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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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A's編 その想いを力に変えて
A's~オリジナル 日常編
  48話:皆でお花見

 
前書き
 
明けましておめでとうございます。(おそっ)

だいぶ時間かかっちゃいました、いつもながら。
折角の冬休みも部活の合宿とかで、結局更新とかできませんでした。申し訳ないです。
 
 

 
 


春休みが明け、今日は始業式。
ピンク色の桜が舞い散り、地面へ吹雪のように降り注ぐ。

だが、この季節になると、どうにも体がだらんとしてしまい、大変だ。

「ほんとに、いい陽気」
「うん…それはいいけど、眠くなって困る~…」
「ファイトだよアリサ。明日からクラスメイトのはやてに、居眠りキャラだと思われちゃうから」
「うっ…それは嫌!」
「にゃははは…」

そんな会話をするのは、聖祥小学校の四年生へとなった四大美少女だ。
この年も何かの縁か、四人全員が同じクラスとなったのだ。

「しっかし、ねぇ…」
「「「…?」」」

その時、先程まで眠そうにしていたアリサが腕を組み、少し不機嫌そうに言う。
他の三人はそんな様子のアリサを見て、それぞれ首をかしげる。

「あいつはもう、どうしようもないわね…」
「「「……あぁ~…」」」


そう言ってアリサは教室窓際の一番後ろの席を睨み、三人もそこでようやくアリサが不機嫌な理由がわかった。

そこで頭を埋めて居眠りをしているのは、最近“寝る子は育つ”という言葉を体現するかのように、少しずつ身長が伸び始めている人物―――士だった。

今回も士のいう“腐れ縁”というやつが関係したのか、なのは達四人と同じクラスになった士。
そしてこれまた驚異的な引き運の強さにより、彼は誰もが羨む最高の席を手に入れたのだ。

「士君はもう、居眠りキャラで定着してるから、どうしようもないね」
「それは同感」
「席が離れちゃったから、授業中起こすこともできなくなっちゃった…」
「あはは…」

四人がそれぞれ、呆れながら言う。
そんな事も知らずに、士はそのまま眠りこける。

その時、そういえばとアリサが話題を切り出してきた。

「今年って皆でお花見って、まだやってないよね?」
「あ、タイミングのいい日に雨が降っちゃったりとかで、流れちゃってたね」

アリサが切り出したお花見とは、フェイトがやってくる前にもやっていた、なのは達三人の毎年の恒例行事なのだ。
大人達と一緒にやった年もあれば、子供達だけでやった年もある。

「お花見って…あれだよね。桜を見ながら、皆でお弁当を食べる会」
「ん~…要約しすぎな気がするけど、まぁだいたい合ってるかな」
「お花を見て、のんびり楽しく過ごしたりとか…」
「過ぎ行く季節とか、咲いて散っていく桜に、風流を感じたりとかするのがメインの目的かな?」
「大人の人達は、お酒飲んではしゃぐのがメインのような気もするけどね」
「因みに士君はいい絵が取れるって張り切ってたりするけど」
「へぇ~…」

フェイトのちょっと外れた概念を訂正するように、三人がそれぞれ口出しする。それに対しフェイトは関心するように声を上げる。

「ん~っと…じゃあ今週末とか、皆予定はどう?場所は、いつものところを私が抑えられるんだけど…」
「え~っと…土曜日なら一日OK!」
「同じく!」
「私は土、日OK!」
「じゃあ四人は決定ね。あとは士君なんだけど…」

とすずかが言いながら、士が寝ている筈の彼の席がある方向へ振り向こうとすると……

「俺は土曜は空いてるぞ」
「「「「ひゃぁあっ!?」」」」

当に士はすぐ近くまでやってきていた。それが四人にはいきなり現れたように見えて、思わず驚いてしまった。

「なんだ、お化けでも見たように驚きやがって…」
「つ、士!あんたいつの間に起きて…!?」
「お前が、酒が云々言ってた時だったか?」
「なんで疑問形…」
「ほんと、気づけなかった…」

四人共胸を撫で下ろすように安心する。
それを見た士は少し不満げにしていた。

「じゃ、じゃあ五人は決定という事で……場所は余裕あるから、各自でお誘い合わせの上でってことで」
「「「おぉ~!」」」

「じゃあ早速、心当たりにお電話を…」
「私も!」
「クロノ、電話繋がるかな…?」
「パパにメールしとこ!」

そう言ってそれぞれ携帯を取り出し、連絡をし始める中、士は頭を掻きながら自分の席に戻っていく。
それを見たアリサは、不思議に思って士に尋ねてみた。

「士は誰かに連絡しなくていいの?」
「ん~?まぁ管理局側はフェイトやなのはが回せばいいし、はやてはすずかがやってるだろうし。俺個人の方も連絡しても、管理局関連が来るんだったらアウトだからな」

ふ~ん、と言いながら、アリサは一つの考えに辿り着き、笑みを零す。

「あんた、意外とボッチなのね」
「ふざけんじゃねぇぞ…!」






























そして翌日。
今日はいよいよ、はやてが復学してくる日だ。

教室ではなのは達がわくわくしながら待っていて、それを後ろの方から眺めていた士は小さく微笑んでいた。

「は~い、おはようございます!今日は皆さんに、新しいお友達を紹介しようと思いま~す」

そこへ扉を開けて入ってきた先生が、笑顔を振りまきながら言う。
すると教室にいるクラスメイトは歓喜の声を上げ、席が隣の人と転校生の話をし始めた。

「先生!その転校生って、男の子ですか?それとも…」
「ふふ、今回は可愛い女の子よ♪」

『『『『『いぃよっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!』』』』』

先生の一言に、クラスの男子のほとんどが歓喜の叫び声を上げる。それにはさすがに他の生徒も耳を塞ぎ、先生も苦笑いを浮かべる。

『遂に俺達にも春がやってきたぞー!』
『四大美少女は既に士の手にかかってるからな!』
『今度こそ、やってやるぞ!』
『士ばっかにやらせてられっか!』

それぞれが歓喜して、新たな決意を固めていく中、士はその光景を呆れながら見ていた。

(てめぇら…いったいいくつだよ…)

まぁ士のツッコミはごもっともだが、読者の皆さんは突っ込まないでくださいね。

「じゃ、じゃあ早速入ってきてもらいましょうか…」

その光景に担任の先生は戸惑いながら進行させていく。
先生は顔を教室の扉に向ける。それに合わせて男子陣はザッと一斉に顔を向ける。

「八神さ~ん!」
「は~い!」

先生の呼びかけに扉の向こうにいる人物が答えると同時に、教室の扉が開く。
そこにいた人物を見て、男子だけでなくクラス中の全員が声を漏らす。

そこにいたのは紛れもない、士やなのは達が知っている八神 はやてだった。
聖祥の白い制服を身に纏い、茶色の髪を揺らしせっせと車イスを動かすはやては、教卓の近くまでやってきて皆を見るように方向転換する。

「初めまして、八神 はやてです。よろしくお願いします」

関西弁のなまりがあるものの、標準語でペコリと挨拶をする。

すると……

『『『『『おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』』』』』

先程よりも大きな歓喜の声が響き渡る。さすがにこれにはクラス中のほとんどが驚き、耳をふさぐ者が多数出た。

『美少女キターーーーー!!』
『可愛い子キターーーーー!!』
『関西弁キターーーーー!!』
『めっちゃタイプキターーーーー!!』

うるさい。
それ以外に言えることがない程、男子勢が騒がしすぎた。
これには先程外にいたはやても耳を塞ぎながら苦笑し、他の生徒は勿論のこと、なのは達も含め眉を寄せていた。

「こ、こらっ!静かにしなさい!」
『『『『『はいっ、先生』』』』』
「うぇ、あ…うん…」

注意した先生も、いきなりの返事に気おくれしてしまう。

「ま、まぁ取りあえず自己紹介ってことでいいかしら、八神さん」
「あ、はい」

先生は切り替えるようにそう言って、はやてに促した。

その後、はやては色々と話し始めた。
趣味や得意なこと等、色々と。そして自分の足が不自由なことと、そのことで迷惑をかけてしまいうかもしれないと、付け加えて話した。

それに対し、誰が文句を言う訳もなく、皆素直に受け入れてくれていた。

「じゃあ八神さんの席は……あそこね」
「はい!」

そう言って先生が指差した先は丁度士の横。いつの間にか空席があった場所だ。
するとクラス中の視線がこの左角へ集中して、さらにそこから半分ぐらいの視線が士へと向かった。しかも俺に向かった視線のほとんどが負のオーラを纏っていた。

そんなうざったらしい視線を受けながらも、せっせとやってきたはやてへ視線を向ける。

「士君、これからよろしくな」
「あぁ。できる限りの手伝いはするつもりだ」
「ふふ、おおきにな」

はやてとそんな会話をしていると……

『『『『『この野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』』』』』

「へっ!?」
「なっ!?」

席に座っていた男子一同は一斉に立ち上がり、雄叫びを上げた。

『門寺貴様ぁぁぁぁ!何故転校生とそんなに仲がいいんじゃぁぁぁぁぁ!!』
『貴様転校生にまで手を出しとんのかぁぁぁぁぁ!!』
『俺達の春を返せぇぇぇぇぇぇ!!』
『くそがああぁぁぁぁぁ!!』

立ち上がった男子が、はやてと士の方へ向かおうとした。
が……

「立ち上がった男子!静かにしなさい!!」

そこに先生の一喝が飛んだ。
それには騒がしかった男子も静まり返り、ゆっくりと自分達の席へ戻っていった。

立ち上がった全員が席へ戻ったのを確認した後、先生は溜息をついた。

「まったく、なんでそんなことで騒ぎ立てるのかな~…」
『『『『『ごめんなさい……』』』』』

先生の怒りに素直に謝る男子一同。被害者になりかけたはやてと士は頬を引きつらせていた。

だが、彼らの怨念が消えた訳ではない。今も尚彼らが抱き続けている感情は、そのまま士に向かっているのだ。
士もさすがに気づいているが、彼はここでそれを表に出すような性格ではない。

「それじゃあ、改めて一時間目の授業を始めますね~」

そう言って先生は授業を始める。
だがほとんどの男子が話を聞いておらず、士へと憎悪の念を送る。

それに気づいている士は……わざとらしく窓の外を眺めていた。

これには男子一同が抱いていた怒りは一気に燃え上がっていく。
横のはやても、他の場所にいたなのは達もこんな雰囲気に感づいて、心配そうに士を見ていた。

そして―――

キーンコーン、カーンコーン…
「それじゃあ、一時間目はこれで終わりにします」
「起立!」

学校のチャイムが鳴り、先生も手を止めて授業を終わらせる。そして日直の人が号令をかける。

「気をつけ、れ―――」
『『『『『門寺ぁぁぁぁぁぁ!!』』』』』

だがその号令が終わる前に、男子は一斉に行動を開始した。
自分達が礼をした瞬間、グワッと勢いよく士の席に向く。それは勿論、士に強襲する為だ。

しかし、風で舞うカーテンのすぐそばにある士の席には、誰一人としていなかった。

『なっ!?』
『奴がいない!?』
『ば、バカな!あの一瞬で教室を出たとのか!?』
『俺達の強襲を予期していたというのか!?』
『くそっ!追うぞ、野郎共!』
『『『『『おう!!』』』』』

なんという統率力。そして行動力。彼らは一瞬にして士が教室を出たと推理し、ドタドタと教室を後にした。
これには教室の他の生徒や先生も驚き、茫然としてしまった。








その男子勢に追われている、士はというと…

「……行った、か…?」

―――窓の外にいた。

より正確にいえば、窓から一度外に出て、中からは見えないように身を屈んでいたのだ。

幸い車イスのはやてが通いやすくなるように学校側が配慮してくれて、この教室は一階にある。外に出ても何ら問題もなかった。
元より窓は喚起の為に開けており、士はそれを利用したのだ。

そして教室の中が静かになったのを確認してから、士は警戒しながらゆっくりと立ち上がった。

「んっしょ……ん…?」

すると丁度顔が窓の淵から上に出たとき、不意に差し出されている誰かの手に気が付いた。
なのは達の誰かか…と思いながら見上げると、

「…大丈夫かい?」

そこにいたのは、これまた(士的には)珍しい緑色の髪の毛を持つ少年だった。
見知らぬ人物の登場にちょっと戸惑っていると、窓の縁に置いていた手を取られ引っ張られた。

足を窓の縁に足をかけ、引っ張られた勢いを利用して教室に入る。

「っと…ありがとよ」
「いやいや、礼には及ばないよ」

士の礼にも、少年は手を振りながらそう言った。

「で、え~っと…」
「あ、ごめんごめん。会ったのは初めてだから、自己紹介しないとね」

緑髪の少年は少し照れながら再び手を差し伸べてきた。

「僕は沢渡(さわたり) カオル。よろしくね、門寺君」
「あ、あぁ…ってなんで俺の名前を?」
「そりゃあ知ってるよ。この聖祥の四大美少女が寄っていく異性っていうと、君しかいないよ?」
「なんだそりゃ…」

緑髪―――カオルの言葉に思わず士は眉を寄せる。

だが、カオルの言ったのは間違いではないが……実際はもっと酷い。
ここでは言えないあ~んな事やこ~んな事(内容は皆さんのご想像にお任せします)などが、上級生や同級生の間に広まっていたりしているが、そんな事は士の耳に入る訳がなかった。

「…てか、教室の様子が変なんだが?」
「他の男子の行動力の高さに驚きを隠せないみたいだね。見てる側としてはちょっと面白いけど」

と士の質問にカオルは、クスリと笑いながら小さ目な声量で答えた。

「でもまぁ、そんな事は知ったこっちゃないって感じの人もいるみたいだけど…」
「ん…?」

そう言ったカオルの視線を追っていくと、士の視界に一人の生徒が映った。

士とは正反対の廊下側の列の丁度中央の席に座って、黙々と本を読み進めていワインレッドの眼鏡をかけた少年。真っ赤に染まっている腰まで伸びてるんじゃないかと思われる長髪を、頭の上の方で纏めていた。

「あいつは…?」
「うん。去年一緒のクラスになったちょっとした知り合い、というか友達、かな?」
「何故疑問形…」
「はは、実はね……駆紋(くもん) 龍也(りゅうや)っていうんだけど、彼はあんまり感情や思った事を表に出さないんだよ。というか、かなりの現実主義者(リアリスト)でね」

そう言いながら、少しばかり悲しげな視線を彼―――龍也の背中に向け続けるカオル。それを見た士は、先程の友達(疑問形)発言の理由がわかったような気がした。

「…って、そろそろチャイムなりそうだね」
「ん、あぁ…言われてみればそうだな…」

そんなこんなしている間に、教室の時計の針は次の授業開始の二、三分前を指していた。
クラスの何人かはそれに気づいてようやく行動を開始している者もいれば、ただ机に座ったままぼ~っとしている者もいた。

「じゃ、僕はそろそろいいかな」
「あ、あぁ。これから一年よろしくな」
「こちらこそ、面白いところ沢山見させてもらうよ」
「なんだそれ」

ふふふ、と笑いながら自分の席に戻るのか、士から離れていくカオル。それをカオルの最後の言葉に表情を歪めながら見送る。

「―――…って士君、戻ってたんか?」
「あ、はやてか。ついさっきな」

とそこへやってきたはやてに声をかけられて、表情を戻す。

「そろそろ授業始まるが、大丈夫か?」
「士君が手伝ってくれるんやろ?」

それはそれは、と微笑を浮かべながらイスを引いて腰を据える。

「まぁ、これからよろしく」
「こちらこそ」

そう言って、はやてと士はお互いの顔を見て笑顔を見せ合った。



―――因みに、

士を追いかけて教室を出ていった男性生徒達は、その後授業があるにも関わらず校内を駆け回り、ようやく教室に士を見つけた時には、全員廊下に立たされたのだった。


























それから数日が経ち……遂にやってきた週末。

海鳴のちょっとした花見の名所、海鳴公園の一角にて、無数のレジャーシートが敷き詰められ、管理局やなのは達の親御さんやら沢山の人がガヤガヤとしてた。

『それでは、お集まりの皆さん、お待たせしました~!本日の幹事を務めさせてもらいます、管理局執務官補佐、エイミィ・リニエッタと…!』
『高町 なのはの姉で、エイミィの友人の一般人!高町 美由希で~っす!』

電源をつなぎ合わせ、マイクに声を伝えるエイミィさんと美由希さん。それを聞いた参加者達は二人に拍手を送る。

『それから、今回の運営の責任者を買って出てくださいました…!』
『管理局メンバーにはお馴染み、リンディ・ハラオウン提督に、ご挨拶と乾杯の音頭をお願いしたいと思いま~す!』

エイミィさんがそういうと、脇で控えていたリンディさんが前へ出てくる。

『は~い皆さ~ん、こんにちは~!今日は綺麗に晴れましたね~!
 こちらの世界の皆さん…特に関係者のご両親、ご兄弟の皆さん方は、私達管理局や次元世界の存在や実情、説明を受けても、未だに馴染みが薄いという方もいらっしゃるかもしれません。こういった集まりを通して、双方の進行を深めるというのも、貴重な機会かと思います。
 ……とまぁ、固い話はお題目として置いといて、今日は花を愛で食事を楽しんで皆で仲良くお話をして過ごしましょう!それでは、今日のよき日に…かんぱ~い!』

『『『『『かんぱ~い!』』』』』

とまぁ、リンディさんの元気な乾杯の音頭で始まりを告げた今回の花見。
メンバーは地球のなのは達の家族などと、管理局側で時間があって暇な人達などで構成されており、総勢五十人近く。結構大所帯なものとなっていた。

「はぁ~…なんだか大人数になっちゃったね~」
「見境なく誘うからだろ」
「っていうか、繋がりが多すぎたからじゃないかな?美由希さんからエイミィへの誘いで、エイミィ、アースラクルーの殆どを誘ったみたいだし…」
「家のパパなんか、着いて早々に士郎さんともう飲み比べしてたわ…」
「にゃはは…あの二人仲良しだもんね~…」

酒か……久しぶりに飲みたいねぇ~…。まぁ、この体じゃ飲めないから仕方ないが。

「それから、石田先生もいらっしゃるって」
「え、でも…石田先生って、管理局の事とか魔法の事とかって…」
「知らねぇんじゃねぇの?」
「…あ、そういえば…」

っておい、忘れてんじゃねぇよ。そこ結構重要だろうが。

「一応内緒にせなあかんけど、まぁ平気やろ。リンディ提督やレティ提督にはお願いしといたし…」
「そっか」
「じゃあ、私達も内緒にしとかないとね」
「なんかあったときはフォローも忘れずに、だな」

そうだね、という風にはやて以外の面子が頷く。

「さて!それじゃあボチボチばらけようか。ざっと挨拶回りして、軽く食べて、それから皆で特等席行こっ」
「特等席…?」
「…って、なに?」
「内緒の場所があるの」
「すっごく綺麗な場所」
「撮りがいがあって、いい絵が撮れるんだ」
「「なるほど…」」

二人は俺の言葉に納得するように何度も頷いていた。なぜに…?

「士が撮りがいあるっていう程だから、かなり良さそうな場所だね(ヒソヒソ)」
「そやね。まぁなのはちゃん達もそう言ってる訳やし、間違いないやろ(ヒソヒソ)」

今度は二人で何やら内緒話。何なんだ…?

「それじゃあ行こ、すずか。挨拶回り」
「うん。じゃ、また後でね」

アリサはそういうと、すずかを連れて早々に大人達の中へと紛れていった。

「ん、私も分離や。レティ提督とか、アースラの人達にご挨拶せな」
「私も、さっき武装隊の人を見かけたからそっちに挨拶してくる」
「おう」
「いってらっしゃい」

そして今度ははやてとなのはが離れていく。というか、場所狭いからはやては車イス動かすの大丈夫か?

さて、俺はどうするか……
そう思いながら辺りを見渡すと、なんか大きな髪を動かして肉にがっついている奴がいた。

「おい、あれ…」
「?どうしたの士?」

まだ近くにいたフェイトに声をかけ、その肉をがっつく奴を指し示した。
フェイトが丁度目視したときには、そいつは近くにいたアースラスタッフ―――アレックスとランディに牙を向けていた。

「止めるべき、だな…」
「そう…だね…」

フェイトは少し眉を寄せたまま、奴―――フェイトの使い魔、アルフの元へと走っていった。
アルフの元に到着したのを見届けてから、俺はフェイトの後を追うように歩き出す。

「皆で食おう、なぁ?」
「嘘だな」
「あぁ、あれは野生の目だった…」
「噛むぞ?」
「脅さないの」

変な寸劇の一部を目撃し、少し笑みをこぼした。首から下げていたカメラを構え、シャッターを切る。

「そんなに肉が食いたいなら、なんか作ろうか?」
「おぉ!士、いいのかい!?」
「あ、あぁ。さっきなんかの材料が入った、どっかのスーパーのビニール袋を持ったクロノがいたからな。そこから分けてもらえれば、なんか作れるとは思うが」
「ほんとかい!?ほんとにほんとかい!?」
「だぁあっ、顔近い!鼻息荒い!」

レンズから視線と共に顔を上げ、アルフに提案すると勢いよく迫ってきた。そんなに興奮するな!逆に暑苦しいわ!

「じゃあ約束だよ!」
「あぁ、できたら来い。お前の鼻ならこんな中でも嗅ぎ分けられるだろ?」
「勿論さ!期待してるぞ♪」

そう言いながら機嫌良さそうに鼻歌を始めるアルフ。

「大丈夫なの、士?」
「ん?な~に、料理ができない訳じゃないんだ。こいつの舌を満足させるもんを作ってやるさ」

そんな会話をフェイトとしていると、少し遠くの方からエイミィさんの声が聞こえてきた。声色からして何やらテンションが高いが…何かあったか?

「?何だろう?」
「あぁ、カラオケやってるみたいだね」

遠目で見る限り、どうやらそうらしい。マイク持ってハイテンションなエイミィさん。そういえばエイミィさんって歌上手いのだろうか?後で聞いてた人に聞いてみるか。

「フェイトちゃん、歌ってくれば?」
「え?」
「お~、いいじゃんフェイト!リニス直伝の歌!」

そこで急遽ふられたフェイトは、頬を赤らめておどおどし始めた。

「え、いや…は、恥ずかしいよ…(それに士の前でなんて…///)」
「えぇ~?フェイトちゃん、結構上手いって聞いてるけどな~」
「そうそう!」
「え、あ、え~っと…そのぉ…」

「―――何が恥ずかしいの?」
「子供をいじめているのはアレックスとランディ、それに門寺か?」

そこへやってきたのは、金髪気味のショートヘアを振りまく女性―――シャマルさんと、それとは逆に長いピンク色の髪を揺らしている女性―――シグナムだった。

「シグナム、シャマルさん…」
「や、やだな~シグナムさん!滅相もない!」
「ちょっと歌を勧めただけですよ…」
「俺は傍観していただけだ」
「それはそれでマズいんじゃないのかい…?」

いいんだよ、こういうのは見てる方が楽しいんだ。

「歌?」
「あぁ、あの音楽端末と拡声器が一体化したデバイスか」
「シグナム、地球(ここ)ではカラオケって呼んどけ。なんかあってからじゃマズい」
「む、そうか…」

それにしても歌か、と呟き、シグナムはじぃ~っとフェイトを見つめた。

「ぁ…シグナム、なんで私をじっと見るの…?」
「いいじゃないか、聞かせてくれテスタロッサ」
「えぇ!?」

それまた意外にも、ふ、と格好いい微笑を浮かべながらフェイトに言うシグナム。それを聞いてフェイトも再びあたふたし始めた。

「あ、なのはちゃんとユーノ君がいた。なのはちゃ~ん!ユーノく~ん!フェイトちゃんの歌、聞きた~い?」

少し離れた場所にいたなのはとユーノを見つけ、シャマルさんは大きな声で尋ねてみる。すると二人は一瞬びっくりした顔をしたが、すぐにお互いの顔を見て笑いあってから、

「聞きたいで~す!」
「僕も~!」

と返してきた。

「士君、あなたはどう?」
「そりゃ勿論、聞いてみたいですよ」
「も、勿論って…!」
「お~い!次フェイトが歌うって!」

シャマルさんの質問の返答に何か言おうとしたフェイトだったが、アルフの大きな声に阻まれたと同時に、外堀を埋められてしまった。
ナイスだアルフ、とグーサインを出すと、アルフも同じように返してきた。

「む~…み、皆…下手でも、笑わないでね…?」

少し恥ずかしそうに言うと、皆が拍手を送った。

そして用意された場所に静かに立ち、ゆっくりとした動作でマイクを構えた。それに合わせて、俺もカメラのレンズをフェイトへと向ける。








ふぅ、とフェイトが息を吐くと、周りからわぁっと握手喝采が起きた。
フェイトはペコリと頭を下げて、そそくさとその場から離れていき、俺達のところまで戻ってくる。

「は、恥ずかしかったぁ……」
「テスタロッサ」
「は、はい」
「…いい歌だ。お前は歌が上手いんだな」
「あ、ありがとうございます、シグナム…」

シグナムにしては珍しい褒め言葉をもらって、恥ずかしそうに頭を垂らした。

「テスタロッサちゃん、すごいわね…!なんだか、ドキドキしちゃった」
「フェイトは歌上手いんだよ!」
「うぅ…」
「よい歌を聴くのは好きだ。よければ時々聞かせてくれるか、テスタロッサ?」
「ま、まぁ…ご希望でしたら…」
「ふ、それでいい」

するとフェイトは、今度は俺の方を向いてきた。

「つ、士…どう、だった?」
「…俺が文句を言うとでも?」

俺は笑いながらそう言って、フェイトの頭にポンッと手を乗せる。

「よかったよ、とっても。よかったら俺にも時々聞かせてくれよ?」
「う、うん…!」

俺がそういうと、嬉しそうな笑顔を見せてくるフェイト。最高のシャッターチャンスだ。俺はカメラを構えてフェイトの笑顔を写真に収める。

もっとも、その奥で威嚇するアルフと肉を持っていこうとするシャマルさんがいなければ、もっといい絵になっていただろうが……

「しかし…お前はいい加減、その言葉使いを止めろというのに…」
「そ、そんな事言っても…“年上の人には丁寧語”というのは、うちの家庭教師の教えなんですよ
 まぁ、あれです。模擬戦の勝率が、五割を超えるようになったら、胸を張って対等に話せますかにね…えへんっと」

えへんっ、のところで少し恥ずかしめに小さく胸を張るフェイト。

「なんだ、それじゃあ一生無理だろ」
「無理じゃないです!まだまだこれから、身長も魔力も伸びますしね」
「背が伸びたぐらいで、早々強くなるものでもなかろうに」
「まぁ、見ててください」
「ま、私も立ち止まってはいないからな。精々走って追いついてこい」
「はい。なるべく早めに、追い抜くつもりで!」
「ふ、生意気な…」

なんともまぁ、楽しそうに話し合うもんだな…。俺はそう思いながら、再びカメラを構えて、シャッターを押す。

「シグナムさん、ご機嫌ですね~」
「わかります?シグナム、テスタロッサちゃんがお気に入りだから」
「フェイトも、なのは達とはまた別の意味で、シグナムの事好きみたいだしね」
「結構、名コンビかも」

とまぁ大人達(使い魔もいるけど)も、二人の話しあう光景を見て、嬉しそうに話し合う。

「ところで、だ」
「ん?」

そこで突然話を振ってきたのは、先程までフェイトと話をしていたシグナムだった。

「お前は歌わないのか?」
「は…?」
「そ、そうだよ!士も歌ったらどう!?」
「な、なんだよいきなり…」

フェイトが俺に詰め寄ってきる。

「そうね、私も聞いてみたいわ、士君の歌」
「フェイトも歌ったんだし、ここで歌わなかったら男が廃るぞ!」
「シャマルさん、アルフまで…」

はぁ…そう言われると引く訳にはいかないな…

「わかったよ、行ってやろうじゃねぇか」
「「「おぉ!!」」」

俺はそう言いながらカラオケのある場所へ向かっていく。

「エイミィさん、次マイクもらえますか?」
「お、士君がいきますか!いいよいいよ!聞かせてもらうよ!」
「がんばってね!」
「はい」

まぁ、何を頑張ればいいのかわからんが……

「ん~…曲どうすっかな~…」

そう呟きながら機器を操作していると、一つの曲が目に入った。

「っ…おいおい、なんでこいつがここに…」

俺は少し驚きながら、笑みを零した。

「いいじゃねぇか、丁度今年で十歳になる訳だし、これでいこう…」

俺はその曲を選択して、エイミィさんから渡されたマイクを構える。

「それじゃいこうか……『The Next Decade』!」








選択した曲を歌い切り、一息入れると、ギャラリーが拍手を送ってくる。

手を振りながらその場から離れて、皆の元へ行くと……

「凄かったぁ…」
「なんか大人っぽい感じが出てたな…」
「子供とは思えない歌唱力だった…」

と褒めてくるシャマルさんにアレックス、ランディ。

「さすがだな、門寺」

と笑みを浮かべながら小さく拍手を送るシグナム。
そして……

「………」

なんだかよくわかんない表情をして、まったく動かないフェイト。多分この中じゃ一番のリアクションだろう。

「フェイト、大丈夫か?」
「ふぇ!?あ…う、うん…だ、大丈夫…」

俺が声をかけるとようやく目の焦点を合わせて俺を見つめてきた。が、すぐに顔を垂らしてしまった。

「お、おい…フェイト…?」
「……か、かっこ…よかった…」
「ん?」
「さっきの士…格好良かった…」
「お…おう、ありがとう…」

頭を俯かせながら恥ずかしそうに言ってくるフェイト。その姿に少し驚きながらもお礼を言った。

「ふふ…」
「どうしたシャマル。不適な笑みを浮かべて」
「いえね…テスタロッサちゃん、かわいいなぁって思ってね」
「…?」

因みに。
偶々近くで聞いていたなのはとはやても、顔を赤くしていたのは、誰も知らないことであった。






















カラオケを歌い切った俺はフェイト達から離れ、ある場所へ向かった。

「よう、クロノ」
「…士か」
「あ、士君!」
「美由希さん、どうもです」

そこには軽装で汗をかきながら、鉄板焼きで料理をしているクロノがいた。その側にはなのはの姉で今回の幹事、美由希さんもいて、どうやらクロノを手伝っているようだった。

「随分と旨そうだな」
「クロノ君、凄いんだよ。何をやっても手際いいし!」
「へぇ…」
「士官学校では、サバイバルもやったからな。自分達での自炊はできて当たり前だ」

ほぉ、管理局はそんな事もするのか……

「となるとはやてはともかく、なのはやフェイトは心配だな」
「あ、そっか。なのはもそういうのやることになるのかな?」
「僕とはコースが違いますが、やると思いますよ」
「そ、そうなのかぁ…」

クロノの返答に頬を引きつらせる美由希さん。

「姉としては、やっぱり心配ですか?」
「まぁ、そりゃあねぇ…。なんか、未だに想像できないんだよ。私の中では、なのははまだほんとにちっちゃい子供だから」
「僕の中では、あの子は初めて会ったときから、腕のいい魔導士でしたから。同じ人物を見ても、見解は違うものですね」
「まぁねぇ…」
「世の中そんなもんだろ」

三人でそんな会話をしていると、どこからか二人の人物がやってきた。

「あれ?お姉ちゃんにクロノ君、士君まで…なんで焼きそば作ってんの?」
「こんにちは~」
「見つかったか…」
「噂をすればなんとやら、か」

その人物とは、先程話題になっていた張本人であるなのはと、今日は人間姿の淫じゅ―――

「言わせないよ!」
「地の文にまで手を出すなこの野郎」

とまぁ、俺の地の文にまで介入してきたのは、例のごとくユーノである。

「誰かがこの鉄板セットを持ち込んで来ててさ、材料もあるし折角だからってエイミィが作り始めたんだけど…」
「当のエイミィが、注文だけ受けてふらりと出かけてしまって…この様だ」
「そうだったのか…災難な」
「あれ?士君知らなかったの?」
「俺もついさっきここに来たばかりだからな」

ふ~ん、と不思議そうな顔を俺の顔を覗き込んでくる。なんだ、その疑り深い目は?

「それにしても、おいしそうだね」
「おいしいよ~。もう少ししたら食べられるよ」
「そういえばユーノ、今日はフェレットもどきの姿じゃないんだな」
「一年経って魔力適合がだいぶ進んだんだよ。もうこの姿でいても問題ないんだ」
「ふ~ん…」
「え?じゃあユーノ、フェレットには戻らないの!?」

ユーノの発言に声を上げたのは、去年の春辺りではフェレット姿のユーノを撫でまわしていた美由希さんだった。

「あ、あの…えっと…」
「去年は急にいなくなっちゃって寂しかったんだよ?あの撫で心地が忘れなれなくて!」
「お姉ちゃん…あんまり無茶言っちゃダメだよ?フェレットモードはあくまでも仮の姿なんだから」
「は~い…」

美由希さんに言い寄られ、少したじろむユーノにフォローを入れたなのは。それに対して美由希さんは意外にもあっさり引き下がった。

「でもユーノ、あの姿になったら私のところにも来てね?是非撫でさせて!」
「ま、前向きに善処します…」

否、美由希さんはやはり諦めていなかった。いやはや、この人の執念も並のものじゃないな。

「クロノ、いじられキャラのいじられ要素が一つ消えたぞ。どうする?」
「ふむ、確かにそれはマズいな。次からは淫獣のところ主に突っ込んでいくと…」
「それだけは止めてくださいお願いします」

ちっ、ユーノの対応が速くなってきてやがる。今度からはどこをいじればいいのだろうか…

「…よしっ!六人前終了!」
「お疲れさん。ほれ」
「お、ありがとう士」

そんな会話の傍らで焼きそばを作り上げたクロノ。俺は近くにかけてあったタオルを投げ渡し、その苦労を労う。

「あ、あぁ!ごめんごめん!お待たせ~!」
「エイミィ、お帰り―――」
「遅い!何してたんだ!?」

慌てたような声を上げて、遂にエイミィが帰ってきた。それを出迎える美由希さんの言葉にかぶせるようにクロノは叫んだ。

「通信主任は色々挨拶も多いのだよぉ。はい、交代するよ」
「じゃあ美由希さん、交代してください」
「あ、いいの?ごめんね」
「ごめんね美由希ちゃん」
「じゃあ皆の様子見たり、何か摘まんだりしてくるね。すぐ戻ってくるから」

そう言って美由希さんはそう言い残し、少々宴会気味になってきた士郎さん達のいる方へと歩いて行った。

「よしクロノ君、材料も持ってきたから、久しぶりにあれをやっか!」
「あれ?…あ、例の焼きそばか」
「例の?」
「何か秘密が?」
「旨いのか?」

エイミィさんとクロノの間で交わされた会話の中に、意味深なワードが入っていて、俺も含め三人で疑問を投げかけた。

「いやぁ、士官学校の自炊の時に、よく作ってたメニューがあるのよ。結構人気もあったから、こっちの人達にもどうかな~って」
「わぁ~!」
「完成したら呼ぶから、よかったら食べてみてくれ」
「うん!」

その会話を最後に、なのはとユーノは別の場所へと移動していった。

「だが…なんで君は残ってるんだ?」
「いやなに、ちょっと飢えてる子犬に餌を作ってやろうとな」
「飢えてる子犬?」

俺の言葉に首をかしげるクロノと、なんとなく事の真相を察した様子のエイミィさん。

「材料ちょっともらっていいか?」
「あぁ、まぁいっぱいあるから少しなら…」
「できれば肉を大量に」

そういうと、クロノもあぁっと納得したように声を上げた。

「アルフか…」
「そ、あいつに約束しちまってな」

クロノに言い放ちながら、材料の中から肉八割野菜二割の比率で取り出す。

「んじゃ、片割れちょっち借りるぜ」
「あぁ。だがまぁ、気をつけろ」
「は?」

早速野菜などを炒め始めているクロノが、何か意味深なことを言ってきた。なんだ?油が跳ねるのを気をつけろというのか?

「クロノ君、スパイス入れるよ~」
「わかった」

肉を切りながら野菜を炒める様子を見ていたエイミィさんが、頃合いを計って用意していたスパイスを入れる。

すると、十分に離れていた筈のクロノがいきなりせき込み始めた。

「あ、ごめんクロノ君!スパイス飛んだ?」
「い、いや違う…最近少し、喉の調子がおかしくて……ゲホッ、ゲホッ」
「調子が悪い…となるとやっぱり、声変わりか」
「あぁ、そうか……」

いくら管理局で執務官を張るクロノとて、十四歳(今年で十五)の人間だ。体の成長を感じられてくるのも、人間として必然だ。

「少し背も伸びてきたし、もう十五歳だもんね~」
「未だにちっこいが」
「一言余計だ」
「ま、早いとこ身長で私を追い抜いて頂戴な」
「そうなる予定だよ」
「がんばって育ってね。立派に育ったら、私の旦那さん候補にしてあげるから」
「そんな重大事項を身内で済まそうとするな。足を使ってちゃんと探せ」
「クロノ君可愛くな~い」
「昔からだし、これからもずっと、可愛くなるつもりはない訳だが」
「ま…そういうところが可愛くもあるんだけどね」
「不本意だ」

とまぁ、ここまでの一連の流れを見てしまった感想を一つ……

「どぅぇきてる~」
「何故巻き舌にした…」

いやもう、なんかねぇ……

「それじゃフィニッシュ、火入れるよ!」
「火を入れる…?」
「ま、待て。ちょっと、速くないか!?」
「えぇい!料理は勢い!行くよ…!」

そう言ってエイミィさんが取り出したのは……酒。
それを鉄板の上に構え―――注ぎ込む。

「ファイアァァーーー!!」
「うわぁぁぁ!」
「のぉぉぉ!?」

立ち上がる火に照らされ、大きな声を上げて驚く俺とクロノ。

結果、俺の料理の方にも上手く熱がきて上手い具合に出来上がってくれたりもした。








その後、アルフに出来上がった料理を提供したり(本人は野菜が入っていたことに不満げだったが)、今後関わってくるであろう管理局関連の人達を見かけたので軽く話たり、酔っぱらったレティ提督(本人は否定)の暴走を止めにかかったり……

色々苦労もあったりしたが、今回の本題である花見……初めの方で話にでた『特等席』へと向かい、なのは達だけの六人で花見をした。写真もいい具合のものを撮れた。

でまぁ…色々と時間は過ぎていき、

『さて~、それでは。宴もたけなわではございますが…』
『日も落ちてまいりましたし…既に夢の国へと旅立たれてる方も少なからずいらっしゃるようですので…』
『ここらで、お開きにしたいと思いま~す!』
『それでは、さっきのくじ引きで配置された通り、片付けとごみ分別の分担をお願いしま~す』

エイミィさんと美由希さんの合図と共に、行動できる人達が次々と自分の仕事をこなしていく。
流石は大人。しっかり動ける人はちゃんとやってくれている。まぁレティ提督は完全に夢の中だが……

「士、レジャーシートのそっちの端、持ってくれる?」
「おう」

んで、今俺は片付けの方へ回され、アリサやすずかと共にいくつもあるレジャーシートを畳んでいく。

「こっちは終わったよ~」
「オッケー、こっちももうすぐ終わるから」

別の場所で片付けをしていたすずかもどうやら終わったらしい。

「士、急ぐわよ」
「はいはい、俺も早く終わらせたいしな」






















楽しい宴も終わり、それぞれがいるべき場所へ戻っていった。
そしてそれから数時間程の時間が経ち、現在は夕食後の夜中。

「それじゃあ、夜の練習に行ってきま~す」
「いってきや~す」
「は~い。気をつけてね~」

なのはと共に高町家の玄関を開け、夜の街へと出る。これからフェイトとはやてと一緒に、魔法の練習を行いのだ。

外に出て、人目の付かないところへ行くと、転移魔法を発動。集合場所であるフェイトのマンションの屋上へと辿りつく。

「よっ」
「なのは、士」
「フェイトちゃん、お待たせ」

既に来ていたフェイトに声をかけると、すぐそばに白い魔法陣が展開され、光ったと同時に車イスに乗ったはやてが現れた。

「っと…なのはちゃん、フェイトちゃん、士君。お待たせ」
「はやてちゃん」
「はやて、お疲れ様」
「俺達も今来たところだ」

車イスの車輪を回して、話しながらはやてが近づいてくる。その手には一個の杖らしきもの、デバイスが握られていた。

「新しいデバイス、どうだった?」
「ぶ~や。一個は壊してもうた」
「う~ん…大変だね」
「一戸は辛うじて使えるみたいやから、今日はこれでやろうかなぁ、と」

まぁ、これは仕方ないだろう。はやてが所有する魔力はかなりのもので、しかも術式はミッドとベルカの両刀だ。二つの術式を使う魔導士の事を一般的に『魔道騎士』なんて呼ぶらしいが、デバイスにとってはこれほどやりにくいものはない。

なのはやフェイトのレイジングハートやバルディッシュはミッド式を、シグナムやヴィータのレヴァンティンやグラーフアイゼンはベルカ式を想定して作り上げられ、使用されてきたものだ。
もし仮に、それらをはやてに渡していざやってみろ、なんて言うと前者はベルカ式に、後者はミッド式に対応できずに、最悪壊れる。と技術開発のマリーって人から聞いたことがある。

となると当然、そこらに転がってるような安っちぃデバイスは勿論の事、かなり調整されたデバイスじゃないと、はやての相棒(デバイス)としてその機能を使えないのだ。

先程出てきたマリーさんは他の技術開発の人達と共同で、はやてに合うデバイスを作っている最中なのだが、これがまた上手くいっていない。既に六、七個程、はやての手によっておじゃんになっている(本人の本意ではないのだが)。

「んで、今回ので八つ目か?」
「だいたいそんなもんやったかな」

まぁ“失敗は成功の元”とも言うし、いづれはやてに合うデバイスが出来上がるのを祈るしかないな。

「ねぇ、飛行制御やってる間、昼間の特等席の桜、見に行こうか」
「うん、いいよ」
「夜桜も綺麗そうやんね」
「夜桜か…またいい(もの)を持ってきやがって」

しかし、魔法の練習をしている間はカメラ使えないしな…畜生……

それじゃあ、となのはが切り出し、一度せき込んで、

「各自バリアジャケット、もしくは騎士甲冑、着装!」
「「了解!」」

なのはの指示と共に三人はバリアジャケット(もしくは騎士甲冑)を展開し、身に纏う。
それを見届けてから、俺はトリスを取り出す。

「それじゃあ俺も……変身」
〈KAMEN RIDE・WIZARD HURRICANE〉

一枚のカードを挿入し、バックルを回す。
すると上から緑色の魔法陣が現れ、俺の上から降りてくる。風が巻き起こり、魔法陣が俺を通り過ぎると同時に、俺の姿が仮面ライダーウィザード・ハリケーンスタイルへ変わる。

「では、デバイス起動なしでの飛行制御、レベル7の空中軌道の後、各自のトレーニングメニューに入りま~す!」
「はい!」
「了解です」
「はいよ~」

なのはの指示の元、三人は魔法を発動し、俺は魔力を運用し風を起こして宙に浮く。
海鳴の夜景を上から眺めながら、俺達はトレーニングを始める。

「桜、やっぱり空から見ても綺麗だね」
「うん、ほんと~」
「あ~…写真撮りてぇ…」
「あはは、ほんまやなぁ」
「っと、はやてちゃん、コースずれてる!合わせて!」
「あ、すんません教官!」

少しコースがずれていたはやてだったが、なのはがそれに気づいて修正させる。さすがは教官志望、大分様になってきてんじゃないの。

「それじゃあ、スピード上げていこうか!」
「「「了解!」」」

なのはの指示が飛び、俺達は飛ぶスピードを上げていった。


 
 
 

 
後書き
 
でまぁ、ちょっと最後があれですが……

次は感想より新たな設定を書きます。
主にオリ主が新たに得た力の詳しい情報と、オリ主が使用した魔法、それと今回出たオリキャラについてのものになると思います。

それではまた次回。
  
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