Element Magic Trinity
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投了
リーダスが飛んだ。
傷だらけの状態で、近くの建物に突っ込んでいく。
「バトル・オブ・フェアリーテイル、残り41人」
フリードが呟いた。
【リーダスVSフリード】
【勝者:フリード】
「リーダスがやられた!」
「くう・・・やるなァフリード!」
ギルドを囲むように仕掛けられた術式のギルド入り口付近に、新たな情報が現れる。
「のんきな事言ってる場合じゃないよ!リーダスは石化を治す薬を取って来るハズだったんだ」
「治す事ねぇよ。どうせハッタリだから」
『ハッタリだと思ってんのか?ナツ』
ナツとハッピーがそんな会話をしていると、その後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「ラクサス!」
画質の悪い映像のように時折ブレるラクサスが立っていた。
腕を組み、笑みを浮かべている。
「思念体だ!」
「つーか何でオメーがココにいんだよ、ナツ」
「うっせぇ!出れねぇんだ!」
ラクサスの言葉にナツが噛み付く。
「ラクサス・・・貴様・・・」
『仲間・・・いや、アンタは『ガキ』って言い方してたよな。ガキ同士の潰し合いは見るに堪えられんだろ?あ~あ・・・ナツもエルザも女王様も参加できねぇんじゃ、雷神衆に勝てる兵はもう残ってねぇよなァ』
ラクサスの言葉は図星だった。
マカロフは沈黙する。
『降参するか?』
「くぅ・・・」
怒りや焦りで震える。
と、そこにハッピーが声を上げた。
「まだグレイがいるよ!ナツと同じくらい強いんだ!雷神衆なんかに負けるもんか!」
「!」
確かに今、S級魔導士はマカロフ側にいない。
が、S級に近い実力を持つ人間ならまだ残っている。
ハッピーが名前を挙げたグレイも、その1人だ。
「俺と同じだァ!?アイツが?」
「だってそうじゃん」
今度はハッピーの言葉に噛み付くナツ。
「グレイだぁ?ククッ、あんな小僧に期待してんのかヨ」
「グレイを見くびるなよ、ラクサス」
マグノリアのとある服屋。
「ヒャッホーーーーーーーゥ!」
ギルドで名前が挙がったグレイとスバルは、ビックスローの蹴りを跳んで避けていた。
「いきなっ!ベイビー!」
『いくぞー』
『オオオッ』
ビックスローに言われ、小さい樽人形が一斉にグレイとスバルに光線を放つ。
「!」
「っと」
横に跳んで転がり避け、擦れ擦れで避け、伏せる。
暇なく向かってくる光線を2人は避け続けていた。
「ラインフォーメーション!」
『オオー』
バラバラに飛んでいた人形が、シャキィンと縦に一列に並ぶ。
そこから凄い勢いで一直線に刃を放った。
「くっ!」
「へぇ・・・なら!」
グレイに向かって放たれた刃に向かって、スバルがエウリアレーを向ける。
その銃口にオレンジに似た色合いの光が集まっていく。
「アースシェイカー!」
スバルが吼える。
撃ち出された魔力弾がラインフォーメーションの軌道をずらす。
ずれても尚グレイに向かうラインフォーメーションは、スパァン、と腕を切った。
「ナイス」
自分が立っていた位置に急いで置いた、マネキンの腕を。
近くのマネキンの頭を掴んだ状態で、グレイは飛んでいた。
エウリアレーを構えたままのスバルが笑い、呟く。
「年下のくせにやるなァ、グレイ、スバル。次はビクトリーフォーメーションだ」
指さし、言う。
「・・・」
反応はない。
「どうした!?ベイビー!?」
あわててそっちを向くと、氷の中に閉じ込められた人形達がいた。
グレイが凍らせたのだ。
「んなっ!?いつの間に!?」
ビックスローが驚愕する。
「いぎぃっ!」
「グランバースト!」
「うぐっ!」
油断していたビックスローの顎にグレイの飛び膝蹴りが決まり、続けてスバルが暴風を圧縮した魔力弾を撃ち込む。
「アイスメイク・・・」
倒れこむビックスロー。
造形魔法の構えを取るグレイと、エウリアレーの銃口に魔力を集束するスバル。
「大槌兵!」
「マーシーレイン!」
「エックスフォーメーション!」
天井辺りから氷のハンマーが落下し、近くの棚を蹴って跳んだスバルの銃から雨の如く弾丸が降る。
寝ころんだ状態でビックスローは腕をエックスにし、マネキンでそれらを防いだ。
「何!?」
「どうなってんだ!?人形は凍らせてあんだろ!?」
2人は目を見開く。
「俺のセイズ魔法【人形憑】は魂を人形に憑依させる魔法。人形は氷づけにされても魂は無理。別の人形に移る事が出来る」
『できる』
ふわふわとマネキンが浮く。
そのマネキンの足元で小さいクマの人形も浮いていた。
「だったらテメェ本体を凍らせてやるァ!」
「何の問題もねぇよ。テメェを撃ち抜きゃいいんだからな!」
「やれるもんならやってみなー」
べーっとビックスローが舌を出す。
「うひゃひゃひゃひゃー!」
グレイが放った氷とスバルが撃った銃弾をマネキンとクマの人形で防ぎ、ビックスローは背を向ける。
「てめ・・・逃げる気か!?」
「んだとコラァ!」
当然、2人はビックスローを追う。
「うほほー」
「待ちやがれ!」
「逃げんじゃねーよ!」
逃げるビックスローを追うグレイとスバル。
ヒュル、とビックスローが建物の間に入っていった。
「あの野郎」
「どこ行きやがったんだ?」
2人も建物の間に入り、ビックスローを探す。
「ここだよ。グレイ、スバル」
上から声がして顔を上げると、建物と建物の向かい合う壁に足を付け、腕を組んだビックスローがいた。
「テメェ・・・一体何がしてぇんだ」
「俺ぁ勝負は好きだが、これはちっと頂けねぇよ」
「言ったろ?遊びたいんだヨ。ベイビー達も」
グレイの問いに笑顔を浮かべたまま、ビックスローが言う。
その瞬間、足元に文字が浮かんだ。
「!術式!?」
「やべーな、こりゃ・・・」
驚愕している間に、術式の壁が2人を囲む。
その術式のルールは―――――――
【ルール:この中にいる者は戦闘終了まで魔法の使用を禁ずる】
「罠か!?」
「魔法使用禁止って・・・はぁっ!?」
目を見開く。
スバルはエウリアレーの引き金を引くが、カチカチと小さく音がするだけで弾は出ない。
「こういう時に遠隔操作系の魔導士は有利だね」
ビックスローが言ったと同時に、シュッとマネキンが現れる。
「マネキン!?」
驚愕した瞬間、マネキンから光線が発射される。
「ぐぁあ!」
「うがあぅ!」
防御態勢を取るものの、建物と建物の間という狭い空間で魔法が使えない状況では避ける事も防ぐ事も満足に出来ない。
続くように、別のマネキンも光線を放つ。
「ああああっ!」
「があああっ!」
小規模の爆発が起こり、煙で2人の姿が見えなくなる。
「うひゃはははっ!残念残念!さすがのグレイとスバルも魔法が使えないんじゃねー」
ビックスローが笑う。
暫しの静寂。
「!」
ガッ、と。
煙の中から黒と銀が飛び出し、壁を蹴って上へ進んでいく。
「バカな!」
リズミカルに壁を蹴って、飛んだ。
「うおおおおっ!」
「らああああっ!」
叫び、拳を握り締める。
「ぐおおっ!」
そして同時に、ビックスローの顔に拳を叩き込んだ。
3人とも地面に倒れる。
「こいつら・・・ベイビーの攻撃をあれほど喰らって・・・」
ありえない、と言いたげな表情を浮かべるビックスローの目に、横向きに倒れるグレイと仰向けに倒れるスバルが映る。
「なーんだ、もう終わってんじゃねーか」
2人は、気を失っていた。
【グレイとスバル:戦闘不能】
【残り29人】
現れた文字に、ナツ達は言葉を失った。
『ふははははっ!だーから言ったじゃねーか!』
「嘘だっ!絶対なんか汚い手使ったんだよ!」
「ぬうぅ・・・」
ハッピーが叫び、ナツが唸る。
『あとは誰が雷神衆に勝てるんだ?クク・・・』
「・・・」
ラクサスの言葉にマカロフは言葉を失う。
再びハッピーが別の人物の名を挙げた。
「ガジルだっ!」
『残念~!アイツは参加してねーみてーだぜ。元々ギルドに対して何とも思ってねぇ奴だしな』
「シュラン!」
『アイツも参加してねーぜ』
しばらく考え、ハッピーはもう1人名を挙げる。
妖精の尻尾最強の女問題児を姉に持つ男の名を。
「クロスがいるよっ!」
『クロス?・・・ああ、女王様の弟か。アイツならそこに名前あるぜ』
思念体が指差す先の文字を見て、ナツ達は驚愕する。
確かにそこにはクロスの名前があった。
【クロス:22人抜き】
「「「22人抜き!?」」」
参加しているギルドメンバーは88人。
22人という事は、メンバーの4分の1を1人で倒しているという事になる。
『スゲェよな。1人でギルドの奴らの4分の1を倒しちまった。ま・・・つー事は魔力の消費もハンパねぇだろ。そんな状態で雷神衆と戦えるのかねぇ・・・ククッ』
ラクサスが笑う。
「俺がいるだろーが!」
『ここから出れねーんじゃどうしようもねーだろ、ナツ』
マカロフは苦しげに目を閉じ、ゆっくりと口を開く。
「解った。もうよい」
呟き、顔を向けた。
「降参じゃ。もうやめてくれ、ラクサス」
「じっちゃん!」
マカロフの言葉にナツが叫ぶ。
その言葉にラクサスは笑みを浮かべ―――表情を崩した。
「ダメだなァ・・・天下の妖精の尻尾のマスターともあろう者がこんな事で負けを認めちゃあ。どうしても投了したければ、妖精の尻尾のマスターの座を俺に渡してからにしてもらおう」
マカロフが目を見開く。
「汚ーぞラクサス!俺とやんのが怖えのか!?ア!?」
ナツが叫ぶ。
「貴様・・・最初からそれが狙いか・・・」
マカロフが呟く。
ラクサスの笑みが、悪人に似た笑みに変わった。
「女の石像が崩れるまであと1時間半。よーく考えろよ」
後書き
こんにちは、緋色の空です。
もうすぐBOF編中盤・・・早いな。
予定じゃ1月中には終わりません。
だからティアの過去編も遅く・・・。
換装・批評・投票、お待ちしてます。
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