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青い目のハイスクールクイーン

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第一章


第一章

                 青い目のハイスクールクイーン
「いいねえ」
 教室の端の席からポニーテールのあの娘を見て言う。
「あの感じ。やっぱり女の子はそうじゃなければな」
「で、どうするんだ」
 彼女を見て言う俺に仲間達が声をかけてきた。
「誘うのか?」
「ああ」
 俺はそう仲間達に答えた。
「絶対にな。決めるぜ」
「無理だな」
 口元に黒子のある俺達のグループのリーダーが言ってきた。
「御前にはな」
「何でだよ」
 思わずその言葉に抗議した。
「俺じゃ駄目だって言うのかよ」
「だってよ」
 リーダーは笑いながら俺にまた言ってきた。
「あの娘だろ?」
「ああ、そうだよ」
 俺はリーダーに答えた。
「それが駄目なのかよ」
「やっぱり止めておけよ」
 また言われた。
「相手が悪いって」
「そうだよな」
 仲間うちで一番背の高いのが口を開いてきた。
「やっぱり無理なんじゃないかな」
 こいつはここじゃノッポって呼ぶことにする。そのノッポも俺に言う。
「あの娘だけは」
「何か悲観的だな、皆」
「無理もないぜ」
 ノッポとは逆に背の低いのが言う。こいつはチビだ。
「あの娘アメリカ人だろ。それ考えたらよ」
「そんなの関係ないって」
 俺は少しムキになってチビに反論した。
「愛に国境なんてないって言うだろ」
「歌ではそうだな」
 リーダーはそう俺に返してきた。
「一応はな」
「だからさ。俺だって」
 俺はここぞとばかりに皆に言う。何か自分でもかなり焦っているのがわかる。
「ここで勇気を出してな」
「玉砕か」
 口髭の奴が言ってきた。こいつの仇名はそのままヒゲだ。
「特攻隊みたいにな」
「言うにこと欠いてそれかよ」
 今度はヒゲに抗議した。さらにムキになった。
「俺は何があっても生き残るんだよ」
「どうだか」
 しかしチビがまた言う。
「上手くいくわきゃねえけれどな」
「やってみなくちゃわからないだろ」
「まあね」
 チビの弟がそれに頷いてきた。チビが四月生まれで弟は三月生まれだ。親御さんが頑張った結果らしい。それにしても上手くいったものだと思う。扱いは双子と一緒だ。
「それはそうだけれど」
「だからだよ」
 弟の言葉に乗って主張した。
「俺だって」
「やってみる?」
 色白のがとりあえずといった調子で俺に問うてきた。
「それじゃあ」
「最初からそのつもりだよ」
 俺は意気満々で言い切った。
「絶対にな」
「そこまで言うのならやってみな」
 リーダーもやっと折れてくれた。
「玉砕して来い」
「結局玉砕かよ」
 思わず突っ込んだ。
「ったくよお」
「しかしよ」
 チビがふと思い出したように言葉を出してきた。
「何だ?」
「あの娘この学校っていうか日本に来たばかりだったよな」
「ああ」
 俺はその言葉に頷く。
「そうだよ。こっちに来て一週間」
「日本語喋れるのか?」
 実はあの娘はアメリカ人。髪の毛は金色で目は青。鼻は高くて色も白い。そばかすが少し目立つ如何にもといった感じのアメリカ人だった。おまけに背も高くて身体つきも他の日本人の女の子とは全然違う。だから俺も今目がいってるってわけだ。
「どうなんだ?」
「そういえば」
  俺はふとそれに気付いた。
「どうなのかな」
「どうなのかなって御前」
 ヒゲが呆れた声をかけてきた。
「確かめてねえのかよ」
「どうなのかな」
「ってわからねえのか?」
 チビがそれに問う。
「まだ調べてないのかよ」
「ああ」
 少し困った顔で答えた。
「どうなのかな、そこんとこは」
「まあよ」
 たまりかねた感じでリーダーが言ってきた。
「一度声をかけてみろ。いいな」
「わかったよ。じゃあやってみる」
「けれどさ」
 弟も声をかけてきた。
「あれでしょ、やっぱり」
「英語か」
「相手がアメリカ人でしょ?やっぱり」
「そうだよなあ」
 俺はここで腕を組んだ。ついつい難しい顔になってしまう。
「けれどなあ」
「御前英語の成績どうなの?」
 白が俺に尋ねてきた。
「大丈夫なの?」
「いや、全然」
 俺はその言葉に首を横に振って言った。
「この前は赤点すれすれだったんだよ。っていうかいつも」
「駄目じゃねえか、それって」
 リーダーは俺の今の言葉を聞いて顔を顰めさせてきた。
「どうするんだよ、手紙書くか?」
「それもいいよな」
 俺はリーダーの言葉を聞いて腕を組みながら言った。
「書いてみるか?」
「いや、それだけじゃ駄目だな」
 チビもリーダーと同じ意見のようだった。
「言葉でもな」
「言ってみるって?」
「当たり前だろ、今時手紙だけでどうにかなるかよ」
 思いきりそう言い返されてしまった。
「やっぱりあれだよ。言葉でも言わないとな」
「そうか」
「勉強するしかないな」
 ノッポが言う。
「声をかけるんならな」
「わかったよ」
 俺はその言葉に憮然として答えた。
「それだったら」
「ああ、悪いけれどな」
「俺も」
 皆態度が急に冷たくなった。手の平を返すって言葉そのままに。
「英語苦手だから」
「一人で頑張ってくれよ」
「おい、皆かよ」
 皆のその態度に思わず突っ込みを入れてしまった。入れずにはいられなかった。
「俺だって英語苦手だからな」
「悪いな」
「ちぇっ」
 皆の言葉に憮然として首も傾げて舌打ちする。俺はかなり困った状況に追い込まれてしまった。
 
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