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久遠の神話

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第六十六話 聡美の迷いその六

「繊細な味といいますか」
「それぞれの素材を活かして」
「そうした味ですね」
「それが日本の味ですね」
 こう話すのだった、二人で。
 そして聡美もそのケーキをフォークを使って食べる、それで言うのだった。
「本当に日本のケーキですね」
「そう思いますね」
「はい、甘さは強くなく」
「それぞれの食材の味を活かしていますね」
「それがいいです」
 こう言うのだった。
「日本で最初に食べたのはうどんでしたが」
「うどんですか」
「はい、うどんです」
 それが彼女が日本に来て最初に食べたものだというのだ。
「空港から、関東の方の」
「成田空港ですね」
「確かそこです」
 ちなみにこの空港は三里塚という仇名がある、空港建設の時にその土地の接収で運動家達が抗議活動を起こしたのだ、尚この活動に賛同したとあるノーベル文学賞受賞作家や政党がこの空港を使って海外に出ていたりする。
「空港を出て東京に来た時にお腹が空きまして」
「それで、ですか」
「うどんを食べました」
「関東のうどんをですか」
「はい、それをです」
「確か関東のうどんは」
「その後で。数日後関西のうどんを食べたのですが」
 聡美がここで語るのは双方のうどんを比較してでのことだった、そのうえでマガバーンに対して話すのだった。その間もケーキを食べコーヒーを飲んでいる。
「味が全く違いますね」
「その様ですね」
「まず関東のうどんはスープ、日本ではおつゆといいますが」 
 それがだというのだ。
「濃い、辛いですね」
「味が濃いですか」
「色も黒いです、関西のうどんは色が淡くそして味も関東のものと比べて穏やかで様々なものの味がします」
 関東から関西のうどんの話もするのだった。
「私は関西のうどんの方が好きですが」
「それでもですか」
「最初に食べたものは関東のうどんです」
 こうマガバーンに話す。
「ギリシアの味とはかなり違います」
「そうですね、ギリシアの味とは」
「インドの味ともですね」
「我が国の味は日本で言うと全てカレーです」 
 その味だというのだ、ギリシアは。
「そうなります」
「あの料理ですね」
「カレーは御存知ですね」
「ギリシアにもあります」
 聡美の祖国であるこの国にもというのだ。
「ですがそれでも」
「それでもですか」
「日本のカレーは随分と独特ですね」
「私もそう思います」
 その本場のインド人であるマガバーンから見てもそうだというのだ。
「あれは和食です」
「そうですね、あのカレーは」
「インドの料理ではありません」
 こう言うのである。
「そして我が国の味は」
「日本では全てカレーと思われますか」
「そう考えられていることがわかります」
 はっきりと答える彼だった。 
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