Element Magic Trinity
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術式
「ナツ・・・俺はお前のそういうノリのいいとこは、嫌いじゃねぇ」
完全復活でテーブルぶち壊したナツに、ラクサスが呟く。
「ナツ」
「祭りだろ?じっちゃん。行くぞ!」
いつもの服装の上に来ていた長袖の服を脱ぎ捨て、ラクサスに向かって走っていく。
「待てドラグニル!お前、昔ラクサスにどれだけ酷くやられたか覚えていないのか!?」
「ガキの頃の話だ!」
「去年くれぇの話だぞバカ!」
「去年はガキだったんだァ!」
「んな1年でガキじゃなくなる訳ねーだろうが!」
ライアーが止め、スバルが呆れながら叫びツッコみを入れるが、ナツは止まらない。
「・・・だが、そういう芸のねぇトコは好きじゃねぇ」
「オラァーーーーー!」
「落ち着けよ、ナツ」
容赦なく殴りかかってくるナツに呟き――――――――
「びぎゃああああっ!」
こちらも容赦なく電撃を浴びせた。
そのままナツは気絶する。
「ナツ!」
「ホレ、みろ!」
「せっかく復活したのに」
「何やってんだバーカ」
黒焦げで気絶するナツにハッピーが呟き、スバルが毒づく。
「このコ達を元に戻したければ、私達を倒してごらんなさい」
「俺達は4人。そっちは100人近くいる。うっわぁ!こっちの方が不利だぜ!ぎゃはははっ」
『フリだー』
ビックスローが笑い、周りを飛ぶ顔の描かれた小さい樽が繰り返す。
エバーグリーンの眼鏡が光を反射して光った。
「制限時間は3時間ね。それまでに私達を倒せないと、このコ達・・・砂になっちゃうから」
「えぇっ!?」
「テメェ等・・・!」
それを聞いたルーが驚愕し、アルカが怒りと憎しみの篭った目で4人を睨みつける。
ギルドの空気が熱くなったのは、アルカが怒っているからだろう。
クロスは無言だが、黙って4人を睨んでいる。
「ラクサス・・・」
マカロフが震える声で呟く。
「バトルフィールドはこの街全体。俺達を見つけたらバトル開始だ」
今は収穫祭。
いつも以上の賑わいをみせている街でたった4人を探すのはかなり難しいだろう。
「ふざけおってぇ!」
ついに我慢の限界が訪れたマカロフは怒りを具現化するように巨大化する。
「だから慌てんなって・・・祭りの余興さ。楽しもうぜ」
そう言いながら、ラクサスが右手を上げる。
その瞬間、ギルド内が眩い雷光に覆われた。
「くっ!」
「うおっ!」
「眩し!」
「くしゅっ」
そこにいた全員が眩しさに目を閉じる。
ちなみに最後のはルーだ。眩しくてくしゃみが出たらしい(太陽とか電気とか眩しいもの見るとくしゃみが出るってよくありますよね。え?ない?そうですか)。
そして光が消えると――――――――
「バトル・オブ・フェアリーテイル、開始だ!」
その言葉と石化した10人を残して、ラクサス達は姿を消していた。
「き・・・消えた!」
「この街で鬼ごっこをやろうってのか、ラクサス!」
「あんのバカタレめぇっ!」
それを確認したギルドメンバー達のやる事はただ1つ。
「くそォオオ!姉ちゃんたちを助けねぇと!」
「あいつらぁぁーーーーーーっ!」
「ラクサスを捕まえろォ!」
「つーかぶっ潰してやるァ!」
「なめやがってぇぇっ!」
3時間以内に4人を倒す。
その為に、メンバー全員が闘志を燃やして走る。
「ビスカ・・・僕が必ず助けてあげるからね」
アルザックは石化したビスカに呟き、ギルドを出ていった。
「ルー」
「解ってるよ」
ルーとアルカは1度石化したルーシィとミラ、ティアを見て、顔を見合わせ、頷く。
「ラクサス、あのヤロウ・・・マジで潰す」
「さぁて・・・このイライラは、エバーグリーンにでもぶつけよっかな?」
2人とも、顔がマジだ。
アルカは殺気だっているし、ルーは笑顔だが黒い。
「ワシが・・・ワシが止めてやるわ!クソガキがっ!」
当然マスターであり、祖父でもあるマカロフ浜子のラクサスを探し倒そうとギルドを出て―――
「!」
――――――出られなかった。
ゴチーン、と何かに顔面強打する。
「何やってんだ、じーさん!」
「何じゃこれは!?進めん!見えない壁じゃ!ぬぅう」
「こんな時にどーしちまったんだよ。見えない壁なんかどこにもねーだろ」
そう。
グレイの言う通り、先ほど走っていったメンバーやルーやアルカ、もちろんグレイも普通にギルドの外に出ている。
が、マカロフだけが1歩も外に出られないのだ。
「ぬうぉお・・・」
必死に外に出ようとするマカロフ。
そんなマカロフの頭を掴み、外からグレイが引っ張る。
「んごぉおお!」
出れない。
「どうなってんだ!?」
「本当にマスターにだけ見えねぇ壁が!?」
その瞬間、空中に文字が現れた。
「空中に文字が!?」
「これは・・・フリードの術式か!?」
「術式!?」
聞いた事のない魔法に、グレイが首を傾げる。
「結界の一種じゃ。踏み込んだ者を罠にはめる設置魔法。おそらくこのギルドを囲むようにローグ文字の術式が書かれておる!術式に踏み込んだ者はルールを与えられる。それを守らねば出る事は出来ん。見よ」
マカロフが説明を終えると同時に、別の文字が浮かび上がる。
【ルール:80歳を超える者と石像の出入りを禁止する】
「何だよ、この言ったモン勝ちみてーな魔法は!?」
確かにそうだ。
マカロフは88歳。80歳を超えている為、出られないという訳だ。
「術式を描くには時間がかかる・・・故に、クイックな戦闘には向いておらんが、罠としては絶大な威力を発揮する」
「こんな魔法のせいでここからじーさんだけ出られねぇってか!?壊せねぇのかよ!?じーさんでも」
「術式のルールは絶対じゃ!『年齢制限』と『物質制限』の二重の術式とは・・・フリードめ、いつの間にこんな強力な・・・」
つまり、80歳を超えるマカロフと石化しているルーシィ達は術式が解除されるまで出られない、という事だ。
まぁ、石化している状態じゃ戦えないが。
「初めからじーさんは参加させる気がねぇって事か。周到だな」
そう呟き、グレイは走っていく。
「こうなった以上、俺達がやるしかねぇな」
「グレイ!」
「アンタの孫だろうが容赦はしねぇ。ラクサスをやる!」
そう言い残し、グレイもラクサスを探しに行く。
「くっ」とマカロフは小さく呻き、ふと後ろを見て、首を傾げた。
「クロス。お前は行かんのか?」
そう。
ライアーやスバルはもうとっくに行ったのだが、クロスはただ1人残り、石化したティアの前に立っている。
「・・・マスター」
「どうした?」
呟き、クロスが振り返る。
その目には怒りと憎しみと・・・殺意が光っていた。
「もし俺の剣が貴方の孫の血で穢れたとしたら・・・その時は俺を庇わないでほしい」
重々しく、紡がれた言葉。
そうだった、とマカロフは思い出す。
この男、クロスは・・・姉の為なら何でもする気質の男だ。
それは時に幸を呼び、時に不幸を呼ぶ。
「クロス、何を考えて・・・」
「何を?俺が考えているのは姉さんの無事だけ。それ以外は考える価値もない」
鋭い、姉に似た獣を狩る狩人のような目を光らせ、ギルドを出ていくクロス。
その後ろ姿を見送り、マカロフは考える。
(ラクサス・・・何を考えておる!?あんなバカタレだが、強さは本物じゃ・・・ラクサスに勝てる者などおるのか・・・?)
目をステージに向ける。
(エルザやティアならもしかしたら・・・しかし・・・この状態では・・・)
ラクサスはS級魔導士。
目には目を、歯には歯を、S級にはS級を!・・・と行きたいのだが、ギルドのS級魔導士はラクサスを含め5人。
エルザとティアは石化し、ミストガンはどこにいるか解らず、皆が『オヤジ』と呼ぶギルダーツは不在。そしてマスターであるマカロフは出られない。
この状況のギルドの中で、1番強いのはラクサスだろう。
「!」
ふと目を向けると、扉の陰に隠れる人が1人。
「ご、ごめ・・・お、俺・・・ラクサス怖くて・・・」
「リーダスか」
その人物とは、絵画魔法を使う魔導士、リーダスだった。
「よい。それより東の森のポーリュシカの場所は解るな?」
「ウィ」
「石化を治す薬があるかもしれん。行ってこれるか?」
「ウィ!そーゆー仕事なら!」
マカロフの頼みを快く引き受けるリーダス。
すると――――――
「ごあーーーーーーーーーっ!」
ナツが目を覚ました。
「あれ!?ラクサスはどこだ!?」
「起きたー」
「つーか誰もいねぇ!」
気絶している間にギルドメンバー全員が出て行った事を知らないナツは辺りを見回す。
「じっちゃん!何だこれ!?」
近くにいたマカロフに疑問をぶつけるナツ。
(ナツが本気になれば・・・もしかして・・・)
可能性を感じ、マカロフは叫ぶ。
「祭りは始まった!ラクサスはこの街の中におる!倒してこんかい!」
ラクサスを倒して来い、というマカロフの命令を、ナツが断るはずがない。
「おっしゃああああっ!」
嬉しそうに声を上げる。
「待ってろォラクサスゥゥ!」
ドドドドド・・・と凄まじいスピードでナツはギルドの入口へと走り――――――――
「!」
―――――――出られなかった。
「何コレ?」
「「「えええええっ!?」」」
なんと、ルールに引っかかっていないはずのナツも、術式のせいで外に出られないのであった。
「いたか、アルザック!」
「こっちにはいない!そっちは!?」
「手がかりなしだ!」
一方、こちらはマグノリアの街の中。
ジェットとドロイ、アルザックが手分けして4人を探し、集合していた。
「くそォ・・・あいつ等・・・よくもビスカを・・・許さねぇ!ラクサス!」
「おい・・・落ち着けよアルザック!」
「落ち着いてられるかよっ!3時間以内にラクサスを倒さねぇと!」
苛立ちを近くの箱にぶつけるアルザック。
その瞬間、地面に文字が現れる。
「!」
「何だ!?」
その文字は壁を作り、3人だけの空間を生み出す。
「うお!?」
「しまった!」
「術式!?」
「街の中にも術式のトラップが張り巡らされてんのかよ!」
「こりゃ最初にフリードをやった方がいいな」
そして、ルールが現れる。
それを読んだ瞬間・・・3人は驚愕した。
【ルール:この中で1番強い魔導士のみ、術式の外へと出る事を許可する】
そのルールが示すのは・・・
「え?ど・・・どーゆう事だ?」
「俺達で潰し合え・・・と?」
1番強い人間を決めるのは、拳同士の勝負しかない。
「んな事出来る訳ねぇだろ!クソォ!」
「ひきょーだぞ、フリード!」
ジェットとドロイが叫ぶ。
が、アルザックは俯き、ただ一言呟いた。
「ごめん」
その言葉に、ジェットとドロイが振り返る。
「僕はビスカを助けたい。こんなトコでじっとしてる訳にはいかない」
「どーなってんじゃあ、ナツ!お前80歳か!?石像か!?」
「知るか!何で出れねぇんだよォォ!」
何故か術式に引っかかり出れないナツはマカロフと口論していた。
すると、新たな文字が浮かび上がる。
「バトル・オブ・フェアリーテイル途中経過速報?ん?」
浮かんだ文字に首を傾げていると、信じられない文字が浮かぶ。
【ジェットVSドロイVSアルザック】
「な・・・何じゃこれは!?」
「何でこいつ等が戦ってんだ?」
【勝者:アルザック】
「ごめん・・・くそォ・・・ごめん・・・」
気を失うジェットとドロイに背を向け、アルザックは呟いた。
【ジェットとドロイ:戦闘不能】
【妖精の尻尾:残り86人】
「妖精の共食いにどこまで堪えられるかな?ジジィ」
後書き
こんにちは、緋色の空です。
早速投票ありがとうございます!
まだまだ受け付けてますので、よろしくです!
・・・作中で雷光を見たルーがくしゃみしています。
あれ、私もなんですよね。眩しいもの見るとくしゃみが出るんです。
感想・批評・投票、お待ちしてます。
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