とある星の力を使いし者
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第137話
麻生が作ったご飯で昼食をとる事になった。
食材は前々から麻生が買い足していたので、それほど困る事はなかった。
ちなみにメニューは豚しゃぶのオニオンソース、バジルスクランブルエッグ、にんじんとツナのジンジャーサラダになっている。
テーブルに並べられたご飯を見た打ち止めは目を輝かせる。
「すっごく美味しそう!!、ってミサカはミサカはご飯の匂いを嗅いでみる。」
すると、それに合わせるように打ち止め(ラストオーダー)のお腹がぐぅ~、と音を立てる。
それを聞いた愛穂と桔梗は笑みを浮かべる。
「恭介の作るご飯はそこらのレストランよりうまいじゃん。」
「それに関しては同意するわ。
愛穂もこれくらい、とは言わないけど炊飯器に頼らずにご飯を作ってね。」
「桔梗は一言多いじゃん。」
「そんなのはいいから、さっさと食べるぞ。
冷めてしまったら、美味しいご飯もまずくなる。」
麻生がそう言うと、一方通行以外はいただきます、と合掌してご飯を食べる。
「美味しい!!、ってミサカはミサカはご飯にがっつきながら言ってみる。」
「こらこら、食べ物を口に入れて喋らないの。」
「恭介の料理は結構食べてるけど、やっぱりうまいじゃん。」
三人が麻生のご飯を食べながら話している時、麻生は隣に座っている一方通行に視線を向ける。
一方通行は肘をつきながら、麻生のご飯を仏頂面をしながらも食べている。
「口に合わなかったか?」
麻生は一方通行に話しかける。
一方通行は麻生の方を見ずに答える。
「普通に食べる分には申し分ねェ。」
「じゃあ、どうしてお前はそんな表情をしているんだ?」
「・・・・・・」
麻生の問いかけに一方通行は何も答えない。
「今まで裏世界に生きていた自分が、こんな平和な風景を見ながら食事をとるのが納得できていないみたいだな。」
一方通行は何も答えていないのに、その心情を分かっているかのように麻生は答える。
そこで一方通行は麻生に視線を向ける。
「俺がテメェの一番うざい所を言ってやろうか?
そんな風に何でもかンでも知った風なクチを聞く所だ。」
「癇に障ったのなら謝る。
だが、俺とお前は似ている所が多々あるからな。
どうしても分かってしまうんだよ。」
「俺はテメェの事はさっぱり分からねェがよォ。」
二人が話をしている時、ふと愛穂と桔梗の会話が聞こえた。
「そう言えば、貴女は恭介のご飯を時々食べているの?」
「ウチの家に来た時は作ってもらってるじゃん。
まぁ、ウチの料理の修行を兼ねているけど。」
「ふ~ん、そう。」
それを聞いた桔梗は再びご飯を食べ始める。
心なしか何か怒っているように見える。
「桔梗、お前はあんな真似はしないのか?」
麻生が言うあんな真似とは、『妹達』を創り、一方通行を絶対能力者(レベル6)に進化させる計画の事だ。
前にも言ったが今の桔梗は無職同然のようなものだ。
何より、彼女自身もうあんな真似はしないと心に誓っている。
「ええ、もうしないわよ。」
愛穂がいる手前、そんな全警備員が動くかもしれない内容を言う訳にもいかず、遠まわしにそう言う。
一方通行や打ち止めはその二人の会話の意味が分かるが、愛穂だけは全くついていけてない。
「そうか。」
桔梗の答えを聞いて、麻生は柔らかい笑みを浮かべる。
おそらく、愛穂と桔梗の二人の前でしか浮かべない表情だろう。
事実、一方通行はその麻生の表情を見て鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしている。
「桔梗も俺のご飯が食べたかったら言ってくれ。
お前の為なら、別に面倒とは思わない。」
「そ、そう?
また今度の時にでもお願いするわ。」
さっきまでの雰囲気はどこ行ったのか。
顔を若干赤くしながらも、笑みを浮かべる桔梗。
すると、今度は愛穂の方が不機嫌そうな雰囲気を出しながら言う。
「ウチの時とは全然、態度が違うじゃん。」
「お前に関しては優しくすると、すぐにだらけるだろう。
愛穂はもっと頑張れば、いい女になる。
そうなれば、俺も態度を改めるさ。」
麻生の言葉を聞いた愛穂も何やら顔を赤くする。
打ち止めは突然、二人が顔を赤くした意味が分からず首を傾げ、一方通行は舌打ちをして、昼食を再開する。
昼食を終えた後、麻生は全員の皿を回収して洗う。
それらを終えると、麻生は言う。
「それじゃあ、俺はもう行くからな。」
「まだいても良いじゃんよ。」
「もっとミサカと遊んで、ってミサカはミサカはあなたの袖を引っ張ってみる。」
「服がのびるから止めろ。
これから用事があってな、それに向かわないといけないんだよ。」
打ち止めを引き剥がして、玄関に向かう。
「まぁ、用事なら仕方がないじゃん。」
「私も彼達も愛穂の家に居候するつもりだから。」
「そうか、それなら安心だな。
じゃあな。」
麻生は愛穂の部屋を出て、エレベーターに乗り、一階まで降りる。
美琴との待ち合わせであるコンサート会場に向かう。
数十分歩いた所で、今の時間を確認しようと携帯を出そうとポケットの中に手を入れた時、気がついた。
(愛穂の部屋に携帯を置き忘れた。)
現在の時間は分からないが、このまま愛穂の家に戻れば遅刻は確実だろう。
麻生は少しだけ考え、愛穂の家に戻る事にした。
あれがなければいざという時に、連絡ができない。
ため息を吐くと、来た道を戻る。
愛穂のマンションに再び戻ってきた麻生。
セキュリティの都合上、部屋の番号を入力して呼び出し、部屋からロックを解除してもらわないと入れない。
しかし、呼び出すのも面倒だと感じた麻生は、近くの機械に触れる。
目を閉じて能力を発動させ、セキュリティに潜入する。
数秒でセキュリティを解除して、ロックを解除する。
エレベータに乗り込み、一三階のボタンを押す。
一三階について、部屋の鍵を能力で開け、中に入る。
部屋に入り、リビングに向かう。
リビングからテレビの音が聞こえるので、誰かが見ているのだと思い入る。
テレビの前にはソファーが設置されており、そこには一方通行が横たわっていた。
寝ているのだと思った麻生だが、見て見ると起きていて必死にチョーカー型電極のスイッチを手で切り替えようとしていた。
いつもの一方通行なら問題なく切り替えれるのに、今はそれができていない。
それを見た麻生は何が起こっているのか把握して、一方通行のチョーカー型電極のスイッチを入れてやる。
通常モードに切り替わると、一方通行は起き上がりスイッチを入れた麻生に視線を向ける。
「何でテメェがいるンだ?」
「携帯を忘れてな。
取りに来ただけだ。
俺こそ聞きたい事がある。
何で、スイッチを切ったんだ?」
「・・・・・・・・」
一方通行は何も答えない。
別に答えるのを期待していなかったのか、テーブルの上に置いてある携帯を取り、部屋を出て行こうとした時だった。
「特に意味はねェよ。
ただ、自分の無様な姿を再確認したかっただけだ。」
その言葉を聞いて、麻生は足を止める。
一方通行は頭部に損傷を負ってからは妹達のネットワークに演算力を頼っており、カエル顔の医者特製のチョーカー型電極によってフォローを受けなければ、能力使用どころか人間的な思考すら出来ない状況に陥っている。
通常モードと能力使用時と二つのパターンがあり、通常モードで四八時間、能力使用時は一五分しか持続しない。
医療機器としての使用が大前提のため、超能力戦という軍事レベルの使用環境に耐えられるように作られていないのだ。
バッテリーもカエル顔の医者が作った特殊なもので、替えは利かないし市販の電池などでも代用できない。
大量のバッテリーを用意して制限時間ごとに交換していくという方法もとれない。
つまり、正真正銘一五分がタイムリミットなのだ。
「そうか。
だが、無理はするなよ。」
「それは無理だな。
こんな悪条件であいつを守るンだぞ。
無理をしないと暗部の闇には勝てねェ。」
「なら、俺を頼ればいい。」
その言葉を聞いて、一方通行は麻生の眼を見る。
その眼は嘘を言っているように見えなかった。
「どォいう風の吹き回しだ?」
「別に、俺が助けた命は病気や寿命などで死んでいくのなら、俺はそれを見送る。
だがな、暗部の闇とかくだらないモノのせいで、俺が助けた命が死んでいくのを黙って見ていられない。」
「つまりあれか。
テメェは自分の物を他人に壊されるのが許せねェって事なンだなァ。」
「そう受け取っても構わない。」
一方通行の嫌味が全く通じていない。
ソファーから立ち上がると、そのまま麻生の横を通り過ぎていく。
どうやら、脱衣所に向かうようだ。
「そう言えば、愛穂達はどこに行った?」
リビングに行っても愛穂達の姿は見かけなかった。
「知るかよ。」
それだけを言って、脱衣所へ繋がる扉を開ける。
そこには、バスタオルで茶色い髪をグシャグシャと拭かれている全裸の打ち止めと、左右からグチャグチャに拭いている裸の愛穂と桔梗がいた。
一番初めに反応したのは打ち止めだ。
「どっ、どうして前触れもなく突発的に出現してるのあなたはーっ!、ってミサカはミサカはバスタオルに手を伸ばすけど届いてくれなかったり!!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ打ち止めを無視して、一方通行はキョトンとしている愛穂や桔梗へ目を向ける。
「何でカギかけねンだよオマエら。」
「あー悪い悪い。
あんたも寝てたし、鍵をかけるの忘れてたじゃん。」
「愛穂、とりあえずで良いから身体に巻いておきなさい。」
桔梗が愛穂にバスタオルを渡そうとした時だった。
「一方通行、そこに愛穂達がいるのか?」
「「ッ!?」」
麻生の声が聞こえ、脱衣所に向かう足音が聞こえる。
その後の愛穂と桔梗は素早く行動する。
麻生が来る前に、一方通行を脱衣所の外へ追いやると、すぐさま扉を閉めた。
一方通行はため息を吐き、麻生は唖然としている。
「な、何で恭介がここにいるじゃんよ!?」
予想外の人物がいる事に、愛穂はドア越しから聞く。
「携帯を忘れてな。
取りに来たんだ。」
「そ、そうなの。
用事の方は済んだのかしら!?」
「いや、まだだ。
これから待ち合わせ場所に向かう。」
「「待ち合わせ場所?」」
愛穂と桔梗の声が重なる。
二人の疑問に答えるように麻生は言う。
「ああ、これから女性とコンサート会場で待ち合わせをしていてな。
今から行っても少し遅刻しそうだが。」
「「・・・・・・・」」
あれ?、と麻生は首を傾げる。
ドア越しでも分かるような不機嫌なオーラを感じる。
何か悪い事でも言ったのか?、とさっきまでの発言を思い出す。
(どこにも気に障る事は言っていない。)
原因は分からないが、とりあえず聞いてみた。
「二人とも何か怒ってないか?」
「別に、怒ってないじゃん。」
「いや、声からして不機嫌な感じにしか聞こえないんだけど。」
「何でもないじゃんよ!!
早く、その待ち合わせに向かえばいいじゃん!!
その女の人も待ってる筈じゃんよ!!」
大声でそう言われ、何も分からないまま麻生は部屋を出て行った。
扉が閉まる音を聞いた後、愛穂は大きくため息を吐いた。
「愛穂、貴女ってまだ子供ね。」
「そう言う桔梗こそ、嫉妬していたじゃんよ。」
「まぁ、否定はしないわ。
私はあの子の事、好きだし。」
何の躊躇もなくそう言う桔梗。
それを聞いて、愛穂は小さく笑みを浮かべて言う。
「負けないじゃん。」
「私こそ、負けるつもりはないわよ。」
後書き
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