メモリアル・ヴァフェ
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2話例外的出現脅威
僕は連絡端末(スマートフォン型)に地図をうつし、とぼとぼと寮を目指していた。肩に、生活用品の入ったバックの重さと銃のはいったバックの重量を受けワクワク気分と足の耐久値をじわじわと減らしてくる。ここは中部の都市機能を集合させた集合要塞都市なだけあって、単純な広さがバカにならないのである。その事実がなおさら足を重くする。
因みに集合要塞都市は日本に4つある。1つ目は関東東北、栃木群馬の県境を中心とする縦長の都市。これといった特徴はなく平均的な集合要塞都市だ。2つ目はここ中部、岐阜の下呂付近を中心とした都市で、モノ作りが盛んなことが有名だ。3つ目は九州、阿蘇山付近を中心とする都市で、東南アジアなとに救援を出すことが多く小規模な割に一番軍備が整った都市になっている。4つ目は北海道、広大な土地を利用して、ほかの都市の食料を支援するという名目がある。また農地を守るために軍備が整っている。どれくらい広大かというと中部の1.5倍、九州3倍ほどの広さがあったりする。
どの都市も円状で、基本的に同じ構造をしている。まず中心に統率系統が置かれ、その周りを居住区があり、居住区を守るように軍備系統の基地が配置されている。生産区は軍備の外に配置されている。初期は生産区も軍備地区でカバーする予定だったのだが、どこの都市でも生産区が広くなりすぎこの計画は却下され、今の形にいちついたのだ。
話がずれてしまった。しばらく質素な廊下を歩き続けていると、いつの間にかモダンな廊下なっておりアットホームな雰囲気に変わっていた。下には赤っぽいカーペットがひかれており、歩きやすくなっている。まだ見ぬ寮がどんなものなのか想像を膨らませると、いつも間にか寮の受付に着いていた。
ホテルのような受付、暖かい装飾、受付に立たずむナイスガイ.....うん、受付の人がタンクトップ姿のマッチョとは思わなんだ。ニコニコと人懐っこい笑みを浮かべる受付ガイに、僕はひきつった笑顔で笑うことしかできなかった。
笑顔通り、親切だった受付ガイはいろいろなことを教えてくれた。その中で一番役に立ちそうなのは僕の寮の部屋には学校への向け道があるという情報だった。
寮の部屋の前に着いた僕は再度、連絡端末を眺めていた。次は地図ではなく、部屋で一緒に住むメンバー表を見ていた。部屋は分隊ごとで使うあったのだが、ここで問題じゃないかと思うところがある。分隊メンバーは僕をぬいて4人いるのだが、そのうち2人が女子なのだ。しかも全員同い年の12歳。子供といえど年頃なのだから、もうちょっとそこの配慮をしてもよかったのではと非常に思った。まぁいつまでドアの前にダダをこねていては変人に間違われかねないとおもい、ドアノブをつかみ右に廻した。かちゃという音とともにドアを抑える抵抗が消え、少し押すとすんなりドアは道を開けた。
洋風なつくりになっており、廊下の先にリビングと簡易キッチンがあった。廊下には右にドアが2つ、左に1つあった。右の手前の方のドアはトイレになっており、もう1つのドアは男子の部屋となっている。左のドアはもちろん女子の部屋になっている。簡易キッチンにはHIと小型冷蔵庫、リビングには大きめな白いソファアと背の低いテーブル、そして薄型液晶テレビがあり、この豪華さには驚いた。
修学旅行に来た生徒さながらに、荷物を置く前に部屋をじろじろ見てしまったことに恥ずかしさを覚えながら僕は、そろそろつらくなってきた荷物を置くべく男子部屋に入った。机ベットと交互にならんでいるシンプルな間取りだった。机の上に名札が乗っていたので自分がどのベットでどの机かはすぐにわかるようになっていて安心した。
計9kgほどある荷物をおろし、思わず体をねじり肩を廻した。パキパキと体がなり、何とも言えない開放感がにじみ出る。かれこれ一時間ぐらい歩いたのではないかと思う。地味に足の耐久値を削られてぱんぱんになってしまていたので、ベッドの少し休むことにした。靴を綺麗にそろえて脱ぎ、ベッドに寝転ぶ。ベッドのスプリングが軋み、体に合わせ少しマットが沈み込む。はぁ、と息を吐くと僕は夢の世界にに引き込まれた。
目が覚めると、いや目はあけていないので意識鮮明になったという表現のほうが正しいのだろう。とにかく、夢の世界から戻るとリビングの方からがやがやとした声が響いてくる。意外と声が響くのだなぁと思いながら、その声を聴いていた。声からするに人数は2人、分隊メンバー見て間違えはないだろう。何かもめているようだが、内容はうまく聞こえない。
挨拶もまだしていないので、分隊メンバーに会うべく、ベットから這い出て靴を履く。ただ初対面のしかも言い争っている人に話しかける大胆さは僕にはないので、すこし部屋のドアを開けリビングを覗く。寝起きなので体が思い道理に動かない。だからかもしれない、覗く際あしをもつらせ盛大に転ぶはめなったのは。
おっ!?と思ったころには遅かった。急速に変わる平衡感覚、ワンテンポ遅れてくる衝撃が肺の空気を抜きにかかる。もちろん、その時なった大きな音に気づかない彼らではなかった。僕が胸の苦しみに耐えながら、リビングのほうを見た時には言い争っていた2人駆け寄ってきてくれていた。
しばらく経ち倒れた時の痛みも抜けた僕は、リビングで4人のルームメイトと向かい合っていた。1人が僕の看病をしているうちにもう1人がほかのメンバーを呼んできていたのだ。僕はここで自己紹介をしていた。
さっきまでまで看病してくれていた女の子は「桜月 要」生粋の日本人で黒髪、黒目。髪は肩ほどで切りそろえ、右端の前髪だけを長く伸ばしている。身長は150cmほどで、その...スレンダーな体格をしている。性格はすごく母に似ていると思う。持っているメモリアル・ヴァフェは「お守り」で、発動する異能は防御、いわばシールドらしい。
みんなを呼びに行ってきた男の子は「日澤 蓮」赤い髪をしており、身長は160cmほどでどちらかとほっそりしている。また性格もさっぱしりているので付き合いやすい。持っているメモリアル・ヴァフェは「懐中時計」で異能は一日に一度1分間体感時間を延ばすというものらしい。また時計の首にかける鎖の部分が長く、鞭のように使っているらしい。
あとから来たもう一人の男の子は「夕霧 爽」黒髪でくせっけぼさぼさとした髪型をしていおり、165cmと高くひょろっとしている。いつもほのぼのほんわりしており眠たそうにしているらしい。いざというときはしっかりするといわれたが本当なのだろうかと思わざる負えない。持っているメモリアル・ヴァフェは「小太刀」で、異能は発動したことがないので分からないらしい。
最後はさっきから敵意という熱烈な視線を向けてきてくれている、この分隊の二人目の女の子の「清先 木陰」だ。ポニーテールをしており、身長は「要」と同じぐらい。性格は仲間思いらしいのだが、人見知りらしく初対面の人にはおびえる.....ではなく、熱烈な敵意を向けてくれるみたいだ。僕の胸に突き刺さる、この嫌な視線は敵意じゃないと信じたいっ信じたいっっ。持っているメモリアル・ヴァフェは「双眼鏡」で、異能は遮蔽物無視の索敵、位置把握というものらしい。主に援護に回るので前線には立たず、一歩引いたところで待っているらしい。
自己紹介も終わり、話す話題がなくなった僕たちの間には何とも言えない沈黙が広がっていた。あちらは4人組でなにか小声で相談しているようだが、こちらは1人で気まずさに駆られてる。気分はさながらはじめての面接だ。緊張が長く続き、次第に手汗が出始め、足をもじもじしてしまう。目線も下のほうを見てしまいがちになる。あちらも対応に困まっているらしく、ぎこちない愛想笑いを浮かべるしかないようだ。1人はにらみだが..。
ずるずると時間が過ぎ、何でもいいから話しかけようと僕が口をひらいたその時だった。
けたたましいサイレンと、冷静なアナウンスが耳にぶつかったのは....
アナウンスの内容はヘイディファイントの大群がここ、要塞都市にむかってきているというものだった。数は数百、未確認ヘイディファイントが1体居る、という大勢力が向ってきているのだ。他の4人、もちろん僕にも動揺が走り、思わず立ち上がる。それもそうだ、迫っている敵が強大ということもあるが、前回のヘイディファイント出現からまだ1週間とたっていないのだから。今までにも時たま世界各地で確認されているこういう現象のことを「例外的出現脅威」というのだが、こんなにくるのが速いのは聞いたことがない。
だが、いつまで戸惑っていても仕方がない。他の4人も部屋に行き、すでに戦闘服(ワイヤーを利用したアシストスーツ)に着替えはじめ、手元にはメモリアル・ヴァフェがあるという状況だった。僕も部屋に戻り、さっき支給されたばかりの服を着込む。スーツはぴっちりとしていたがすぐに体になじむものだった。鞄から純白のL96A1を取り出し、担いだ。他の男子と木陰さんは寮を出てすぐに近くに集合場所にむかっており、もう部屋にはいなかった。
「柊く~ん、はやくはやくっ」
男子部屋の入り口から前かがみになり要さんが手招きしていた。わざわざ待たせるいるので早くいかなければと思い、僕は小走りで外に出た。
アナウンスがはいって、まだ15分だというのに集合場所には200人程度の人数と八足式移動砲台、輸送バスが数台用意されている。周囲は緊張がひしめき、ピリピリとしていた。荒い息遣いやコツコツとリズムよく刻まれる貧乏ゆすりの音が聞こえる。肌にまとわりつくような空気。非常に嫌な感じだ。顔を動かさず、ちらりと隣を見ると日澤くんと目が合う。すると、彼はにかっと笑った。こんな状況での笑顔はとても暖かく自然と気持ちが落ち着いっていった。
輸送バスの振り分けが決まり、ぞろぞろと人がバスに入っていく。数十分後には戦場にいるのだろう。そう思うと、いよいよ、というやる気と不安がわきあがっってきた。
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