なのは、フェイト」


上空から聞こえたのは、もう1人の幼なじみの声。次の瞬間、上空から地上へと紅い何かが通り過ぎたように見えた。遅れてフェイトちゃんを襲っていた小さい小型眼(アンノウン)のいくつがが真っ二つに斬り裂かれて消滅していく。それは一瞬の出来事。私はその何かを確認するため、地上にある森林の方へと視線を向ける。木々の上に、桜色の刀身を持つ長刀を肩に担いで、背中から一対の真紅の翼を生やした「シャルちゃん!!」が居た。

「シャル!」

シャルちゃんによって小型眼(アンノウン)のいくつかが破壊されたことで、フェイトちゃんも反射砲撃から解放されたようでシャルちゃんの名前を呼んだ。

「お久さっ!ってあれ? 2人とも随分と魔力低くない?」

シャルちゃんは小首を傾げるんだけど、表情は可愛い笑顔だった。

†††Sideなのは⇒????†††

「やったね、エリオ君!!」

「ありが――え?」

フリードの背に居るキャロが笑いかけてくれる。僕はそれに応えようと振り向いたところで見た。この貨物車両へと砲撃が迫って来ていたのを。僕の表情と視線を見て、キャロも後ろに迫って来ている砲撃に気づいた。でもそれだけだ。僕たちにあの砲撃を防ぐ手立てはなかった。

「そんな・・・!」

「いや・・!」

諦めるしかない、とそう思ったとき・・・

「心配するな。私が防いでみせる」

「「え?」」

突如聞こえた声に、キャロと2人して辺りを見回す。そして見つけた。長い銀髪を靡かせて、背中から蒼い剣の形をした12枚の翼アンピエルを伸ばした、宙に浮く人影を。その人には何度かフェイトさんと一緒に遊びに連れて行ってもらったことがある。僕にとってお兄さんのような存在。

「「ルシルさん!!」」

キャロと声が重なる。キャロもルシルさんと面識があるみたいだ。キャロも僕と同じようにフェイトさんを保護責任者としてるし。フェイトさんと特に仲が良いルシルさんと逢っていても変じゃない。

「久しぶりだな、エリオ、キャロ」

――護り給え汝の万盾(コード・ケムエル)――

ルシルさんは微笑んだあと、左手をかざして蒼く輝く大きなシールドを張った。そのシールドをよく見ると、無数の小さな円い盾が重なって1つの大きな盾となってるのが判る。そしてそのシールドはいとも容易く砲撃を防いだ後、小さな羽根のようになって散っていった。

『ちょ、ルシル君!? どうしてここにおるん!? それにシャルちゃんも何で!?』

八神部隊長から通信が来た。モニターに映る八神部隊長は少し混乱気味のようだけど。ルシルさんは気軽に「久しぶりだな、はやて」って挨拶。

『にしても、何でって。酷いな、はやて。久しぶりなのだから挨拶してほしかった』

『え? あ、あーごめんな、ルシル君。久しぶりや、元気してた?・・・やなくてっ!』

「すまない。すぐに答えた方が良かったな。答えは、時間が空いたから戻ってきた、だよ。場所については魔力探査(サーチ)というものを使って探し当てた。魔力を使用しているなのはとフェイトの居場所はハッキリ判ったからな。だからそのままここへと来たというわけだ」

ルシルさんはそう言うと、砲撃が放たれた場所へと視線を向ける。僕とキャロもルシルさんにつられてその場所へと視線を向けた。目を凝らして見ると、なんか・・・眼のようなものがわんさか浮いてる。

『そういうこと! そんじゃ罪眼(レーガートゥス)は私とルシルで破壊するから』

なのはさんとフェイトさんの側に居る紅い翼を持つ女の人から念話が来た。

『シャルちゃんとルシル君、あの眼のようなモノのこと知ってるんか!?』

『うん。詳しいことはまた話すから、今は戦闘に集中させてね、はやて』

「そうだな。まずは罪眼(アレ)を破壊することを優先するべきだ」

完全に置いてけぼりを食らっている僕とキャロ。そんなところに、“レリック”が収められているであろうケースを抱えるスバルさんとティアナさんとリイン曹長が現れた。

「「ルシルさん!?」」

スバルさんとリイン曹長がルシルさんの姿を見て驚愕の声を上げる。それに気づいたルシルさんも振り返って、「ん? おお、 久しぶりだな、リイン、スバル。 2年も見ない内に大きくなったなスバル。ナカジマ三佐とギンガは元気か?」挨拶をした。

「はい! お父さんもギン姉も元気ですよ、ルシルさん!」

「それはなによりだ。っとそれと、すまないな。クイントさんの墓参りにここ2年行けなかった」

「いえっ、そんな!」

『ちょっとルシル! 挨拶は後! 防御お願い!』

「ん? シャル、君に防御なんて要らないだろ?」

シャルと呼ばれた人の通信にルシルさんは素っ気無く答えた。そういえばフェイトさんから聞いたことのある名前だ。確か幼なじみの大親友、シャルロッテ・フライハイト元一尉さん。

『私じゃなくてその子たちの防御! そっちに攻撃が流れたら危ないでしょ!?』

その言葉を合図として、シャルロッテさんが赤い光となって空を物凄い速さで翔る。こんな遠くからでも判るくらいの無数の閃光が入り乱れている激しい戦闘だ。

『ルシル、援護射撃!』

「了解」

ルシルさんが腰にあるホルスターから金色に輝く銃を2挺抜いて構えた。ティアナさんのデバイス、“クロスミラージュ”より少し銃身が長い。

「いくぞシャル・・・!」

――燃え焼け汝の火拳(コード・セラティエル)――

続けざまに2挺の銃から火炎の砲撃が放たれた。ここからだと、あまりの飛行速度でどれがシャルロッテさんなのかも判らない。だけどルシルさんは火炎砲を躊躇うこともなく連射。撃ち終えたルシルさんは軽く息を吐いてから、2挺の銃をホルスターに収めた。

『よし! 殲滅完了っと』

シャルロッテさんから一言。す、すごい。ルシルさんは見ただけで強力だって判るほどの砲撃を連射したし。僕を始めたとしたスバルさん達も、そのすごい魔法に対して驚きのあまりにポカンとした。

・―・―・―・―・

――ミッドチルダ某所

巨大なモニターを前に1人佇む男。名をジェイル・スカリエッティ。後に忌み名としてミッド史にその名を刻むことになる男だ。男はモニターを見据えたまま・・・

「それにしても、この案件はやはり素晴らしい。私にとって興味深い素材が揃っているうえに・・・」

薄ら笑いを浮かべる。モニターに映し出されているのはフェイトとエリオだ。

「この子たちを――生きて動いている“プロジェクトF”の残滓を、手に入れるチャンスがあるのだからね。それに――」

さらにモニターの画面が切り替わる。映し出されたのは、今回の任務に乱入してきたシャルロッテとルシリオンだった。

「この世は実に面白い。世界の意思の代行者・・・・界律の守護神テスタメント、か。この2人にも何らかのアプローチを行っていきたいね」

不敵な笑みを浮かべた後、彼は背後に現れた存在と、今後について話し始めた。自分がこれから一体何を相手にしようとしているのか、判っていながらの愚考だった。


・―・―・シャルシル先生の魔法術講座・―・―・


シャル
「私は・・・帰って・・・来ぃ~~たぁ~~ぞぉぉーーーーッ!!」

ルシル
「やぁかましいぃぃーーーッ! もう少し声量を下げろっ馬鹿姉!」

シャル
「これがローテンションでいられますかっ! 2年ぶりにになのは達に再会できたんだよっ。というかルシルのテンションも似たようなもんじゃん! 良かったね、フェイトと再会できて!」

ルシル
「君の大きな声に負けないためだっ! まったく。もう19の女性なのだから、少しは落ち着け」

シャル
「失礼なっ! 19歳はまだ少女だよっ! でも落ち着かない。だって嬉しいからっ!」

ルシル
「あーはいはい。判ったから、ちょっと落ち着こう」

シャル
「すぅはぁすぅはぁ・・・。うん、よしっ。では改めて。私は帰ってきた」

ルシル
「私も帰って来たぞ」

シャル
「だね。さて。第三章の1発目、シャルシル先生の魔法術講座を始めますっ」

ルシル
「ん? フェイトとなのは、それにアルフとユーノは居ないんだな」

シャル
「あれ? ホントだ。次回からだね、きっと」

ルシル
「そうか。なら、今回は私と君の2人だけでするんだな」

シャル
「私と2人っきりじゃ・・いや?」

ルシル
「まさか。どれだけの間、君とパートナーを組んでいると思ってる?」

シャル
「ん、ありがと。じゃあ早速始めようか。

――凶竜の殲牙(コード・ニーズホッグ)――

――護り給え汝の万盾(コード・ケムエル)――

――燃え焼け汝の火拳(コード・セラティエル)――

――魔力探査(サーチ)――

ってルシルの魔術オンリーだね」

ルシル
「サーチは違うだろう。これは魔術師共通術式だ。君も使えるだろうが」

シャル
「そうでした。んじゃ紹介に行こうか。
まずは、複数の神器で巨大な飛竜を形作り、対象に突撃させる、凶竜の殲牙コード・ニーズホッグ。
小さな円い盾を重ねることによって大きな円い盾とする、護り給え、汝の万盾コード・ケムエル。
貫通性の高い火炎熱砲撃の、燃え焼け、汝の火拳コード・セラティエル。
魔力の波形から特定の対象を探す術式、魔力探査サーチ」

ルシル
「上級術式ニーズホッグは、非殺傷など出来ない神器による攻撃だから殺傷性は極めて高い」

シャル
「しかも解放された神器だから神秘満載。対神秘においては抜群の破壊力を発揮するんだよね」

ルシル
「だな。で、ケムエルは私が有する数少ない防性術式の1つだ。小さいとはいえ1つ1つが防御力の高い円盾だ。それが複数折り重なってさらに強固な大きな円盾となる。それがケムエルだ」

シャル
「かったいよねぇ、ケムエルって。中級術式のくせに。なのはのスターライトブレイカーも防げるんじゃない?」

ルシル
「どうだろうな。私としては、なのはの砲撃は向けられたくないな」

シャル
「同感」

ルシル
「炎熱砲セラティエルだが、今回は標的が素早いために速度と追尾性を高めてある」

シャル
「そう言えばいつもよりは速かったよね。まぁそのおかげで私もちっちゃいレーガートゥスを気にせずに戦えたんだけどね」

ルシル
「それは良かった。最後に、魔力探査サーチのことについてだが、これは説明する必要はないな」

シャル
「だね~。見つけたい人の居場所を探るもいいし、敵を見つけたい時にも重宝するし。私は基本的に敵発見のために使うのが多いかな」

ルシル
「君だけじゃなく、大戦に参加した魔術師の大半はそうだろうな」

シャル
「そうだったね。さて、今回のシャルシル先生の魔法術講座はこれにて終わり。また次回♪」

 
 

 
後書き
はい、今回から3rd本編へと入っていきます。
そしていきなりすいません(謝罪してばっかですが)。
アニメ1話から4話までをごそっと丸ごと省略。シャルシルがいないとどうしようもないためです。

そして本章よりオリジナルキャラを入れていきます。
この世界での最高ランク(と思っています)SSSへと到達したシャルシルを相手にナンバーズやガジェットが勝てるわけがない。
そのための敵(ANSURのオリジナルキャラ)ですね、それを出していく次第です。  
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