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フェアリーテイルの終わり方

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六幕 張子のトリコロジー
  3幕

 
前書き
 きょうだい と 精霊 の 主 

 
 はぐれていた姉には、ルドガーとジュードの推理通り、ローエンとアルヴィンが同行していたらしい。

 そこでフェイは、同行者の中に先ほど会ったばかりの人物がいるのに気づいて、急いで姉の下へ行った。

「お姉ちゃん。あのメガネのおじさん、だあれ?」
「ユリウスだよ。ルドガーのお兄ちゃん」

 フェイはユリウスを見上げた。ルドガーに兄弟がいた。自分と同じで上のきょうだいが。その事実は新鮮な驚きをフェイにもたらした。


 ルドガーが動いた。ユリウスの正面まで歩いて行く。
 フェイはエルと顔を見合わせ、それを追って、ルドガーの少し後ろに立った。

「言いたいことも聞きたいこともたくさんあるから、先に言っとく。さっき、助けてくれてありがとう」
「――大したことじゃないさ」
「大したことだろ。大精霊の攻撃ハネ返すなんて」
「そっちじゃなくて。俺がお前を助けることが、だ」

 ルドガーはこれ見よがしな溜息を長くついた。

「……何してるか教えてくれるよな、『兄さん』。ここまで巻き込んどいて黙秘なんて許さないからな」
「――――、オリジンの審判」


 オリジン。その名を聞いてフェイは手で反対の腕を掴んだ。

 アスカが口にした精霊である以上、ろくでもないモノに決まっている。もしその〈審判〉とやらがルドガーやエルに良くないものなら、フェイも彼らを留める側に回らなければ。

「オリ――何だって?」
「知らなくていい。今ならまだ戻れる」
「あくまで部外者扱いか」
「お前のためを思って言ってるんだ。巻き込んで悪かったと思ってる。だからこそ、これ以上は踏み込んで来るな」

 ルドガーはホルスターから真鍮の懐中時計を取り出した。後ろからだがわずかに、ルドガーが唇を噛みしめたのが窺えた。


「これは、エルたちのパパの!」

 エルがルドガーの腕に飛びつき、ルドガーが怯む間に真鍮時計を奪った。ルドガーが時計を手放してしまうと危惧したのかもしれない。

「君たちのじゃない」
「パパのって言ってるでしょ!」
「パパのでもない」
「そーなの! パパとルドガーの時計が一つになったんだから!」

 ユリウスが息を呑んだのがフェイにもはっきり分かった。


「――やはりこの子が、〈クルスニクの鍵〉か――っ」


 ユリウスの纏う空気が変わった。今、彼は何かの事実に気づいて、その事実を葬るために刀を抜こうとしている。

 他でもない、エルに向けて。
 フェイのただ一人の姉に向けて。

(お姉ちゃんをキズつける人。ゆるさない)

 瞬間、ユリウスの――刀に伸びるはずだった――手にバチン! と、大きな静電気が生じた。
 皆が皆、前触れもない現象に困惑を表した。
 その中で一人、フェイだけはユリウスを睨み据えながら、エルの肩を後ろから掴んで引き寄せた。

 一触即発の空気を壊したのは、剣呑な女の声。


「騒がしいわね。親子ゲンカなら余所でやって」


「ミ…っ」
「『ミラぁ』!!」
「……あなた、誰? 馴れ馴れしく呼び捨てにしないで」

 言い捨て、女は彼らの間を通り抜けようとした。

 ちょうど女がフェイたちの間を抜けようとした時、グゥ~とルルの腹が鳴った。
 女は、先の険しさが嘘のような優しい表情で片膝を突いた。

「お腹がすいてるの? おいで。何か食べさせてあげる」

 歩き出した彼女にルルは上機嫌で付いて行く。フェイもエルもはっとし、姉妹でルルを追いかけた。 
 

 
後書き
 前作では省いたミラさんとの関係に今回はプッシュしますのでミラさんとのシーンは多めです。分史ミラファンの皆さんお待たせいたしました(*^_^*)V そこかしこにミラさんがいますぜ(ニヤリ

 でもその前にクルスニク兄弟です。こっちのルドガーはちょい大人めにしてあるので、時計叩きつけイベントをちょっといじりました。兄さん呼びもあえて強調です。
 無個性型主人公のいい所ですよね、性格をストーリーに応じていじれるのって。 
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