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久遠の神話

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第六十六話 聡美の迷いその二

「楽しい思い出です」
「他にそうした方はおられますか」
「私と共にいてくれた女神ですか」
「他にはどういった方がおられるでしょうか」
「アテナ姉様がおられます」
 次に挙げられるのはこの女神だった。
「あの方が」
「知恵と戦いの女神ですね」
「はい」
 こう答える、それと共に。
 聡美はふと店の中にオリーブの木があるのを見た、そのうえでマガバーンにこんなことを言ったのである。
「今ここにもおられます」
「ここにもとは」
「日本にも来られています」
「アテナ女神がですか」
「オリーブは姉様の木なのです」
 アテネが築かれそこでアテネの守護神になった時に街の者達に贈ったのだ、そこからオリーブは彼女の象徴の一つになったのだ。
「ですから」
「日本にもおられるとなると」
「そしてです」
「そしてとは」
「春はです」
 今度は季節だった。
「春はペルセポネーのものです」
「春はその女神のですか」
「ペルセポネーはデメテル叔母様の娘でもあります」
 この辺りの血縁関係は今の日本人の考えでは中々受け入れられるものではないかも知れない、ゼウスとデメテルは実の兄妹、最初は姉弟だったがその関係にありながら結婚し子供をもうけてもいるのだ。これはゼウスとヘラでも同じだ。
「叔母様は豊穣と穀物の女神なので」
「それで、ですね」
「はい、ペルセポネーは季節を司り」
 母の力を受け継いでというのだ。
「春がその象徴です」
「春ですか」
「春となりますと」
「日本の春でしたら」 
 マガバーンはインド人だがこのことを知っていた、日本の春というと。
「桜ですね」
「あの花ですか」
「桜は御存知でしょうか」
「いい花ですね」
 聡美は微笑みマガバーンに答えた。
「とても」
「日本では春といえばあの花です」
「桜ですか」
「この辺りはギリシアと違いますが」
「ギリシアで桜は」
 これはというのだ。
「あまり、といいますか」
「殆どないですね」
「この国は至るところにあの花がありますね」
「日本人がそれだけ桜を愛しているということです」
「それ故にですね」
「日本には桜の木が多いです」
 その春がだというのだ。
「非常に」
「そうなのですか」
「それでなのですが」
 ここまで話してそのうえでだった、聡美にさらに言う。
「貴女お一人だけでなく」
「私だけでない」
「はい、そうです」
「では」
「他の神々のお力を借りられては」
 こう聡美にアドバイスするのだった。 
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