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やはり俺の青春ラブコメは…間違ってるのかなぁ

作者:もぐらん
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当然、比企谷八幡はぼっちすぎる

 
前書き
文章力ってどうやったら身に付くんだろう……。というわけで中途半端なとこで区切りさしてもらってます。 

 
 風が少し冷えていた4月も終わり(ほの)かな温かさが漂う季節。俺の平和な学園生活は1年ちょっとで崩れてしまった。その原因こそ進路指導担当の平塚先生である。

 問題児として認識され隔離病棟すなわち、奉仕部に入部させられたのである。そこで雪ノ下雪乃と出会い、まだ会ったことの無いが俺と同じく問題児とみなされ入部したものが比企谷八幡。あの性格の悪い雪ノ下さんともう一人の問題児、比企谷君の内輪に入るということは今までの平凡な高校生活は送れないまでにある。そもそも平凡どころか非凡だったけどね。

だって誰にも気づかれず、話しかけられず、相手にされずの孤独として約1年間過ごしてきたんだ。社会に適応するどうこうの前にクラスでさえ適応していない。
 そもそも孤独こそ孤高。孤高こそが最強。つまりぼっちは最強である。何が言いたいというとだ。力関係的に考えて弱者であるリア充または上位カーストが俺のようなぼっちに適応しろ、という話だ。

――――――――だから断じて俺は!奉仕部へは行かない!


                   ✕        ✕        ✕


 午後のホームルームも終わってこの2年B組も上位カーストはいつも通りぐちぐちと駄弁って騒いでいる。そしてこれから身体的に疲労が襲う部活に行くものもいる。筋トレする人とか理解できないタイプの俺には体育会系には向いてないだろう。自分の筋肉を傷めつけたいとかマゾなの?

そしてそのときに放送の予兆のアラームが鳴り、女教師が誰かを呼び出した。

《2年B組の清谷君。2年B組の清谷君。今すぐ職員室に来なさい。繰り返します―――――》

 ………帰ろう。そして明日になったら「すみませーん。そんな放送聞いてませーん。昨日帰るのが放送流れるよりも早く帰ったと思いますぅー」って言えば全く問題なしっ。それに今頃、全クラスのHRも終わっているころだからどさくさに紛れて帰ることが可能だ。
 呼び出された理由はなんとなく理解している。1つは調理実習があった日にわざと遅刻してサボったこと。もう1つが奉仕部だろう。どちらにせよ後々平塚先生に説教交じりに奉仕部へ連行されるだろう。……だから早く帰らなくてはっ!!

 あえて説明しておくと俺の席は廊下側の右から2列目の後ろから3番目の席だ。その後ろから俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。

「清谷。…分かるな?」
そう声色変えて教室の後ろ側の扉ににこにこと笑顔を作っている平塚先生がいた。

 働け俺の脳!この危機的状況を打開できる方法を考えるんだ!周りを見渡して可能性を見つけた。1つ。教室の前側の扉の前に消火器があるのですぐにそれを取り、平塚先生に噴射したあと、窓のカーテンのフックを1つ以外は外して窓の外に長くぶら下がった状態にしてそこから逃げる。もし高さをカバーできない時はコードギ〇スのユフィみたいに誰かが受け止めてくれるだろう。しかし消火器を使うことにより罪が悪化しそうだが……今は気にしない。

「――――今だ!」

直ぐに俺はカバンを手に取り消火器の所まで全力で走り、急いで取り出すと消火器を構える。……フッ。ここまでくれば俺の勝ちだ。

「平塚先生……あなたの敗因はたった一つです。たった一つの単純の答えです……あなたは俺を怒らせた!」

そしてホースを平塚先生に向けてレバーを引く。だが―――――――
ホースからは噴射しなかった。

「あ、あれ?なんで出ないんだ」

「まさか君は消火器の使い方すら知らないのか…」

いつの間にか平塚先生は目の前に来ていて憐れんだ目で見ていた。確かに消火器なんて今初めて使ったから使い方も何も知らない。

「そこの安全栓を抜かないと出るわけがないだろう?」

「ははは……」

苦笑いの俺を見た平塚先生の顔が悪魔だった。

「消火器で遊ぶな。まったく、お前は常識さえ知らないのか。あとで反省文用に原稿用紙3枚渡してやる」

「はい……すみません…」

 そうして俺はまたもや平塚先生の進撃を止めることができなかった。すると俺の腕に関節技を決めてずるずると引っ張られていく。クソッ。安全栓なんて知っていたら逃げれたのに……。でも意外なことがあった。平塚先生が暴力を振るわなかった。まぁ今関節がちがちに決められてるけど

腕を絡めとって横にいる平塚先生に引き寄せられるのであの柔らかいものがうでに当たっていることが凄く気になる。べ、べつにこの柔らかさが最高だ!なんて思ってないんだからね!
 ……さて、冗談はさておき実際のところ俺はそういうことに興味がない。俗にいうイセイとかのレンアイというやつだ。とかいってボーイズラブでもないから勘違いしないでもらいたい。

 いろいろ事情があって恋愛沙汰には引け目を感じている。それよりまず友達作りましょうねーって話なんだけど。あの小学1年生の歌で友達100人できるかな?っていう歌あるだろ?……無理だろどう考えても。そんな簡単にできたら苦労しないよ。100人友達作るとかギネス載るんじゃね?

超どうでもいいことばかり考えていると特別棟に入ると関節技を決めていた平塚先生は腕をそっと離し、来た道を帰ろうとする。

「お前にはまず何かを継続する力が必要だ。奉仕部に行って学んでこい」
そう言いながら来た道を戻りだして手を大きく上にあげる。


―――――――――チャンス!!

これ以上にないビックチャンス!今なら目を離している。その隙にとんずらできる。そう思った瞬間に平塚先生がこっちにギロッと顔を向けて睨みつけてくる。もしオオカミだったらぐるるぅぅぅと唸っているだろう。平塚先生は相手の心が読めるスタンド使いなの?それとも常人を超えたテレパシー使いなの?

……うん。逃げるのは良くないよねー。うん。自分の嫌な状況から勝手に逃げるなんてサイテーダヨネ

最後に俺は奉仕部の部屋に向かうために階段を上り平塚先生が視覚から消えた時に立ち止まった。


「――――はああぁぁぁぁぁぁ………」


そのあと部室に着くまでため息しか出なかった。そういえばあの時1つしか言ってないからあえてその2を言おう。

その2――――――――――――――――――――――土下座。


                    ✕       ✕       ✕


 そのあとしぶしぶ奉仕部の部室へと向かっていると派手な女子が深呼吸していた。まるでフリーターの面接前の緊張並みに何度も吸っては吐いてを繰り返していた。

そしてその子は俺の目的地である奉仕部のドアの前だった。するとその女子は小さな声で「うん…大丈夫…行ける…」と自己暗示していた。しかし一向に入る気配がない。このままずっと待ってるのもこっちが疲れるので仕方なく話しかけよう。

「そんなに緊張せずに中に入ったら?」

出来る限りやわらかーく笑顔を作って話しかけたらこちらを無表情で振り向く。

「うひゃあぁ!!」

すごい驚きようでびくびくしてもう一度こちらを振り向く。いやいや、こっちが驚くよ逆に

「ご、ごめんね。人がいるとは思わなくて…」

 すると俺はこの人を初めて見た。明るめに脱色された茶髪にボタンが三つほど開けられたブラウス、それに光るネックレス。印象通りに派手めな女子だった。この人を知ってるようで知ってないような……でも名前を知らないってことはリア充のムカつく奴らじゃないってことでいいだろう。

「俺も急に話しかけて悪い。俺は奉仕部の部員なんだ」

「そうなんだ…。あの…ここが奉仕部の部室だよね?」

じゃなかったらさっきまで緊張していたは何だったんだよ…とは軽々しく言えない。初対面で馴れ馴れしく話しかけられるのはかなり腹が立つのを経験済みなのであくまでも作り笑顔で、声のトーンを明るく補正し、笑顔を保つ。これさえできれば問題ない。

 俺は頷いた後に部室のドアを開けた。そこにはいつも通りの雪ノ下雪乃と顔は知らないってことは比企谷八幡だろう。そしてドアを開けてこの女子が彼を見ると目を見開いた。

「な、なんでヒッキーがここにいんのよ!?」

「……いや、俺ここの部員だし。てか隣のは誰?」
それは俺にかけられた言葉だろう。雪ノ下雪乃か平塚先生から説明してもらってないんだな。
俺は雪ノ下さんに目を合わせるときょとんとして小首をひねる

「……?ここは依頼者か関係のある人以外立ち入り禁止よ」

「あっれ~~~??」

雪ノ下さんに存在を忘れられていた。でも思ったより傷つかなかった自分が不思議に思った。てか禁止条例みたいのあったんだ。まったく何の部活だよ

「……平塚先生から強制的に入部することになりました2年B組の清谷清哉です。思い出したか?」

「何の事かしら?」

「だから俺のこと忘れてたんだろ?」

すると雪ノ下はフッと鼻で笑った。

「私が本当に忘れてるとでも思った?ただ私は関係者以外立ち入るなと言っただけよ?あなたはここの部員でしょう?退部届出してたみたいだけれど」

バレてた。というかこいつ本当にムカつくな。ホントなんでこんな性格悪いやつが奉仕部なんてしてんのかね……理解できないって。
 雪ノ下雪乃はこんなのだから絶対友達いないと思う。だって上から目線で俺を(もてあそ)んで不敵な笑みを見せているこんなやつが友達なんているわけがない。
すると雪ノ下さんは俺から横にいる女子へと視線を向ける。するとその女子は怯んだように小さな声で「うぅ……」と縮こまっていた。

「あなたは由比ヶ浜さんよね?」
「う、うん。あたしのこと知ってるんだ」
 するとその由比ヶ浜さん?は表情を明るくした。雪ノ下雪乃という存在に認知されていることは彼女にとって嬉しいのかもしれない。有名というか人気だからね

しかし何百の生徒の中で彼女が由比ヶ浜と分かったのはすごい。もしかして全校生と知っているのかもしれないので一応聞いてみることにした。

「もしかしてお前、全校生徒知っているんじゃないか」
「いいえ、あなたたちのことなんて知らなかったもの」
「「そうですか……」」

彼、比企谷八幡と俺は声を揃えて言った。

「別にあなたたちが気に病むことはないわ。私のミスだもの。あなたたちの矮小(わいしょう)さに目もくれなかったのが原因だし、あなたたちから目を背けてしまった私が悪いのだから」

こいつ…慰めが全く下手だ。例で言えば、赤ちゃんが泣いているときにさらに泣かすという鬼畜技だった。そして未だミスディレクションの効果は継続中のようだ。さすが俺。流石ぼっち。
すると横にいた彼が食いつく。

「ねぇ、それで慰めているつもりなの?慰め方下手すぎでしょう?しかも最後俺たちが悪いみたいになってるからね?」
「慰めてなんかないもの。ただの皮肉よ」

雪ノ下さんは目もくれず髪を掻き揚げる。それを傍から見ていた由比ヶ浜さん?が入ってくる
「なんだか……楽しい部活だね」
すると由比ヶ浜はパッと明るくなった。少しは緊張が解けたのだろう。ってか今のを楽しそうって……残念な会話なだけだったと思うけど。

「別に楽しそうでもないだろ。会話が残念すぎる」
俺がそう話すと雪ノ下も少々頷いている。

「ええ、そうね。特に愉快ではないのだけれど……その勘違いがひどく不愉快だわ」
雪ノ下は由比ヶ浜に冷ややかな視線を送っている。そして本人はあわあわ慌てて両手をぶんぶん振る。

「あ、いや、何というかすごく自然だなーって。彼は知らないけどヒッキーはクラスにいるときと違うし。ちゃんと喋るんだなーっとか思って」
 そうなんだ。いや、分かってたけどね。この人もぼっちってことは。会った瞬間にわかったよ。ぼっちとぼっちはどこか惹かれあうのかもしれない。
―――――――――どこのスタンド使いだよ

「そういえば由比ヶ浜さんもFクラスよね」
「えっそうなん?」
「まさか知らなかったの?」
 あ、今の発言で相手は知っているのに本人は知らないと分かられてしまっただろう。すると比企谷の目が泳ぐ

「し、知ってるよ」
「何で目を逸らすのよ」
「普通にバレてるぞ」

由比ヶ浜さんはジト目で、俺は呆れた目でそう呟いた。こいつ嘘つくの下手なのか。

「そんなんだから、ヒッキー、クラスに友達いないんじゃないの?キョドり方キモイし」

 こいつの言動に俺は少し違和感があった。こいつはどこかのグループに入っていたやつだ。なんだっけ?まぁとにかくこいつはあれだ。……ビッチだった。見た目からも上位カーストにいそうだったし。可笑しくはないな。……けど俺の気遣い返せ

すると比企谷君はある言葉を発する。
「……このビッチめ」
すると勢いよく食らいつく。
「はあ?ビッチって何?あたしはまだ処―――うわわ!何でもない!」

すると由比ヶ浜さんは顔を真っ赤にしてばさばさと手を口元で振り、言おうとした言葉を掻き消そうとしていた。この人ビッチだけどアホな子でもあった。

すると助け舟を出すつもりなのか、雪ノ下さんが口を挟む
「別に恥ずかしいことではないでしょう。この年でヴァージ――――」
「わーわーわー!ちょっと何言ってんの?!高校生でまだとか恥ずかしいよ!雪ノ下さん女子力足りないんじゃないの?!」
それを聞き雪ノ下は冷たさが増した言葉が発せられる

「―――――下らない価値観ね」

「そもそも女子力って言葉でもうビッチくさいよな。外見もビッチっぽいし」
俺が口を挟むと由比ヶ浜さんから怒りが溢れるのを止めるようにぎりぎりと歯噛みしていた。

「~~!!ビッチって言うな!サイテー!!味方してくれると思っていたのに!」
 ビッチこと由比ヶ浜さんは俺の事を味方だと思っていてくれたのか……。なんか申し訳ない感じが出てきた。

「て、敵を欺く前にまず味方を殺せってよく言うだろ?」
「言わないよ?!てか私殺されるんだ?!」
「それを言うなら、『敵を(あざむ)く前にまず味方から』でしょう……」
雪ノ下さんは俺に呆れた表情で哀れまれた。
いや、意味的にはあまり間違ってもないのだが……

そこで念を押すように比企谷君が口を挟んだ

「このビッチが」
「こっの…!ほんとウザい!っつーかマジキモイ!死ねば?」

さすがの俺でも今の言葉は言ってはいけないと思う。たとえ冗談でも言ってはいけない言葉はある。
そして比企谷君は怒りを込めて由比ヶ浜さんに言った
「死ねとか殺すとか軽々しく言うんじゃねぇよ。ぶっ殺すぞ」

それを言われたときに意外と由比ヶ浜は反省していた。
「―――――あ…、ごめん。そういうつもりじゃ……えっ!?今言ったよ!超言ってたよ!」

 やっぱり由比ヶ浜さんはアホな子だった。しかし謝ったところは正直いいと思う。リア充とか上位カーストらは、自分の考えが正しいと思っていて案外素直に謝れないやつが多い。彼女はビッチだけどそれほどビッチというわけでもなさそうだ。

するとゆっくりと由比ヶ浜の口が動く

「……あのさ、平塚先生に聞いたんだけど、ここって生徒のお願いをかなえてくれるんだよね?」

僅かな沈黙の後、由比ヶ浜さんはそう切り出した。いや、ここって願いを叶える部活なの?便利屋なの?

「そうなのか?」
 そうか。比企谷君もこの活動目的を理解していなかったらしい。なんか前に長々とあらかじめ考えていた様な言葉を聞いた気がするが、全く分からない。まさか同じものを聞かされたのか…。まさか部活創設申請時に活動目的をあれを言ったとかないよな?もしそれで許可出たなら教師の頭やばいな。げきヤバス。

「すこし違うかしら。あくまで奉仕部は手助けするだけ。願いが叶うかは自分次第……ね?」
 冷たく、突き放すような感じで言ったあと、最後に目線を俺に移す。か、勘違いしないでよね!別にやる気がないわけじゃないんだからねっ!…心底めんどくさいだけだ!……その呆れた目で俺を見るのはやめてください。

すると疑問に思った由比ヶ浜さんは雪ノ下さんに尋ねた

「どう違うの?」
「飢えた人に魚を与えるか、魚の獲り方を教えるかの違いよ。本来ボランティアとはそうした方法論を与えるもので結果のみを与えるのではないわ。自立を促す。というのが一番近いかしら」

つまりそうした方法論を用いり、生徒を手助けする部活ということか。なんたってそんな部活が……
すると由比ヶ浜さんが目をキラキラと光る。
「な、なんかすごいね!」
 由比ヶ浜さんはほえーっと目から鱗で納得しました!って顔をしている。……なんかいつか悪い宗教に引っかかりそうで心配だ。疑わずにすぐ信じそう。ついでに俺は誰でもすぐに疑うけど、まぁそこが彼女の良いところなのかもしれないが。

「必ずしもあなたのお願いが叶うわけではないのだけれど、出来る限りの手助けをするわ」
そして本題のことをすっかり忘れていたのか、「……あぁ!」と声を上げた

「あのその、あのね、クッキーを……」
そう言いながら比企谷君の方にちらっと見る。

「比企谷君てクッキーだったの?食べられるの?」
「んなわけないだろ」
 そりゃそうだろう。クッキーなんてあだ名どっから……ああ。空気扱いでクッキーね……聞いてて悲しいよ。色々比企谷君も大変なんだな……

その視線に気づいた比企谷君はドロッとした目を細くした。
「その憐れみを帯びた目を向けるのはやめてくれ」
 するとそんなことはどうでもいい雪ノ下さんは俺たちの名前を呼ぶと同時に、くいっと顎を移動させる。先にはドア。つまりはここから出ていけという意味だろう。少なからず異論はない。何故なら帰るのだからなぁ!

「……戻らず帰った場合、平塚先生にあることないこと報告しておいてあげるから。清谷君?」
「ハハハハハハー。逃げるわけないじゃないかー、ナァ?」
うんうん、逃げたらダメダヨネ。

そうして俺たちは自販機でジュースを買うためという振りをして由比ヶ浜さんに気を使われたと思われないように部室から出ていこうとしたときに、雪ノ下さんが引き止める。

「私は『野菜生活100いちごヨーグルトミックス』でいいわ」
―――――――――やべーこの人まじやべー。普通にパシるとか雪ノ下さんマジないわー。

今日も清谷絶賛パシられ中☆今日もなのかよ



                    ✕       ✕       ✕


 特別棟は普段からそれほど使われていないせいか喧騒はさほどなく、あまり中に何があるかとかそれほど知る人は多くはない。そもそも何もないしな。今は人声を聞こえないが窓を開ければグラウンドを使う運動部の掛け声とかは聞こえるかもしれないが本当に人が少ない。
個人的にはオッケー。なんせ……リア充が一人もいないからなっ。うざいし。別にどうだっていいんだけど

そして俺は先ほどから比企谷君と部室を離れて一階にある自動販売機へと移動中だ。ついでに今は二階だ。そして案の定何も話さず、そのまま自販機に向かって足を進めていた。

 思った通りというか思った以上のぼっちらしいな。ぼっちの中のぼっちとでも言うべきだろうか。それはそれで話したとすると聞いたら聞いたで自分で黒歴史をうっかり抉られそうだ。あまりぼっち同士での過去の話はしないが吉だ。ぼっちは特に心の地雷多いからなぁ……(遠い目)

 そのまま自販機に着くと比企谷君は100円玉を投下させる。すると空中要塞みたいにウォンウォンなり始める。
彼が選んだのは『スポルトップだった』。そして彼はスポルトップを手にすると自販機を睨みつける。大体予想はつく。何故ならそこに『野菜生活100いちごヨーグルトミックス』があったのだ。
 それは雪ノ下さんは欲している飲み物でこれを買わなければならない。買わないと戻るに戻れず、帰ったら平塚先生に有ること無いこと言われ、説教という名の暴力を振るわれることになる。すっかり逃げ道を絶たれてしまっていた。

「……比企谷君買わないのか?」
「別に俺に頼んだわけじゃないだろ」

すると比企谷君はこちらをちらっと見る。まさしく「お前が買えや」とでも言いたげだ。しかしここは同じ部員として言わなければならない。
「逃げるのは良くないよ比企谷君?」
「逃げてるのはお前だ!そう言ったあと俺に買わせて自分は逃げて、自分は体調不良とかでジュースだけは持って行け的な感じで雪ノ下に同情を仰ぎ、平塚先生に報告されることもなく、自分は帰るという手だろうがそうはいかないぞ」

な、なんと鋭い!俺の行動がほぼ読まれていた。比企谷君、恐ろしい子!今の俺の顔は漫画なら口を開けて目が白くなっていただろうな

「でも矛盾があるぞ」
「どこが?」
「あの雪ノ下が同情を買うわけない」

あああぁぁぁぁ!!俺の計画がたったそれだけで丸つぶれになったー!くそぅ……。
そこまで悔しがらなくてもいいのにと自分で心底思っていたが比企谷君に『バレバレですけど?』って感じで分かられてしまう方が悔しかったりする。

「…はぁ、仕方ない。不本意だけど俺も半分出すから早く買って部室に戻った方が良いだろ。絶対文句言うぞ。あの雪女」
「それは断言できる」
そう比企谷君は肯定する。少なからず若干似ている者同士と感じてしまった。元々同じぼっちだしね

比企谷君は諦めてもう一枚の100円玉を投下しもう一度機動要塞がウォンウォンと唸り始める。メガ粒子砲とか売ってないのかな?そうやって現実逃避もいいけどやはりこれから同じ部員ナカマとして上手くやっていかないといけないだろう。嫌だけど。

「そういえば何で比企谷君は奉仕部に入部してるんですー」
俺は棒読みで手を上げて質問した。その言い方にイラッと来たのかさっきまでより一層目がどんよりする。

「その中途半端な敬語なんなんだ?別に良いけどなんか気持ち悪いし」

俺は口箸を吊り上げて頬をヒクヒクとしていた。そして俺はもう一度言う。
「何でー比企谷は奉仕部に入部してるんだー」
またしてもの棒読み。やばい。棒読みグランプリ優勝できるかもしれない。すると比企谷はより一層不機嫌な顔になった

「別に入りたくて入ったわけじゃねぇよ。経緯(いきさつ)はほぼ清谷と同じだ。」

 うおおお。久しぶりに家族と平塚先生以外に名前を君付けなしで呼ばれた。なんか感激。言っててなんだが悲しくなる。しかもイコール呼び捨てだからね?別に俺呼び捨てで良いなんて言ったっけ?
 すると足元の方でガコンッと音がなり、例のやつ名前が長いので略していちヨーが出てきた。なんか語呂(ごろ)がイチローに聞こえる。あぁ……今からイチヨーが雪ノ下という魔の手に陥ってしまう。…もう略イチローでいいや

 それで俺が財布を取り出して小銭のとこから100円玉を鉄の箱に監禁する。イメージが曖昧だな~。そして俺は、午後の紅茶ならぬ『午前の紅茶』のボタンを押す。ここではこんな不思議なものが売っていてその中でも午前の紅茶は特に気に入っている。午後の紅茶と何が違うって?うーん、色?

そして俺はもう一つの100円玉を取り出す。まぁ半分出すって言ったしな。仕方ない。俺たち3人だけティータイムで由比ヶ浜さんだけ無いってのも結構心に傷がつくもんだ。
 えっ?何?別に過去に何かあったわけじゃないよ?中学卒業の時に同じクラスだけで乾杯することになって俺の分だけ用意されなかったとかそういうことじゃないんだからねっ!!俺は若干涙目だったので比企谷にバレないように裾で拭う。バカにされるからな。そして投下したあとに俺は『男のカフェオレ』のボタンを押し、『男のカフェオレ』がガコンッと落ちて、それを拾う。

「お前って意外と気が利くんだな」
「意外ってなんだよ。俺は超気が利くぞ。気が利きすぎて自分の部屋で籠るレベルだぞ」
それを聞いた比企谷は「ハッ」と鼻で笑う。そのあとその顔がニヤリと口の端が吊り上がる。

「甘いな。俺は気が利きすぎて空気扱いだぞ」

「ああ。なんせ『クッキー』だもんな。あだ名が。クラスで空気扱いだからクッキー……んぷふふっ」

俺は頭の中で想像して笑うのを我慢することができなかった。それに完全に苛立った比企谷の目は怒りに染まっていた。

「清谷……てめぇ…」

「早く帰らなくていいのー雪ノ下さんがだまってないよー」
棒読みで話す言葉を発した後、振り向いて部室へと歩いて行った。その背後でぽつりと何かがつぶやいた

「…気に食わないやつ」 
 

 
後書き
今回長いです。しかも途中できっちゃいました。うわー読みにく!っと感じた人はすみません!
コメント、修正箇所など言ってくれるとありがたいです。


※修正しました。 
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