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戦国異伝

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第百四十八話 伊勢長島攻めその四

「弓を鳴らす音と雷程の違いがありますぞ」
「わしが雷と言うか」
「はい、まさに」
「全く、そこでそう言うか」
「そのものですので」
 だからだというのだ。
「そう言います」
「全く、相変わらずじゃな」
 憮然とした顔でありながらもそこに笑みが入っている柴田だった。そのうえでの言葉だった。
「しかし一戦交えずに済んで何よりじゃ」
「自ら降ってくる城や砦もある様ですし」
「今のところはよい流れですな」
「全くじゃ、では次は願証寺じゃな」
 本願寺の拠点であるこの城の話にもなる。
「あの寺を囲むか」
「あの寺も降ると思いますが」
 ここで冷静に言ったのは生駒だった、彼も柴田と共にいるのだ。
「僧侶達の話を聞いていると」
「大丈夫か」
「はい、そう思いますが」
 こう柴田に話すのである。
「本願寺は命は粗末にしない故に」
「どうも向こうの法主がそう言ったらしいのう」
 柴田も生駒に応えて言う。
「無駄に死ぬなと」
「はい、ですから」
「それはよいことじゃな」
「ですから願証寺もです」
 その寺もだというのだ。
「今は彦九郎様が三万の兵を率いて囲んでおられますが」
「戦になることはなくか」
「はい、そうして」
 降って戦いが終わるというのだ。
「門徒達はそれで終わるかと」
「しかしまた前の様に意固地に戦う者が出るぞ」
 ここでこう言ったのは前田だった、彼は怪訝な顔で言うのだった。
「あれはかなり参ったがな」
「うむ、そうした者達は絶対に出る」
 そのことは避けられない、生駒も前田に話す。
「あの時はわしもまだ戦になるとは思わなかったがな」
「それでも一度見たからにはじゃな」
「うむ、出る」
 その危惧は否定出来なかった、生駒にしても。だからこそ今言うのである。
「残念だがな」
「それでは」
「うむ、戦うしかない」
 その場合はというのだ。
「わしもそう思っておる」
「その場合は一人も残さずか」
「倒すしかないな」
「その通りよ」
 こう前田だけでなく佐々にも答えるのだった。
「仕方ない、その時は」
「その時は容赦するでないぞ」
 柴田も言うのだった、戦となれば容赦しないのが彼だ。だからこそ信長も信頼しているのである。
「よいな」
「はい、わかっております」
「あくまで向かってくるのなら」
 前田と佐々も応える、その場合はだった。
 この城は無事開城させたがそうでない城のことは止むを得ないと考えていた。そのうえで願証寺に向かうのだった。
 願証寺には城を降した諸将がいた、無論信長もだ。彼もまた城を開城させてそれから願証寺に戻ったのである。
 しかし彼が戻った時に丁度だった、その願証寺からだ。
 使者達が来た、その使者の僧侶達は信長に平伏してこう言って来た。 
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